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第十三章 嘘に紛れた思惑

第百五十九話

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 語りの最後は声が震えていた。
 レオナールがまた倒れるのではと思う程、顔色も悪くなっていた。

 「情けないですが、彼女が裏で糸を引いたと確信したはずなのに、どこかで否定している自分がいるのです。彼女が私を殺そうとするはずがないと……。自分の父親になら仕方がないと思ったのに……」

 そう聞かされてもティモシーには、何も声を掛ける事が出来なかった。そしてどうして、ここまで詳しく話してくれたのかもわからなかった。

 「あの、えーと。何故そんなに詳しくというか……話してくれたんですか? 俺に話しても何も出来ないのに。話すなら陛下とか……」

 レオナールは弱弱しく首を横に振る。

 「別にどうこうしようと考えて話した訳ではありません。ただ、私が死んだとして事実を知っている者がいてほしかったのです。私の我が儘です」
 「え? もしかして死ぬ気なんですか?」

 レオナールは泣きそうな顔でほほ笑んだ。

 「いえ。私では彼女には勝てないのです。魔術は彼女には到底及ばす、切り札になるモノもない。彼女が魔術師の組織と繋がっていない事を願うばかりです」

 ティモシーは驚いた。レオナールは、既に諦めている様子だからだ。今までは、色々と考えを巡らせ、自分では到底思いつかない事を読み取っていた。そして最善だと思う策を立てていた。
 それだけ相手は凄い人物なのかも知れない。いや、彼の心を折ったのだ。きっと何も思いつかず、そして考えたくもない。そういう状況なのだろう。
 コーデリアの事は、もしかしたらミュアンに聞けば少しわかるかも知れない。やはりミュアンを探さなければとティモシーは思う。
 レオナールは立ち上がった。

 「私は与えられた部屋に戻ります。一つだけお願いがあります」
 「何ですか?」
 「ブラッドリーの事をお願いします。もしかしたら私達はもう魔術師には戻れないかもしれません……」

 驚いていると、軽く頭を下げレオナールは出て行った。
 最後に言われた意味がティモシーにはわからなかった。

 「一体、どういう意味?」

 ティモシーはポツリと呟く。

 『なんか様子が変だと思ったらそういう事。ミュアンさんの国の人ねぇ……』

 そしてもう一人呟く人物がいた。精神体になってレオナールの話をこっそり聞いていたエイブだ。
 前にトンマーゾにお願いした、音も聞こえる様にという願いを聞き入れられ、二人の会話を聞いていたのである。
 彼もスッと部屋から出て行った。

 (母さんに会う方法を考えないと……)

 ミュアンに連絡をとる方法が全く思いつかない。それどころか森から抜けないといけない事を思い出す。

 「う~ん。エイブさんに頼んだら外に連れ出してもらえるかな?」

 都合のいい考えを巡らせるティモシーだった。
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