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第十三章 嘘に紛れた思惑

第百五十七話

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 トントントン。
 ドアがノックされる音でティモシーは目を覚ます。いつの間にかうたた寝をしてしまったようだった。
 はいと返事をしてドアを開けるとレオナールが立っていた。

 「あ、レオナール王子……」
 「お話し宜しいですか?」

 ティモシーは頷き招き入れる。そして椅子に腰を下ろした。

 「ベットに横になっていても宜しいですよ」
 「え? いえ、大丈夫です。具合が悪いわけじゃないので……」

 どちらかと言うと、レオナールの方が顔色が悪い。

 「そうですか……」

 レオナールも椅子に腰を下ろした。

 「あの……。ブラッドリーさんは?」
 「はい。傷は浅く命に別状はありません。どうやらトンマーゾが言うように、痺れ薬のせいで眠っているようです」
 「さっきはごめんなさい」

 俯いたままティモシーは謝った。

 「何故謝るのです?」
 「俺もレオナール王子やエイブさんが倒れたら医療行為をすると思う。出来ると思うから……」
 「あなた既に習っていたのですか?」

 これにはレオナールは驚いた。ティモシーは薬師になったばかりだ。本当ならこれからそれを学ぶのだ。

 「ごめんなさい。薬師でもないのに母さんに教わっていました。それなのにさっきあんな事言って……」
 「いえ、それはもう宜しいです」

 レオナールは小さくため息をついた。魔術だけではなく薬師としても勝てそうもないと自信をなくしそうだった。

 「私もあなたに謝りにきたのですよ」
 「え?」

 ティモシーは驚いて顔を上げた。また悲しげな顔だ。

 「あなたが命を狙われているのは、ミュアンさんのせいではなく、私のせいなのです」

 ティモシーはハッとしてドアに目を向ける。

 「ちょっと待って!」

 そう言うとドアに向かいそっと開ける。そして通路の様子を伺うと戻って来る。

 「トンマーゾさんが聞き耳立てているかもって思ったけど大丈夫だった」

 ティモシーの行動に少しレオナールに笑顔が戻る。感情のまま素直に行動する。羨ましく思う事でもあった。
 ティモシーが椅子に座り直すと、レオナールは続きを話し出す。

 「どうやら私の命を狙う口実を作る為に、あなたたちに危害を加えようとしたようなのです……」
 「え?」

 意外なレオナールの言葉にティモシーはジッと彼を見た。

 「逆だったのです。私があなた達を巻き込んだのです……」

 そう言った後、レオナールは俯いた。
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