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戻るとまだ、魔法の適正調べが行われていた。大人気だな。
あ、アーズラッドが見学している。終わったのかな?
「ねえ、どうだった?」
「どうだったって。俺に魔法なんて使えるわけないだろう?」
「じゃ受けないの?」
「受けたよ」
「そっか。そうだよね。受けたからわかったんだよね」
「……まあいっか。で、買ってきたの? リストって……何買ってんだ。お前」
僕が手に持っていたランプを見て言った。
「あ、これ? なんか冒険者なら持っていた方がいいみたいだからさ」
「バカだなぁ。そんなの施設にあるやつもらえばいいだろう」
「くれるの?」
「取り合いになるだろうけど、もらうんだよ! って、お前それ買っちゃったら持ってるからいらないだろうってなるだろうに!」
「あぁ……そうかもね」
「まったく。まあいいや。施設に戻ろうぜ」
「うん」
施設に戻ると、アーズラッドは物置に行くと行ってしまった。
『今のうちに決めておきましょうか』
「うん? あぁ、使える魔法ね」
『私的には、サーチとかの方がいいと思うの。後は、シールド系』
「おい。ここをでるぞ」
「うん? あ、お帰り。出るってどこいくの?」
「とりあえず、ここの領地を出よう」
そのつもりではいたけど、急だ。どうしたんだろう?
「随分大きな鞄だね?」
さっきまで持っていなかった鞄をアーズラッドは持っていた。
「色んな物を詰め込んで来た」
「え? 勝手に持って行くの? これ、公平に分けるって言ってなかった? 怒られるよ」
「バカかお前。公平って言ってもな。全員に当たる分なんてないんだぞ。それに他の奴も持って行っている!」
「でも。ちゃんとお金もらってるし」
「お前なあ、いいか、俺達は今度寝床はないんだ。普通に建物の中で寝ようと思ったら毎回お金がかかる。貰ったお金なんて、あっという間になくなるんだよ。俺達Fランクだぜ? 稼ぎなんて今までと違ってないんだよ!」
今までもなかったと思うけどな……。まあそれが返還されて金貨一枚もらったけど。
「あぁ、もういい! お前トロ過ぎ! 俺は行くからな!」
「え? あ……」
大きな荷物を抱え一緒に行こうと言っていたはずのアーズラッドが、行ってしまった。
「置いていかれた……」
『問題ないわよ。私がいるから』
「……でもなぁ」
彼は、どんくさい僕の面倒を見てくれた。読み書きとか計算とか教えてくれたのも彼だ。
「ちゃんとお礼、言いたかったな」
『次にあった時にでも言えばいいんじゃないかしら? 永遠の別れでもないでしょう』
「うん。そうだね。でも、もしかしてこうなるってわかってた?」
『何となくね。あなたと会話は出来なかったけど、この十年間あなた達を見ていたからね』
「そっか……」
『彼は、あなたより年上だからある程度、知識を持ってここに来た。自分がどんな目にあっているのかも、あなたより把握していたのよ。まあ、もっと言えば、スラゼの様なあまり欲がない人間は、損をするって事かしらね』
「損したの僕?」
『たぶん施設の子が、アーズラッドの様にこっそり持ち出しているはずよ。まあわかっていても見て見ぬふりをしてくれているみたいね』
「え? なんで?」
『まあ、ご祝儀的な? 一人立ちおめでとう。みたいな? どうせ処分するものだったのだろうし。ぼろぼろで廃棄処分だからね』
「廃棄? 使えるのに?」
『そうよ。一般的にはね』
「そうなんだ……」
その日の夜に施設に泊まったのは、僕を含めたった三人だった。僕より年下で、冒険者を選んだ子。
違う施設に移る事も出来たと思うんだけど、仲が良かった二人だったからな。別れ別れになるのが嫌だったみたいだ。
でもどうするんだろう。
あ、アーズラッドが見学している。終わったのかな?
「ねえ、どうだった?」
「どうだったって。俺に魔法なんて使えるわけないだろう?」
「じゃ受けないの?」
「受けたよ」
「そっか。そうだよね。受けたからわかったんだよね」
「……まあいっか。で、買ってきたの? リストって……何買ってんだ。お前」
僕が手に持っていたランプを見て言った。
「あ、これ? なんか冒険者なら持っていた方がいいみたいだからさ」
「バカだなぁ。そんなの施設にあるやつもらえばいいだろう」
「くれるの?」
「取り合いになるだろうけど、もらうんだよ! って、お前それ買っちゃったら持ってるからいらないだろうってなるだろうに!」
「あぁ……そうかもね」
「まったく。まあいいや。施設に戻ろうぜ」
「うん」
施設に戻ると、アーズラッドは物置に行くと行ってしまった。
『今のうちに決めておきましょうか』
「うん? あぁ、使える魔法ね」
『私的には、サーチとかの方がいいと思うの。後は、シールド系』
「おい。ここをでるぞ」
「うん? あ、お帰り。出るってどこいくの?」
「とりあえず、ここの領地を出よう」
そのつもりではいたけど、急だ。どうしたんだろう?
「随分大きな鞄だね?」
さっきまで持っていなかった鞄をアーズラッドは持っていた。
「色んな物を詰め込んで来た」
「え? 勝手に持って行くの? これ、公平に分けるって言ってなかった? 怒られるよ」
「バカかお前。公平って言ってもな。全員に当たる分なんてないんだぞ。それに他の奴も持って行っている!」
「でも。ちゃんとお金もらってるし」
「お前なあ、いいか、俺達は今度寝床はないんだ。普通に建物の中で寝ようと思ったら毎回お金がかかる。貰ったお金なんて、あっという間になくなるんだよ。俺達Fランクだぜ? 稼ぎなんて今までと違ってないんだよ!」
今までもなかったと思うけどな……。まあそれが返還されて金貨一枚もらったけど。
「あぁ、もういい! お前トロ過ぎ! 俺は行くからな!」
「え? あ……」
大きな荷物を抱え一緒に行こうと言っていたはずのアーズラッドが、行ってしまった。
「置いていかれた……」
『問題ないわよ。私がいるから』
「……でもなぁ」
彼は、どんくさい僕の面倒を見てくれた。読み書きとか計算とか教えてくれたのも彼だ。
「ちゃんとお礼、言いたかったな」
『次にあった時にでも言えばいいんじゃないかしら? 永遠の別れでもないでしょう』
「うん。そうだね。でも、もしかしてこうなるってわかってた?」
『何となくね。あなたと会話は出来なかったけど、この十年間あなた達を見ていたからね』
「そっか……」
『彼は、あなたより年上だからある程度、知識を持ってここに来た。自分がどんな目にあっているのかも、あなたより把握していたのよ。まあ、もっと言えば、スラゼの様なあまり欲がない人間は、損をするって事かしらね』
「損したの僕?」
『たぶん施設の子が、アーズラッドの様にこっそり持ち出しているはずよ。まあわかっていても見て見ぬふりをしてくれているみたいね』
「え? なんで?」
『まあ、ご祝儀的な? 一人立ちおめでとう。みたいな? どうせ処分するものだったのだろうし。ぼろぼろで廃棄処分だからね』
「廃棄? 使えるのに?」
『そうよ。一般的にはね』
「そうなんだ……」
その日の夜に施設に泊まったのは、僕を含めたった三人だった。僕より年下で、冒険者を選んだ子。
違う施設に移る事も出来たと思うんだけど、仲が良かった二人だったからな。別れ別れになるのが嫌だったみたいだ。
でもどうするんだろう。
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