38 / 83
第38話
しおりを挟む
「おいしい! さすが王宮のケーキ!」
「……ケーキを食わせてやるって言われても、俺以外について行くなよ」
私は、お子様じゃないのだけど!
事件を解決し、私達は聞き取りの為に王宮へ連れてこられた。犯人であるタシデホア先生は、今頃取り調べを受けている事でしょう。
私達は、とりあえずここで待機するように言われ、ケーキまでご馳走になっているってわけ。
にしても、馬車の中ではないと言うのになぜに隣に座る。
「それにしてもあの先生、私をそんなに逆恨みしていたのかな?」
「逆恨みね。女だから? 自分の人生を棒に振る行為だぞ。隠れて意地悪するならわかるけど。バレたら言い訳できないだろう」
「そうよね。バレバレよね。他の魔法博士の居る前だものね」
「……もしかして、自分がした事が他の魔法博士達もわかっていると思ってる?」
「え? 気づいてないの?」
なぜかレオンス様がジド目になった。
「気づいていたら魔法博士達は何か言って来るだろうに」
言って来る? 何を?
「え? もしかして怒られる?」
「は? マジか……。あのな、吸収魔法も確かに使えるだろうけど、あれはできないからな!」
「え? レオンス様が!?」
やったぁ。レオンス様に勝てる魔法があった!
「俺は出来るにきまっているだろう」
なんですとー。ぬか喜びさせやがって!!
「何を言われるっていうのよ」
「どうやったとか、どんな原理だとか、根掘り葉掘り」
「うん? やり方を問われるって事?」
「言っただろう。出来ないって」
自分も私も出来るのに、先生方が出来ないの確定なんだ。
「はあ。もっと自分が凄いって気づけよ」
右手で額を抑えつつ大袈裟にため息をついた。
凄いかぁ。まあ確かに全種類の適性はあるよ。でも、今日の事で適性がなくても使えると、レオンス様が示したんじゃない。
「適性がない魔法も使ったじゃない。全属性を使えるじゃないの」
「まあな。闇属性以外はな。だけど俺の場合、光と火以外は、持続性はない」
「そうなの?」
「使い続けて10分ぐらい?」
それだけ使えれば十分なのではないかしら!
「彼らが出来るのは、教科書に載っている事だけだ。君がやった様な魔法の使い方はしないだろう。その為の魔法陣だろう」
「なるほど。そうよね」
私は納得と頷く。
魔法陣が使えないから自分でしたのだもの。そうよね。
「俺達が、教科書以外の使い方をするのは転生者だからだろう」
「わぁ。聞こえるって!」
壁際に侍女と騎士が立っている。興味なさそうにしているけど、聞いた話は報告されるかもしれない。
「大丈夫だ。風魔法を展開して、言葉を濁している。だから話し声は聞こえるけど、何を言っているかはわからないだろう」
なにか魔法を展開しているとは思っていたけど、そんな事も出来るんだ。そういうのお得意なのですね。
「お待たせしました」
ノックと共に宰相のガムン公爵と先生の二人が部屋に入って来た。
ガムン公爵は、茶色の髪に顎髭を生やしている。灰色の鋭い瞳で、ちょっと強面の人。
私達は立ち上がり軽く礼をする。
三人は、私達が座る向かい側のソファーに腰を下ろした。私達も座りなおす。
「まず、今回の話をする前に、この様な事がありましたら殿下達に声を掛ける前に、先生方に伝える様にお願いしたい」
「はい。申し訳ありませんでした。ですが、誰が犯人かわからなかったものですから」
いや理由は違うよね。魔法の実演よね?
「そうか。なら次からは私に言いなさい」
「え……」
つい驚いて声がでちゃった。
いやいやいや、無理でしょう。時間がない時には特に!
「そのように致します」
にっこり令息スマイルね。
「で、タシデホア先生なのだが、君達に嵌められたと言っている」
嵌められたですって!?
「彼は、彼女に……ココドーネ嬢に魔法陣を消す様に頼まれたと」
「私にですか!?」
どういう事? しかもなぜタシデホア先生に頼むのよ。描いた先生は別よ。
「消しに行ってみれば、あなた達が待ち構えていたというではありませんか」
「私達が先生を嵌める為に、あんな茶番を起こしたと言うのですか? 私達に先生を嵌める理由がありません」
茶番って、自分で立てた計画でしょうに。
「私もそう思った。だがなぜか暴風雨の魔法陣が描かれていたらしい。本来あそこには、水魔法の魔法陣だったはずだと」
なにそれ。私達が魔法陣を描いて待ち構えていたというの?
「彼が言うには、殿下達に二人の魔法の凄さを見てもらう為ではないかと言っていたが? レオンス殿は殿下達を誘ったとか」
うわぁ。あんな誘い方るすから裏目に出たじゃないの。
「なるほど。そう来るか」
レオンス様が呟いているけど、これどうするのよ!
結局私達、疑われているじゃないの。
まあガムン公爵の言う通りよね。なぜ他国の王子なのよ。
伝え方も凄かった。
風魔法に声を乗せて、誘い出したのだから。
『バビット様。レオンスです。これから秘密裏の魔法ショータイムにご招待したいと思いますが、いかがでしょうか』
――よ!
で、呼び出した所に、仲良し三人組殿下とそのお付きが来て、ステージで起きた事を話し、証拠を消しに来るだろう犯人を捕らえると言えば、ベビット殿下だけではなくイルデフォンソ殿下にマルシアール殿下も一緒に来る事になった。
ただ、結界で守れる人数に制限があった為に、護衛にレオ様だけ付いてくる事になったのよね。
「……ケーキを食わせてやるって言われても、俺以外について行くなよ」
私は、お子様じゃないのだけど!
事件を解決し、私達は聞き取りの為に王宮へ連れてこられた。犯人であるタシデホア先生は、今頃取り調べを受けている事でしょう。
私達は、とりあえずここで待機するように言われ、ケーキまでご馳走になっているってわけ。
にしても、馬車の中ではないと言うのになぜに隣に座る。
「それにしてもあの先生、私をそんなに逆恨みしていたのかな?」
「逆恨みね。女だから? 自分の人生を棒に振る行為だぞ。隠れて意地悪するならわかるけど。バレたら言い訳できないだろう」
「そうよね。バレバレよね。他の魔法博士の居る前だものね」
「……もしかして、自分がした事が他の魔法博士達もわかっていると思ってる?」
「え? 気づいてないの?」
なぜかレオンス様がジド目になった。
「気づいていたら魔法博士達は何か言って来るだろうに」
言って来る? 何を?
「え? もしかして怒られる?」
「は? マジか……。あのな、吸収魔法も確かに使えるだろうけど、あれはできないからな!」
「え? レオンス様が!?」
やったぁ。レオンス様に勝てる魔法があった!
「俺は出来るにきまっているだろう」
なんですとー。ぬか喜びさせやがって!!
「何を言われるっていうのよ」
「どうやったとか、どんな原理だとか、根掘り葉掘り」
「うん? やり方を問われるって事?」
「言っただろう。出来ないって」
自分も私も出来るのに、先生方が出来ないの確定なんだ。
「はあ。もっと自分が凄いって気づけよ」
右手で額を抑えつつ大袈裟にため息をついた。
凄いかぁ。まあ確かに全種類の適性はあるよ。でも、今日の事で適性がなくても使えると、レオンス様が示したんじゃない。
「適性がない魔法も使ったじゃない。全属性を使えるじゃないの」
「まあな。闇属性以外はな。だけど俺の場合、光と火以外は、持続性はない」
「そうなの?」
「使い続けて10分ぐらい?」
それだけ使えれば十分なのではないかしら!
「彼らが出来るのは、教科書に載っている事だけだ。君がやった様な魔法の使い方はしないだろう。その為の魔法陣だろう」
「なるほど。そうよね」
私は納得と頷く。
魔法陣が使えないから自分でしたのだもの。そうよね。
「俺達が、教科書以外の使い方をするのは転生者だからだろう」
「わぁ。聞こえるって!」
壁際に侍女と騎士が立っている。興味なさそうにしているけど、聞いた話は報告されるかもしれない。
「大丈夫だ。風魔法を展開して、言葉を濁している。だから話し声は聞こえるけど、何を言っているかはわからないだろう」
なにか魔法を展開しているとは思っていたけど、そんな事も出来るんだ。そういうのお得意なのですね。
「お待たせしました」
ノックと共に宰相のガムン公爵と先生の二人が部屋に入って来た。
ガムン公爵は、茶色の髪に顎髭を生やしている。灰色の鋭い瞳で、ちょっと強面の人。
私達は立ち上がり軽く礼をする。
三人は、私達が座る向かい側のソファーに腰を下ろした。私達も座りなおす。
「まず、今回の話をする前に、この様な事がありましたら殿下達に声を掛ける前に、先生方に伝える様にお願いしたい」
「はい。申し訳ありませんでした。ですが、誰が犯人かわからなかったものですから」
いや理由は違うよね。魔法の実演よね?
「そうか。なら次からは私に言いなさい」
「え……」
つい驚いて声がでちゃった。
いやいやいや、無理でしょう。時間がない時には特に!
「そのように致します」
にっこり令息スマイルね。
「で、タシデホア先生なのだが、君達に嵌められたと言っている」
嵌められたですって!?
「彼は、彼女に……ココドーネ嬢に魔法陣を消す様に頼まれたと」
「私にですか!?」
どういう事? しかもなぜタシデホア先生に頼むのよ。描いた先生は別よ。
「消しに行ってみれば、あなた達が待ち構えていたというではありませんか」
「私達が先生を嵌める為に、あんな茶番を起こしたと言うのですか? 私達に先生を嵌める理由がありません」
茶番って、自分で立てた計画でしょうに。
「私もそう思った。だがなぜか暴風雨の魔法陣が描かれていたらしい。本来あそこには、水魔法の魔法陣だったはずだと」
なにそれ。私達が魔法陣を描いて待ち構えていたというの?
「彼が言うには、殿下達に二人の魔法の凄さを見てもらう為ではないかと言っていたが? レオンス殿は殿下達を誘ったとか」
うわぁ。あんな誘い方るすから裏目に出たじゃないの。
「なるほど。そう来るか」
レオンス様が呟いているけど、これどうするのよ!
結局私達、疑われているじゃないの。
まあガムン公爵の言う通りよね。なぜ他国の王子なのよ。
伝え方も凄かった。
風魔法に声を乗せて、誘い出したのだから。
『バビット様。レオンスです。これから秘密裏の魔法ショータイムにご招待したいと思いますが、いかがでしょうか』
――よ!
で、呼び出した所に、仲良し三人組殿下とそのお付きが来て、ステージで起きた事を話し、証拠を消しに来るだろう犯人を捕らえると言えば、ベビット殿下だけではなくイルデフォンソ殿下にマルシアール殿下も一緒に来る事になった。
ただ、結界で守れる人数に制限があった為に、護衛にレオ様だけ付いてくる事になったのよね。
286
お気に入りに追加
601
あなたにおすすめの小説

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には
月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。
令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。
愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ――――
婚約は解消となった。
物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。
視点は、成金の商人視点。
設定はふわっと。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。

【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる