【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第十五章 謀略に始まり謀略で終わる

第百七十八話

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 コーデリアの話しに四人は驚く。

 「で、では、あの水を掛けた者達は、あなたがよこした者ではないのですね?」
 「水? いえ、私は……」

 コーデリアの態度を見てレオナールは安堵するも、何故最後まで信じなかったのだと自分を責める。

 「ちゃんとハミッシュから話を聞いて入れば……。目を覚ますまで傍に居れば……」
 「え? ちょっと待って! マジで信じるわけ?」

 後悔を口にするレオナールにエイブは言う。

 「よく考えれば、あの水を彼女が手に入れられる訳がなかったのです!」
 「そうかもしれないけど、組織と利害が一致して仲間だって……っつ」
 「何を言いますか! 彼女が仲間の訳がないでしょう!」

 突然レオナールがエイブの胸倉を掴んだ!

 「レオナール王子! 落ち着いて!」

 驚いてティモシーが止める。レオナールは自分の感情を持て余していた。エイブが言った事もないわけではない。事実、魔術師の組織と接触をしている。だがもう、彼女を疑いたくなかったのである。

 「それを信じるとは……」

 ため息交じりにミュアンが言った。レオナールは、エイブから手を離す。

 「嘘だというのですか……」

 ミュアンに弱弱しくレオナールが言うと、彼女は力強くなずいた。

 「もう一体誰を信じたらいいのか……」
 「自分自身だろう?」

 レオナールの呟きに、エイブが呟きで返した。

 「俺がミュアンさんに従っているのは自分を信じているから。自分の直感をね」

 レオナールはエイブを見つめた後、コーデリアを見つめる。

 「そうですね。ミュアンさんすみませんが、私も自分を信じ彼女を信じます」
 「別に謝る必要はないわよ。あなたは正しいから」
 「え?」

 驚いて全員、ミュアンを見た。先ほどコーデリアが嘘を言っていると言っていたからだ。

 「コーデリアさん、あなたはそんな嘘を信じてここに来たのですか? 組織の者があなたが私を説得できると思っていると? アイテムを私がここに持って来ているのならここでそのまま始末したほうが手っ取り早いでしょう?」

 嘘を言っているのは、コーデリアではなく組織の人間だとミュアンは言っていたのだった!

 「まさか! ここで私達全員を亡き者にする為に、コーデリアさんも呼んだと!」

 ミュアンの言葉にレオナールは叫ぶ。

 「えぇ。私達がここに来る事がわかっているのならそうするでしょうね。組織の人間がここに潜んでいるのでしょう」

 そうミュアンが語った時、スッと人が出て来た。

 「相変わらす、頭が回るお人だ」
 「サンチナド!」

 姿を現した男の名をミュアンは言った。彼の後ろには見覚えのある人物がいた。

 「クレメンディーナさん……」
 「あなた、その者達と……嵌めましたね!」

 レオナールがキッと睨み、剣に手を掛け叫んだ。彼には見覚えのある三人が彼女の横に並んでいた。レオナールを襲った者達だ!
 コーデリアの少し後ろから五人は現れた! コーデリアは驚いて振り向いている。

 「あんた達が逃げたって連絡を入れに言ったらこいつらが居てさ、しこたま叱られたよ。だから仕方なくおたくらを一緒にお出迎え」

 クレは、レオナールを襲った作戦は知らなかったという。

 「気を付けてください。あの水を持っているかもしれません」

 レオナールはそう言って剣を抜き、ミュアン達の前に出た。

 「そうだミュアン言っておくぞ。こいつらにはアイテムを渡してある。あなたの魔術は全てレジストする。……でだレオナール王子、取引をしようじゃないか。君の愛しいコーデリアの命を助ける代わりに俺と手を組もうじゃないか」
 「私と? 私など役に立たないでしょう!」

 レオナールは、サンチナドに叫んで返す。レオナールは彼を睨みつつコーデリアを救出する機会を伺っていた。捕らわれている訳ではないが、捕らえようとすれば捕らえられる位置にいる。こちらが動けばそうする可能性がある。

 「ティモシー、あなたはレオナール王子と共に……」

 ミュアン達もレオナールの考えている事はわかっていた。彼が一番に考えるのはコーデリアだからだ。

 「レオナール王子には表舞台に立って頂く。そして、噂通りエクランド国と戦争さ」
 「何を言って!」
 「弟奪還の為さ。あの国を潰せば、薬師の崩壊が始まる! 魔術師の世界の幕開けにはふさわしい。トンマーゾも余計な事をと思ったが、まあ結果オーライだな」

 にやっとしてサンチナドは言った。

 「あぁ、俺だけ場違いなんじゃない?」

 エイブはボソッと呟く。

 「条件を飲まなければここで全員皆殺しだ!」
 「あら、彼が条件を飲んだとして私達はどうなるのかしら?」

 ミュアンがそう言うと、サンチナドはニッコリと微笑んで彼女にスッと手を出してた。

 「俺と一緒に来い。私はこれから王になる。お前は妃だ」
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