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第35話
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「彼が首位……」
え? レオンス様と知り合い?
私にしか聞こえないぐらいの呟きだったから他の方は気づいていない。
「凄いですわね。驚いてしまいましたわ。どこでお知り合いになりましたの?」
「えーと……魔法学園」
どうせ、王子達は知っている情報だろうし、そのうち元子爵家の令嬢だと知れる事だから言っても構わないわよね。
「魔法学園ですか? 何かイベントにご参加でも?」
フロール嬢が不思議そうに聞いてきた。
私達が通っていたという発想には、やはり思い至らないのね。
「自慢げだね。魔法は私でも使えるよ」
は? なぜイルデフォンソ殿下がご立腹? 出会いを訪ねられたから答えただけでしょう。
「……もしかして、ファビア嬢はここへ通う前にそちらに?」
「ええ。まあ……」
「嘘でしょう」
フロール嬢が目を丸くして驚きの声を上げた。
「そう言えば、魔法学園って10歳から通えるのだっけ? でも大抵は……」
「はい。今の私達と同じ歳ぐらいの者が通う事が多いです。魔法の才能もあり、勉学も殿下に次いでお出来になるとは。ココドーネ侯爵家は、才能があれば傍系にも投資なさるのですね。彼女のところとは違って」
今度は、エイデース帝国のマルシアール殿下の言葉を補足していたルイス様が、ディスってきたのだけど。
というか滅茶苦茶皮肉を言ってきているけど彼って、王弟の息子でしょう。何がそんなに……あ、そっか。自分より下の私が出来るから気に食わないのか。
この二人、器小っさ!
まあでも、まだ13,14のガキンチョか。
「今の話からすると、ファビア嬢の婚約者も同じって事?」
「はい。まあ……」
今の流れから更に話を振ってきますかね、バビット殿下。
「へえ。会ってみたいな。あ、私は魔法に興味があってね」
「今日は無理だと思われます」
そう言ったバビット殿下がお付きの者に目配せをすれば、彼は無理だと返した。
つまり、レオンス様に即会いたいのだがとコンタクトを取ったわけね。
「いえ、ここでお待ち頂ければお会いできると思われます。今日は、勉強会も生徒会もございませんから。彼女を迎えに来るはずです」
なぜにルイス様が、レオンス様の行動を把握しているのよ。
「そうなのか?」
そして、ベビット殿下が私に確認を取るし。嘘もつけないので、そうだと頷いた。
あぁ、面倒ごとに巻き込んだとレオンス様の機嫌が悪くなる。
「では待つかな」
「そうか。私は馬車で待って……」
「ファビア、お待たせって……」
ドアを開けつつ元気に入って来たレオンス様は、教室内の雰囲気に驚き黙った。
「申し訳ありません。取り込み中でしたか。外で待ちます……」
「いや、君を待っていたところだ」
ほんの一瞬だけ、私をチラッと見た。
きっと何を話したと言うところかしらね。魔法学園の事はまずかったのかしら。
「そうでしたか。何か御用がおありでしょうか。殿下」
「うん。その前に、私の事はバビットでいいよ。あなたの方が年上だし、ここのルールだよね」
「わかりました。そのように致します。バビット様」
満足そうにベビット殿下が頷いた。
「誰……」
隣からまた呟く声が聞こえた。
誰って、知り合いではなかったの?
フロール嬢を盗み見ると、マジマジとレオンス様を見つめていた。
「ファビア嬢の婚約者は、魔法学園を卒業しているらしいと聞いたけど」
「はい。そうです。私は、レオンス・タカビーダと申します。以後お見知りおきを」
「わかった。レオンス。私は魔法に興味があってね。君だろう? 魔法士になったお子様って」
「………」
あぁ、あれは怒っているわね。にっこりした笑顔だけど。お子様って言われればね。貴族学園に通う前にしていた仕事だから、ベビット殿下の言う通りではあるのだけど。
「私は失礼するよ」
睨みつける様にレオンス様を見ると、イルデフォンソ殿下は教室を出て行く。その後を慌ててお付きの二人が追った。
一瞬何あれという顔をするも、またにこりとほほ笑むレオンス様。
「ベビット殿下の言う通り、最年少で魔法士になりました」
「今度、魔法を教えてくれないか」
「申し訳ありません。指導の許可を得ておりませんので、出来かねます」
「そうなんだ」
そうなのよね。先生になる為には、その資格も必要なのよね。
それにレオンス様が、そんな面倒な事を引き受けるとも思えない。
「なるほど。じゃ今度魔法を見せてよ」
「そちらで手配して頂けましたら可能です」
つまり自分からは、させてくださいと申し出ないと言う事よね。異国の王子が所望だと貴族学園側に伝えれば、セッティングしてくれる。
けど、見たいなら自分で伝えろという事ね。
「わかった。そうするよ。楽しみだ」
「その時は、俺も見学させてもらうよ」
マルシアール殿下も見学するようね。
このままだと大事になりそうだけど大丈夫かしらね。
「私も見たいですわ。ファビア嬢の魔法も」
と面倒な事を振らないでほしいのだけど、フロール嬢!
彼女と目が合えば、にっこりとほほ笑み返されてしまった。その笑顔はチャーミングだ。
同じ黒髪だけど、可愛いのよね。私が男だったらイチコロよ。
――◇――◆――◇――
私が、乙女ゲームのヒロインのフロール・マルンだと気が付いた時は焦ったわ。だって転生者のヒロインって、悪役令嬢の転生者にやり返されるじゃない。
だから婚約者がいる王子は狙わず、隠れ攻略対象者を狙う予定だったのに、なぜ登場しない彼女がいるのよ。
彼女も転生者? でもなぜ彼なのかしら?
もう少し探りを入れないと転生者だとバレたら危険ね。
え? レオンス様と知り合い?
私にしか聞こえないぐらいの呟きだったから他の方は気づいていない。
「凄いですわね。驚いてしまいましたわ。どこでお知り合いになりましたの?」
「えーと……魔法学園」
どうせ、王子達は知っている情報だろうし、そのうち元子爵家の令嬢だと知れる事だから言っても構わないわよね。
「魔法学園ですか? 何かイベントにご参加でも?」
フロール嬢が不思議そうに聞いてきた。
私達が通っていたという発想には、やはり思い至らないのね。
「自慢げだね。魔法は私でも使えるよ」
は? なぜイルデフォンソ殿下がご立腹? 出会いを訪ねられたから答えただけでしょう。
「……もしかして、ファビア嬢はここへ通う前にそちらに?」
「ええ。まあ……」
「嘘でしょう」
フロール嬢が目を丸くして驚きの声を上げた。
「そう言えば、魔法学園って10歳から通えるのだっけ? でも大抵は……」
「はい。今の私達と同じ歳ぐらいの者が通う事が多いです。魔法の才能もあり、勉学も殿下に次いでお出来になるとは。ココドーネ侯爵家は、才能があれば傍系にも投資なさるのですね。彼女のところとは違って」
今度は、エイデース帝国のマルシアール殿下の言葉を補足していたルイス様が、ディスってきたのだけど。
というか滅茶苦茶皮肉を言ってきているけど彼って、王弟の息子でしょう。何がそんなに……あ、そっか。自分より下の私が出来るから気に食わないのか。
この二人、器小っさ!
まあでも、まだ13,14のガキンチョか。
「今の話からすると、ファビア嬢の婚約者も同じって事?」
「はい。まあ……」
今の流れから更に話を振ってきますかね、バビット殿下。
「へえ。会ってみたいな。あ、私は魔法に興味があってね」
「今日は無理だと思われます」
そう言ったバビット殿下がお付きの者に目配せをすれば、彼は無理だと返した。
つまり、レオンス様に即会いたいのだがとコンタクトを取ったわけね。
「いえ、ここでお待ち頂ければお会いできると思われます。今日は、勉強会も生徒会もございませんから。彼女を迎えに来るはずです」
なぜにルイス様が、レオンス様の行動を把握しているのよ。
「そうなのか?」
そして、ベビット殿下が私に確認を取るし。嘘もつけないので、そうだと頷いた。
あぁ、面倒ごとに巻き込んだとレオンス様の機嫌が悪くなる。
「では待つかな」
「そうか。私は馬車で待って……」
「ファビア、お待たせって……」
ドアを開けつつ元気に入って来たレオンス様は、教室内の雰囲気に驚き黙った。
「申し訳ありません。取り込み中でしたか。外で待ちます……」
「いや、君を待っていたところだ」
ほんの一瞬だけ、私をチラッと見た。
きっと何を話したと言うところかしらね。魔法学園の事はまずかったのかしら。
「そうでしたか。何か御用がおありでしょうか。殿下」
「うん。その前に、私の事はバビットでいいよ。あなたの方が年上だし、ここのルールだよね」
「わかりました。そのように致します。バビット様」
満足そうにベビット殿下が頷いた。
「誰……」
隣からまた呟く声が聞こえた。
誰って、知り合いではなかったの?
フロール嬢を盗み見ると、マジマジとレオンス様を見つめていた。
「ファビア嬢の婚約者は、魔法学園を卒業しているらしいと聞いたけど」
「はい。そうです。私は、レオンス・タカビーダと申します。以後お見知りおきを」
「わかった。レオンス。私は魔法に興味があってね。君だろう? 魔法士になったお子様って」
「………」
あぁ、あれは怒っているわね。にっこりした笑顔だけど。お子様って言われればね。貴族学園に通う前にしていた仕事だから、ベビット殿下の言う通りではあるのだけど。
「私は失礼するよ」
睨みつける様にレオンス様を見ると、イルデフォンソ殿下は教室を出て行く。その後を慌ててお付きの二人が追った。
一瞬何あれという顔をするも、またにこりとほほ笑むレオンス様。
「ベビット殿下の言う通り、最年少で魔法士になりました」
「今度、魔法を教えてくれないか」
「申し訳ありません。指導の許可を得ておりませんので、出来かねます」
「そうなんだ」
そうなのよね。先生になる為には、その資格も必要なのよね。
それにレオンス様が、そんな面倒な事を引き受けるとも思えない。
「なるほど。じゃ今度魔法を見せてよ」
「そちらで手配して頂けましたら可能です」
つまり自分からは、させてくださいと申し出ないと言う事よね。異国の王子が所望だと貴族学園側に伝えれば、セッティングしてくれる。
けど、見たいなら自分で伝えろという事ね。
「わかった。そうするよ。楽しみだ」
「その時は、俺も見学させてもらうよ」
マルシアール殿下も見学するようね。
このままだと大事になりそうだけど大丈夫かしらね。
「私も見たいですわ。ファビア嬢の魔法も」
と面倒な事を振らないでほしいのだけど、フロール嬢!
彼女と目が合えば、にっこりとほほ笑み返されてしまった。その笑顔はチャーミングだ。
同じ黒髪だけど、可愛いのよね。私が男だったらイチコロよ。
――◇――◆――◇――
私が、乙女ゲームのヒロインのフロール・マルンだと気が付いた時は焦ったわ。だって転生者のヒロインって、悪役令嬢の転生者にやり返されるじゃない。
だから婚約者がいる王子は狙わず、隠れ攻略対象者を狙う予定だったのに、なぜ登場しない彼女がいるのよ。
彼女も転生者? でもなぜ彼なのかしら?
もう少し探りを入れないと転生者だとバレたら危険ね。
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