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 フロラドルは、僕を真っ直ぐと見据え言った。

 「ツエルと君との関係とは何だ?」

 それは、わかっていて聞いているんだよね?

 「………」

 「このままだと彼は、ツエルだろうとなかろうと罰せられるだろう。奴隷リングが彼に着いていたその確証がほしい」

 「え?」

 「お人好しの君がただの人助けでそれをした。という事だと証拠がない。奴隷リングは、物証としてあがってないからな。だから確実にあったという確かな証拠が欲しい」

 『なるほどね』

 なるほどねって……。
 どういう意味だとチラッとラスを見た。

 『このままだとツエルは、奴隷リングをつけていなかった事にされるってことよ。そりゃそうよ。火を消そうとして死んだ事になっているんだもの。なぜそうしたか。奴隷の存在を隠す為。あなたが本当に助け出していたとしても、その腕には今はそのリングはない。弱いのよ。奴隷だったという証拠としては。ただ炎から助け出した事されるって事よ。このままツエルが生きているとなれば、逆にすべての罪を押し付けられるって事でしょうね』

 お兄ちゃんを助け出すのは目標だった。今の状況じゃ助け出した事にならないって事だよね。

 「兄です。奴隷リングには、本当の名前が表示されていたんです。でも小さい頃の記憶を消されていて僕の事を覚えていません。たぶん自分の本当の名前も知らないと思います」

 「ありがとう。それが聞きたかった。よかった。二人共無事で」

 「お父さんと知り合いだったのですか?」

 「あぁ。仕事上の付き合いがあった。まさかあんな事があるなんてな。調べようとしたけど無理だった。だから今回の領主逮捕は転機だと思った。ところが君が捕まったと聞いてな。今の所、誰が敵かわからないから二人で話をしたかった」

 よかった。この人は味方みたい。

 『あなたに何をさせる気かしらね?』

 え? 味方じゃないの?

 「お願いがある」

 「お願い?」

 「ツエルの様に奴隷リングを着けられている者がまだいるはずなんだ。だが、我々では暴けない」

 『私を使って暴けって事かしらね?』

 え? 奴隷リングを着けている人を探せって事?

 「一人でも奴隷リングを着けたまま捕らえる事が出来れば、ツエルに奴隷リングが着いていた事が証明できる。そして、君の兄としてやり直せる」

 「え? 本当に?」

 『待って! 話に乗る気? 危険よ。あなたはまだ、力をつけていない』

 「本当だとも。ただしツエルはこの領土で暮らすことにはなるがな」

 「その力って何? 権力? 腕力? 魔力? 僕が時間を掛ければ本当に手に入れられる? 権力なら今目の前にある」

 『でも危機に陥った時に、助けてくれるかどうかわからないわ!』

 「うん。でもチャンスは今だと思う。今まで通りラスが助けてくれればいいよ」

 『……わかったわ。でもリスクが高いのよ。もし成功してもすぐにバックの組織を捕まえるのは不可能よ。その存在が明るみになるだけ。しかもそれによって、ずっとあなたは狙われるわ』

 「わかってるよ。どっちにしてもお兄ちゃんが生きていると知られれば、二人共狙われる。だったら保護してくれると言っているんだから保護してもらおうよ」

 『保護してくれるのは、ツエルの方でしょう? あなたは、前線に出されるのよ?』

 「それでも、お願い。敵の相手でもあるんだから……」

 『マグドーラ様の……そうね。でもあなたの命が優先よ』

 「うん。ありがとう!」

 「決まったようだな」

 「でも連れて来たとして、誰が調べるんですか?」

 「そのリングのランクはわかるか?」

 「ランク?」

 『Sよ』

 「あ、そういえば、そうだね。Sです」

 「Sか。それなら彼で大丈夫だろう。あぁ、そういえばSで思い出した。オウギモンガを連れていたな」

 紅葉だ。すかり忘れていた……。

 「驚いたよ。君達は、そのオウギモンガの眷属になっているようだな」

 「え……なんで」

 『Sランクのあの男が鑑定してわかったんでしょう』

 「紅葉をどうしたんですか?」

 「紅葉……そういえば、少女がそう呼んでいたそうだが。オウギモンガは、今も少女の側だよ。首輪のせいなのか、取り上げようとすると、具合が悪くなるようでな。危害を加えてこないようだしそのままだ」

 僕は、安堵する。

 「行くならそのオウギモンガも連れて行くといいだろう。眷属の君を守ってくれる」

 守るって……攻撃系の魔法とかなさそうだけど。まあ確かに守ってくれようとしてくれてはいるみたい。

 「紅葉は、彼女達の側に置いておきたいのですが」

 僕より、彼女達を守ってほしい。

 「牢に居る限り、逆に安全だ。今はな」

 『そうね。着いて来るようなら連れて行きましょう。連絡係としていいかもしれないわ。レンカとサツナに、連絡を取る事が出来る』

 「そっか。だったらそうしよう。紅葉も連れて行きます」

 フロラドルさんは頷いた。
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