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第十五章 謀略に始まり謀略で終わる
第百七十二話
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「なるほど。ありがとうございます。では、話は戻しますが、エイブ。人身売買の事を知っていたのですね?」
「え?!」
なるほどと一緒になって頷いていたエイブは、話を戻さなくてもいいのにと呟く。
「答えて下さい!」
「……付き合っていた子が俺が魔術師だと知って、騒ぎ立てたからトンマーゾさんに言ったら、彼が彼女に刻印を施した。そしてどこかに連れて行ったんだ。後で聞いたら多分、売られたんだろうっていうから……」
「どういう事です?」
レオナールは眉を顰める。
「だから、俺はティモシーに刻印を施そうとしたのは売ろうとしたのではなくて……自分の物にしようとしたというか……」
「なんですって!」
声を上げたのは勿論ミュアンだ。
「あの時は、色々あってやけになってたんだ!」
「色々とは……?」
「……別になんでもいいだろう?」
レオナールの問いにそう答え、俯いて目をそらす。
「いいわけがありません!」
「あぁもう! なんで蒸し返されなきゃいけないんだ!」
二人に問い詰められ、エイブは叫ぶ。
「もう一人も同じ目に合せたからと思ったからだよ! ブラッドリーさんから俺の噂聞いてるんだろう?」
「そのもう一人の行方がわからないのですが、ご存知ないですか?」
その時にエイブはビクッと体を震わす。
「知っているんですね?」
「騙されたんだよ……クレメンディーナさんに!」
右手を額に当てエイブは悲痛に叫んだ!
「クレメンディーナさん? 騙されたとはどういう事です?」
「……もう一人の相手がその人! 二人も目にしてる人物だよ!」
レオナールはハッとする。
「クレという女性ですか!」
エイブは頷く。
これには、レオナールも困惑した表情をする。彼が言っている事が本当なら姿を消したと思われた女性は売られたのではなく、魔術師の組織の人間だった。または、組織に入ったという事になる。
「で、騙されたとは?」
「それ、言うのかよ……」
「ここまで聞いたのですから聞きたいのですが?」
仕方なくエイブはティモシーに話して聞かせた話をレオナール達に話した。毒を盛られ逆に殺しそうになってしまったと思わされいた事。そしてあの日、ティモシーがクレの攻撃を吸収している所に出くわして、真相がわかった事を。
「あの人、言い訳も何もなしで、つらっとして俺の前に現れて……」
はぁっとエイブは、大きなため息をついた。
「そうですか。……で、それはどこからどうやって見ていたのですか? あなた動けない身体でしたよね?」
「……精神体。魔法陣の効果で見える様にしてもらっていたから……」
「なんですって! そんな事もできるのですか!」
「そうね。エイブぐらい出来るのなら魔法陣を使ってそういう事もできそうね」
ミュアンも頷いた。
魔術は関係ないと思っていたので、魔法陣でそういう事が出来るとはレオナールは思ってもいなかった。
「そうそう二人共。事が済んで魔術師に戻りたいと思ったならヴィルターヌ帝国で先ほどやったように魔力を全て抜けばいいわ。でも一生そこにいないといけない事になりますけどね。さて、明日の朝こっそりと抜け出しますから、宜しくお願いしますね。二人共」
「え?! 私もですか?」
レオナールはティモシーとエイブの三人だと思っていた。勿論、エイブもである。当初ではそうだったからである。
「レオナール王子は長い目で見れば関係者なのですから宜しいでしょう?」
「それからすると、俺は関係ないような……」
ボソッと漏らすとミュアンに睨まれる。
「わかりました。異論はありません。私の力で足りるのであれば協力致します」
レオナールは、別に魔術師でなくなってもいいと思っていた。魔術師だと名乗ってしまったが、世界全体がそうでなくなるなら問題はないと。
後は成功を祈るばかりだった――。
「え?!」
なるほどと一緒になって頷いていたエイブは、話を戻さなくてもいいのにと呟く。
「答えて下さい!」
「……付き合っていた子が俺が魔術師だと知って、騒ぎ立てたからトンマーゾさんに言ったら、彼が彼女に刻印を施した。そしてどこかに連れて行ったんだ。後で聞いたら多分、売られたんだろうっていうから……」
「どういう事です?」
レオナールは眉を顰める。
「だから、俺はティモシーに刻印を施そうとしたのは売ろうとしたのではなくて……自分の物にしようとしたというか……」
「なんですって!」
声を上げたのは勿論ミュアンだ。
「あの時は、色々あってやけになってたんだ!」
「色々とは……?」
「……別になんでもいいだろう?」
レオナールの問いにそう答え、俯いて目をそらす。
「いいわけがありません!」
「あぁもう! なんで蒸し返されなきゃいけないんだ!」
二人に問い詰められ、エイブは叫ぶ。
「もう一人も同じ目に合せたからと思ったからだよ! ブラッドリーさんから俺の噂聞いてるんだろう?」
「そのもう一人の行方がわからないのですが、ご存知ないですか?」
その時にエイブはビクッと体を震わす。
「知っているんですね?」
「騙されたんだよ……クレメンディーナさんに!」
右手を額に当てエイブは悲痛に叫んだ!
「クレメンディーナさん? 騙されたとはどういう事です?」
「……もう一人の相手がその人! 二人も目にしてる人物だよ!」
レオナールはハッとする。
「クレという女性ですか!」
エイブは頷く。
これには、レオナールも困惑した表情をする。彼が言っている事が本当なら姿を消したと思われた女性は売られたのではなく、魔術師の組織の人間だった。または、組織に入ったという事になる。
「で、騙されたとは?」
「それ、言うのかよ……」
「ここまで聞いたのですから聞きたいのですが?」
仕方なくエイブはティモシーに話して聞かせた話をレオナール達に話した。毒を盛られ逆に殺しそうになってしまったと思わされいた事。そしてあの日、ティモシーがクレの攻撃を吸収している所に出くわして、真相がわかった事を。
「あの人、言い訳も何もなしで、つらっとして俺の前に現れて……」
はぁっとエイブは、大きなため息をついた。
「そうですか。……で、それはどこからどうやって見ていたのですか? あなた動けない身体でしたよね?」
「……精神体。魔法陣の効果で見える様にしてもらっていたから……」
「なんですって! そんな事もできるのですか!」
「そうね。エイブぐらい出来るのなら魔法陣を使ってそういう事もできそうね」
ミュアンも頷いた。
魔術は関係ないと思っていたので、魔法陣でそういう事が出来るとはレオナールは思ってもいなかった。
「そうそう二人共。事が済んで魔術師に戻りたいと思ったならヴィルターヌ帝国で先ほどやったように魔力を全て抜けばいいわ。でも一生そこにいないといけない事になりますけどね。さて、明日の朝こっそりと抜け出しますから、宜しくお願いしますね。二人共」
「え?! 私もですか?」
レオナールはティモシーとエイブの三人だと思っていた。勿論、エイブもである。当初ではそうだったからである。
「レオナール王子は長い目で見れば関係者なのですから宜しいでしょう?」
「それからすると、俺は関係ないような……」
ボソッと漏らすとミュアンに睨まれる。
「わかりました。異論はありません。私の力で足りるのであれば協力致します」
レオナールは、別に魔術師でなくなってもいいと思っていた。魔術師だと名乗ってしまったが、世界全体がそうでなくなるなら問題はないと。
後は成功を祈るばかりだった――。
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