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第十五章 謀略に始まり謀略で終わる
第百八十二話
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「魔術師の王子よ。悪いがこれだけは譲れないんでな!」
慌ててレオナールは、サンチナドに駆け寄るが、彼は息絶えていた!
「あなたの気持ちもわかりますが、これでは……」
「俺がこいつの下いたのはこの為だ! 生き証人? こいつがしゃべるかよ! 色々でっち上げるに決まっているだろう!」
二人は睨みあう。
「ティモシー!」
「やばいよこれ。血が止まらない!」
ミュアンが叫び、エイブは青ざめて呟く。
ナイフに塗られていたのは、毒ではなく血が止まらなくなる薬だった!
ティモシーの顔は血の気がひき青白い。
(今度こそ死にそう……)
「これを使いな」
トンマーゾは、袋を渡した。
「止血剤だ。こいつならこういう方法をとるかもしれないと用意しておいた物だ」
「ありがとう」
ミュアンは素直に使おうとする。
「それ使うの? 大丈夫? 逆にあの男に使おうとしていた物かもしれなくない?」
「今それを私に渡したとして、彼は私に何をしたいと? 毒など渡さなくとも放っておけば、ティモシーは死ぬのですよ」
エイブが言うとミュアンはそう返す。トンマーゾを信じているというよりは、今の状況で毒を渡す意味がないという事である。
ためらいなくミュアンは止血剤を使った。少しすると血は止まった。
「止まったみたいね」
ミュアンは安堵して言った。それを聞いた周りも安堵する。
(俺、助かったのか……)
ボーっとする頭でティモシーは思った。
「あ、ありがとう。トンマーゾさん」
「ふん。優秀な魔術師を失うのは勿体ないからな」
「もしかしてあなた、この男に変わって、魔術師の組織を……」
「俺はそんな器じゃねぇよ」
レオナールの言葉にそのつもりないとトンマーゾは返す。
「ただ俺は、魔術師はなくしたくねぇ。どっちにしても今日は魔法陣で結界を解除する事は出来ないだろうけど、やめてくれないかそれ。こいつは死んだ。もうお前らを狙う事もない。それでいいだろう?」
トンマーゾは、ティモシーの横に座っているミュアンを見下ろし真剣な顔で言った。ここに来たもう一つの目的だった。
「それは出来ませんね。彼の意思を継ぐ者がいれば、同じ事が起こる可能性がありますからね。黒い石の事もありますし」
答えたのはレオナールだ。
「あんた、魔術師じゃなくなってもいいのかよ?」
「えぇ、構いません」
「は? じゃ何故魔術師だと名乗った!」
「それは私も軽率だったと後悔しております。魔術師の保護という観点から言えば、魔術師をこの世からいなくなる方法の方がいいでしょう。その方法があるのですから。魔術がなくとも生活していけるのが実証もされています」
「何言ってやがる。魔術を封じられて、殺されかけた奴がよ!」
「な……」
二人はまた睨みあった。
「そうねぇ。私もレオナール王子のいう事は一理あると思うわ。でも私は、あなたと違って偽善者ではないのよ」
「偽善者って……」
「本音を言えば、放っておいてくれるのであればどちらでもいいのよ……。私は国を捨てたのよ。大それた事を言える立場じゃないわ。託された事も放棄した。やろうと思い立ったのは自分と家族の為。他人の為じゃないのよ」
ミュアンはレオナールを見つめ言った。
「でも本当に首謀者がサンチナドなのか聞きたいわね。ステラミリス王女がどうやって殺されたのかも。それを聞いて決めるわ」
今度はトンマーゾを見てミュアンは言う。
「知りたいのなら教えてやるが、サンチナドが死んだんだ。魔術師の組織がサラスチニ国の手の者だったと知れるだろう。そうすれば否が応でもミュアン、お前達の事も知れる事になる」
「そうなるかもしれないわね……」
そう言いつつも目線はトンマーゾから外さない。
トンマーゾは軽くため息をついた。
「わかったよ。まずは話す」
「お願いするわ」
ミュアンはニッコリ微笑んだ――。
慌ててレオナールは、サンチナドに駆け寄るが、彼は息絶えていた!
「あなたの気持ちもわかりますが、これでは……」
「俺がこいつの下いたのはこの為だ! 生き証人? こいつがしゃべるかよ! 色々でっち上げるに決まっているだろう!」
二人は睨みあう。
「ティモシー!」
「やばいよこれ。血が止まらない!」
ミュアンが叫び、エイブは青ざめて呟く。
ナイフに塗られていたのは、毒ではなく血が止まらなくなる薬だった!
ティモシーの顔は血の気がひき青白い。
(今度こそ死にそう……)
「これを使いな」
トンマーゾは、袋を渡した。
「止血剤だ。こいつならこういう方法をとるかもしれないと用意しておいた物だ」
「ありがとう」
ミュアンは素直に使おうとする。
「それ使うの? 大丈夫? 逆にあの男に使おうとしていた物かもしれなくない?」
「今それを私に渡したとして、彼は私に何をしたいと? 毒など渡さなくとも放っておけば、ティモシーは死ぬのですよ」
エイブが言うとミュアンはそう返す。トンマーゾを信じているというよりは、今の状況で毒を渡す意味がないという事である。
ためらいなくミュアンは止血剤を使った。少しすると血は止まった。
「止まったみたいね」
ミュアンは安堵して言った。それを聞いた周りも安堵する。
(俺、助かったのか……)
ボーっとする頭でティモシーは思った。
「あ、ありがとう。トンマーゾさん」
「ふん。優秀な魔術師を失うのは勿体ないからな」
「もしかしてあなた、この男に変わって、魔術師の組織を……」
「俺はそんな器じゃねぇよ」
レオナールの言葉にそのつもりないとトンマーゾは返す。
「ただ俺は、魔術師はなくしたくねぇ。どっちにしても今日は魔法陣で結界を解除する事は出来ないだろうけど、やめてくれないかそれ。こいつは死んだ。もうお前らを狙う事もない。それでいいだろう?」
トンマーゾは、ティモシーの横に座っているミュアンを見下ろし真剣な顔で言った。ここに来たもう一つの目的だった。
「それは出来ませんね。彼の意思を継ぐ者がいれば、同じ事が起こる可能性がありますからね。黒い石の事もありますし」
答えたのはレオナールだ。
「あんた、魔術師じゃなくなってもいいのかよ?」
「えぇ、構いません」
「は? じゃ何故魔術師だと名乗った!」
「それは私も軽率だったと後悔しております。魔術師の保護という観点から言えば、魔術師をこの世からいなくなる方法の方がいいでしょう。その方法があるのですから。魔術がなくとも生活していけるのが実証もされています」
「何言ってやがる。魔術を封じられて、殺されかけた奴がよ!」
「な……」
二人はまた睨みあった。
「そうねぇ。私もレオナール王子のいう事は一理あると思うわ。でも私は、あなたと違って偽善者ではないのよ」
「偽善者って……」
「本音を言えば、放っておいてくれるのであればどちらでもいいのよ……。私は国を捨てたのよ。大それた事を言える立場じゃないわ。託された事も放棄した。やろうと思い立ったのは自分と家族の為。他人の為じゃないのよ」
ミュアンはレオナールを見つめ言った。
「でも本当に首謀者がサンチナドなのか聞きたいわね。ステラミリス王女がどうやって殺されたのかも。それを聞いて決めるわ」
今度はトンマーゾを見てミュアンは言う。
「知りたいのなら教えてやるが、サンチナドが死んだんだ。魔術師の組織がサラスチニ国の手の者だったと知れるだろう。そうすれば否が応でもミュアン、お前達の事も知れる事になる」
「そうなるかもしれないわね……」
そう言いつつも目線はトンマーゾから外さない。
トンマーゾは軽くため息をついた。
「わかったよ。まずは話す」
「お願いするわ」
ミュアンはニッコリ微笑んだ――。
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