【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
179 / 192
第十五章 謀略に始まり謀略で終わる

第百七十九話

しおりを挟む
 「国王を殺すおつもりですか!?」

 サンチナドの言葉にミュアンは驚いて返す。

 「まさか。既に先日お亡くなりになった。君が国を出なければもっと早くこうなっていたはずなのだがな……」
 「一度お断りしておりますよね?」

 サンチナドの申し出にミュアンはそう返し断る。

 「まさかと思うけど、母さんを追いかけ回していたのってそういう理由じゃないよね!?」
 「君もミュアンに似て美しいな」
 「はぁ? 美しいってなんだよ!」

 ティモシーにとって嬉しい言葉でない。サンチナドを睨む。

 「私がエクランド国を貶める手伝いをするとお思いですか?」
 「今更だな。あの国の薬師の技術を散々盗んでおいて」
 「そうね。でもエクランド国に住んでわかったわ。薬師の事を考えている国だって。魔術師も受け入れている国でもある。あなたの国よりずっと価値があるわ」
 「残念だな。せっかく好条件を出しだのに。レオナール王子はどうする?」

 先ほどから睨み付けているレオナールに声を掛けた。

 「なぜミュアンさんを逃がしたかわかりましたよ。あなたが謀略を企んでいる首謀者だと気づいたからでしょう。ミュアンさんを国に残せばあなたの餌食になる。許せません! 最初からコーデリアさんを使ってラミアズア国と戦争をする気だったのでしょう!」

 レオナールは、初めて目の前にいる者――サンチナドを切り捨てたいと思った。コーデリアがスパイをしている事をワザとばれる様に仕向け戦争に追い込んだ。最初から戦争をする気だったのだから準備万端だった。そう推測して言った言葉だ!

 「さすがだな。おたくも頭が切れる。仲間になるなら生かしておくと思ったが……」
 「コーデリアさん! こっちに!」

 サンチナドが顎で合図すると同時に、レオナールはコーデリアに向かって走り出し叫ぶ。コーデリアも彼に向かって走り出した。
 サンチナドの後ろいた男達三人は、彼の合図により前に出る。そして、走りながらコーデリアとミュアン達に向けて何かを投げつけた!
 それは水風船のような者で、体に当たると壊れ中の水がぶちまかれた!
 コーデリアに向けて投げられたそれは、彼女を庇ったレオナールに直撃する。そしてミュアンを狙ったと思われるそれは、前に出たティモシーを直撃する。

 「コーデリアさん、水は? かかりましたか!?」
 「え? す、少し……」
 「魔力は練れますか!?」
 「え……練れません……」
 「少しでも効果はあるのですか! コーデリアさん下がって!」

 投げつけた男の一人が二人に襲い掛かる!

 「ちょ……何、自分から当たりに行ってるのさ!」

 エイブは驚いてティモシーに言う。

 「母さん、水は!?」
 「ありがとう。かからなかったわ!」
 「盾なら俺の方がいいだろう!」

 自分は魔力が少ないからと言う意味で言うも、二人は首を横に振った。

 「あなた体術とか出来るのですか?」
 「出来る訳ないだろう……」
 「そういう事だよ。エイブさん。俺にはこっちの方が戦いやすい!」

 襲い掛かって来る男たちを見てティモシーは言った。魔術が封じられても戦うすべがあると言ったのだった。
 ミュアンは近づいて来る二人の男に魔術を放った! だがそれは、結界で阻まれた!

 「え……」
 「これもしかしてアイテムで防いでいるの?」

 エイブが呟く。
 サンチナドがにやっとする。彼とクレは参戦せず、成り行きを見守っている。

 「って、水掛ける意味あったこれ?!」

 エイブがまた叫ぶ。

 「一応私に掛ければ意味はあったでしょうね」

 そう言ってミュアンは、サンチナドを睨み付けた。
 ティモシーは二対一だが相手が魔術師でなければ恐れはない。それは勿論、魔術で攻撃されないからだ。
 剣を振り下ろして来る二人を交わし、クレにしたように交わし際に一人の腹に蹴りを入れ吹き飛ばす。魔術は効かなくてもこの攻撃は効くようだった! 男はうずくまる。

 「貴様!」

 ティモシーに向かって振り下ろそうとする剣を持った手に蹴りを入れ剣を吹き飛ばす。剣に気がそれた所に、この男にも腹に蹴りを入れる!

 「ぐっ」

 ティモシーはヨロヨロと立ち上がって来る二人に追撃を入れる。後ろから回し蹴りを食わらせ二人を気絶させた!

 「マジ……ティモシーさん強すぎ」

 エイブは知らなかったとは言え、凄い相手を襲ったんだと今更思うのだった。

 レオナールは一対一だが押されていた。
 相手の一撃が重いのだ! 相手がマジックアイテムを使っているのに違いない。コーデリアがいるのであまり大きく立ち回りもできない。

 (レオナール王子が押されている?!)

 ティモシーは、レオナールを見て走り出す。だがそこに、サンチナドから魔術が飛んでくる。慌ててミュアンが結界を張った。

 「こっちが手出ししていないんだ。大人しくそこで見学していてもらおうか?」
 「うわぁ!」

 と、その時声が聞こえた! 見るとレオナールに男が投げ飛ばされていた!

 「私も体術は出来るんですよ? 流石に手がしびれてきました」

 倒れた男の手首を踏みつけ、男の剣を蹴り飛ばしレオナールは言った。彼は、男が振り下ろして来た剣を自分の剣から手を離し、相手の手首を掴んで投げ飛ばしたのである。突然の事で男は対処できずそのまま投げ飛ばされたのだった!

 「見事だ!」

 ハッとしてレオナールはそう言ったサンチナドを見た。彼から魔術が放たれたのを感じたからである。ミュアンがハッとするも間に合わない!

 「レオナール王子!」

 ティモシーの叫び声が轟いた――!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...