【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
184 / 192
第十五章 謀略に始まり謀略で終わる

第百八十四話

しおりを挟む
 その組織に当時十六歳のクレも志願していた。彼女はサンチナドに心酔する一人で、優しく強いステラミリスを慕っていた。
 そんな彼女と組んでトンマーゾはエクランド国に送り込まれた。二人は年も離れている事もあり、知らない者としてそれぞれ潜伏する事になった。
 暫くはそれぞれの当てがられた国に潜伏し、優秀な薬師の獲得と魔術師を探し出す事が役割だった。だが、エクランド国では優秀な薬師は沢山いたが獲得――つまり国へ連れ帰る事は困難だった。
 薬師達は、この国で仕事が出来るのがステータスだからだ。わざわざ聞いた事もない国に行こうという者はいなかった。
 魔術師だって見当たらない。そもそもこの国は他国と違い思ったより警備が強化されていた。
 薬師に関して言えば国にいる者達を手厚く保護している。仕事がないと言えば紹介もしてくれる。
 そして薬師達の管理もきちんとされていた。

 魔術師の組織の存在は、暫くは知られてはならない為、目星をつけるだけで良しとされている。薬師獲得は、いずれ魔術師の世界が訪れる時に戦争になる恐れもあり、自分達側に優秀な薬師達を揃えておきたいという考えからだった。
 魔術師の国とわかった時点でサラスチニ国と戦争する国などいないと思うトンマーゾだったが、命令に背く事も出来ないので、自ら薬師になりエクランド国に潜伏する事にした。

 トンマーゾはステラミリスと定期的に連絡を取り合っていた。と言っても、彼女が精神体になって会いに来る形だった。
 その彼女に、クレがトンマーゾの監視をしているみたいだと教わる。彼の情報が入って来ているのをステラミリスは掴んだのだ。
 トンマーゾはやっと何故あんな小娘と組まされたか理解した。
 クレはサンチナドにある事ない事吹き込まれ、一時期ステラミリスの婚約者だったトンマーゾの監視役にあてられたのだ。彼女もまた精神体で動ける体質だった。
 それにこの国にあてがられた理由もだ。手柄を立てられては困るからだ。どう考えてもこの国から薬師を連れ帰るのは無理だった。薬師の国から薬師を一人も連れて来られない。トンマーゾの株は下がる。

 トンマーゾは当初、自分を認めてもらうつもりだった。だがそれは諦め、サンチナドの謀略を暴く事にする。ステラミリスと連絡を取り合っているのを知られては困る。監視されるのも動きづらい。
 そこで王宮専属薬師になる事を思い立つ。知り合いを作り後見人を確保する。そして一発合格を狙う。失敗すれば次はないからだ。なってしまえばどうしようも出来ないだろうが、なろうとしているのならば阻止できるからである。
 トンマーゾは一発合格を果たす。薬師になったばかりだが、薬師の技術は以前から習得していたから出来た事だった。

 その後、ステラミリスとの連絡は昼間行う事にした。トンマーゾとステラミリスは指輪を交換しあっていた。それはマジックアイテムでお互いを感じられる物。つまり精神体が近くにいるとわかる物だった。
 ステラミリスが訪ねて来た時は、そっと裏手の森に入り魔術で自分を眠らせステラミリスと会話していた。夜だとクレが精神体で監視に来るかもしれないからだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

処理中です...