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第19話
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「お父様」
「おぉ、ファビア。元気にしていたか」
「はい。お二人は?」
「今日は、一人だ」
「そう」
珍しい事もあるもんだ。
今日は、ココドーネ侯爵家で行われる年に数度行われる集まりの日。
どんなに邪険にされようとも来ていた継母が来ないなんてね。本当に出禁になったのかしら?
「少し太ったか?」
「え? そう思う?」
ごはんが美味しいからかしら? でもこの世界ではおかわりなどあり得ない。出された分しか食べられないから食べ過ぎる事はないけど、カロリーは子爵家に居た時よりは高いかもね。
でも主な原因は、週一で食べているケーキでしょう。
子爵家の子供が着るには豪勢過ぎるドレスを着ている事だし、今日は控えようかしら?
「お前は、細かったからそれぐらいがいい」
「そ、そうかな」
「で、上手くやっているか?」
「はい。良くして頂いています。学園の方もぼちぼちです」
侯爵家でも学園でも思ったほど酷い扱いはされてはいない。
そもそも学園では、皆より年下の上に女子一人なのだから浮くのは当たり前。先生がそれを考慮してか、ついて下さっているし。
「なら良かった。ほらいつも通り食べてくるといい」
お父様が、ケーキが乗っているテーブルに目を移す。
うぬぬぬ。我慢しようと思ったけど、いつもは目にしない珍しいケーキがあるではないか!
「では食べてまいります」
ケーキちゃん。お待たせしました。私が食べてあげるからね。
ケーキを一つ、二つ……いや三つのせ、開いている席を見つけそこでパクリ。
あぁ幸せだ。
「君は、ケーキを頬張る時が一番幸せそうだね」
「はう……」
危なく咽るところだった。
横を見れば、エメリック様が立っている。その後ろには、親族の子供達がぞろぞろと。
は、恥ずかしいからその状況で話しかけないで欲しいわ。
「あははは。とてもおいしいですわ」
「残ったら後で食べるといいよ」
そうエメリック様が耳打ちし、去っていく。
「何赤くなっているのかしら」
そう問われ、今度はエメリック様が去って行った方向とは反対に振り向けば、名前は忘れたけどエメリック様より二つほど年上の令嬢が私を見下ろし立っていた。
赤くなったのは、食いしん坊だと思われていると思ったからなんだけど。
「……だって、食いしん坊だねって言われて」
そうは言われてはいないが、そう受け取ったので間違いではないはず。
「っぷ。何それ。あなた、ここに住んでいるって本当?」
笑ったと思ったらテーブルに片手を付き、顔を覗き込むように言われた。
なぜにそんなに怒っているのでしょう。
子爵家のクセにってことかしら。
「属性持ちだからっていい気にならない事ね」
魔法学園に行くためにここに住んでいるって知っているじゃないの。
傍系の中でも、伯爵家の子供がたまにマウントを取ろうとするのよね。彼女もそう。
こういうのが嫌だから、子供達の輪に加わらないでいたというのに。
「……はい」
返事を返したのに帰ってくれないのだけど。未だに睨みつけて来る。
「あ、食べます?」
「食べかけなんていらないわよ!」
いやこれじゃないんだけどね。さすがに食べかけを食べるとは言わない。
「いえ。新しいのを取って来ましょうかと言う意味で」
「……必要ないわ。ふん。そんなんだと、2年になれないわよ。全員が2年になれるわけではないのですって」
へえ。知っているんだ。ご令嬢にしては珍しい。
貴族学園は、どんな成績だろうと卒業できる。
それに通っている私がそれを知らないわけないでしょう。
「はい。心得ております。留年しないように頑張ります」
「リュウネン?」
「あ、いえ。期待に沿えるように頑張ります」
「誰も期待などしていないわよ」
ふんと去っていく。一体何を言いたかったのだろうか。
しかし、この世界には『留年』という言葉は存在しないのね。
まあその制度自体ないみたいだし、当たり前か。
「う~ん。おいしい」
せっかく、本家に来たになぜケーキを食べないのかしらね。勿体ない。いや、食べないでくれたほうがいいかも。
残れば後で食べられる!
「うーん。でもあんなに沢山は無理よね」
まだまだ沢山残ってるデザートを見て、私は呟いた。
「お腹を壊すからそれだけでやめておきなさい」
「あ、お父様」
おかわりをしようとしていると思われたのね。
ケーキ一個は小さいから、まだいけるんだけどなぁ。
「もう一個ダメ?」
「ダメだ」
「ちぇ」
ケーキを食べられないとしたら何をしたらいいのよ。
見た目は10歳だけど、精神年齢は20代なのよね。
でもこのごろ学園にいるせいか、精神年齢が少し下がった気がするわ。
「おぉ、ファビア。元気にしていたか」
「はい。お二人は?」
「今日は、一人だ」
「そう」
珍しい事もあるもんだ。
今日は、ココドーネ侯爵家で行われる年に数度行われる集まりの日。
どんなに邪険にされようとも来ていた継母が来ないなんてね。本当に出禁になったのかしら?
「少し太ったか?」
「え? そう思う?」
ごはんが美味しいからかしら? でもこの世界ではおかわりなどあり得ない。出された分しか食べられないから食べ過ぎる事はないけど、カロリーは子爵家に居た時よりは高いかもね。
でも主な原因は、週一で食べているケーキでしょう。
子爵家の子供が着るには豪勢過ぎるドレスを着ている事だし、今日は控えようかしら?
「お前は、細かったからそれぐらいがいい」
「そ、そうかな」
「で、上手くやっているか?」
「はい。良くして頂いています。学園の方もぼちぼちです」
侯爵家でも学園でも思ったほど酷い扱いはされてはいない。
そもそも学園では、皆より年下の上に女子一人なのだから浮くのは当たり前。先生がそれを考慮してか、ついて下さっているし。
「なら良かった。ほらいつも通り食べてくるといい」
お父様が、ケーキが乗っているテーブルに目を移す。
うぬぬぬ。我慢しようと思ったけど、いつもは目にしない珍しいケーキがあるではないか!
「では食べてまいります」
ケーキちゃん。お待たせしました。私が食べてあげるからね。
ケーキを一つ、二つ……いや三つのせ、開いている席を見つけそこでパクリ。
あぁ幸せだ。
「君は、ケーキを頬張る時が一番幸せそうだね」
「はう……」
危なく咽るところだった。
横を見れば、エメリック様が立っている。その後ろには、親族の子供達がぞろぞろと。
は、恥ずかしいからその状況で話しかけないで欲しいわ。
「あははは。とてもおいしいですわ」
「残ったら後で食べるといいよ」
そうエメリック様が耳打ちし、去っていく。
「何赤くなっているのかしら」
そう問われ、今度はエメリック様が去って行った方向とは反対に振り向けば、名前は忘れたけどエメリック様より二つほど年上の令嬢が私を見下ろし立っていた。
赤くなったのは、食いしん坊だと思われていると思ったからなんだけど。
「……だって、食いしん坊だねって言われて」
そうは言われてはいないが、そう受け取ったので間違いではないはず。
「っぷ。何それ。あなた、ここに住んでいるって本当?」
笑ったと思ったらテーブルに片手を付き、顔を覗き込むように言われた。
なぜにそんなに怒っているのでしょう。
子爵家のクセにってことかしら。
「属性持ちだからっていい気にならない事ね」
魔法学園に行くためにここに住んでいるって知っているじゃないの。
傍系の中でも、伯爵家の子供がたまにマウントを取ろうとするのよね。彼女もそう。
こういうのが嫌だから、子供達の輪に加わらないでいたというのに。
「……はい」
返事を返したのに帰ってくれないのだけど。未だに睨みつけて来る。
「あ、食べます?」
「食べかけなんていらないわよ!」
いやこれじゃないんだけどね。さすがに食べかけを食べるとは言わない。
「いえ。新しいのを取って来ましょうかと言う意味で」
「……必要ないわ。ふん。そんなんだと、2年になれないわよ。全員が2年になれるわけではないのですって」
へえ。知っているんだ。ご令嬢にしては珍しい。
貴族学園は、どんな成績だろうと卒業できる。
それに通っている私がそれを知らないわけないでしょう。
「はい。心得ております。留年しないように頑張ります」
「リュウネン?」
「あ、いえ。期待に沿えるように頑張ります」
「誰も期待などしていないわよ」
ふんと去っていく。一体何を言いたかったのだろうか。
しかし、この世界には『留年』という言葉は存在しないのね。
まあその制度自体ないみたいだし、当たり前か。
「う~ん。おいしい」
せっかく、本家に来たになぜケーキを食べないのかしらね。勿体ない。いや、食べないでくれたほうがいいかも。
残れば後で食べられる!
「うーん。でもあんなに沢山は無理よね」
まだまだ沢山残ってるデザートを見て、私は呟いた。
「お腹を壊すからそれだけでやめておきなさい」
「あ、お父様」
おかわりをしようとしていると思われたのね。
ケーキ一個は小さいから、まだいけるんだけどなぁ。
「もう一個ダメ?」
「ダメだ」
「ちぇ」
ケーキを食べられないとしたら何をしたらいいのよ。
見た目は10歳だけど、精神年齢は20代なのよね。
でもこのごろ学園にいるせいか、精神年齢が少し下がった気がするわ。
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