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第十三章 嘘に紛れた思惑
第百五十五話
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「傷は深くなさそうだけど気を失っているみたね」
「ティモシーを襲った奴らの仲間かもな」
ブラッドリーに駆け寄った二人はそう話す。
「どういう事です?」
「で、こいつは俺が背負うのか?」
レオナールの問いには答える気はないようで、スルーされる。
「王子がそんな事すると思う?」
「しねーな。まあ、どちらにしてもそんな体力はなさそうだがな」
クレとトンマーゾは呑気にそう会話を交わす。レオナールは何も言い返せなかった。本当なら自分で背負いたい。彼が背負えば人質にしかならない。しかし自分には今、そんな体力はないのである。
「よいしょっと。いくぜ。魔術師の王子さんよ」
ブラッドリーを肩に担ぎトンマーゾは歩き始める。
「……ティモシーはまた命を狙われたのですか?」
「噂を聞いて王宮を飛び出して来たみだいだな。おたくもそうだろう? こんなところにいるんだからな」
レオナールの前を歩くトンマーゾは振り返りもせず答えた。
「助けて頂いたようで……ありがとうございます」
「何故、あんたが礼を言うんだか。礼を言うなら今回の件じゃないか、普通は」
「そうですね……ありがとうございます……」
「礼を言う王子なんて初めて見たわ。私……」
レオナールの横に並んで歩いているクレは、信じられないような目で彼を見て言った。
「自国に命を狙われている王子でもあるがな」
「え? あいつらハルフォードの連中?」
「連中はどうかしらないが、依頼したのはそうだろう? 今回も痺れ薬が塗られていたようだしな」
「ふうん。権力争いでも……」
「その話はもういいでしょう!」
レオナールは、怒鳴って二人の会話を中断させる。
「あら、こわ~い」
「この中で一番怖いのはお前だろう」
「そう? まあ、二人は魔術を封じられちゃってるようだからね。じゃなければ、魔術を使わないわけないわよね?」
殺さずとも蹴散らすぐらいはするだろうと言う事である。
レオナールは、魔術を封じられたところか、練れなくされていた。一時的なものかと思っていたが未だに回復の兆しはない。
その事からも間違いなく賊を寄こしたのは、ハルフォード国からだ。確実に殺そうとしている。
レオナールは、トンマーゾに担がれたブラッドリーを見つめた。彼も巻き込んでしまったと思っていた。
権力争い? 元々ハミッシュに譲ってもいいと思っているのにと思うも、それは相手に伝わっていなかったのかも知れないとレオナールは思った。
どうやってそれを伝えるかレオナールは歩きながら考えていた。
「いやぁ。疲れたな。やっと森だ……」
一時間ほど歩いた先は森。レオナールはこの森を抜ける気なのかと驚く。見れば道などない。
「腕でも組みましょうか?」
「……いえ、大丈夫です」
「あら、迷子になっちゃうわよ?」
つかまらずとも歩けると返すが、ガシッと右手首をクレに捕まれる。
「何を……」
「入ればわかるわよ」
「休まずに入るのかよ……」
トンマーゾは少し休みたいとクレに目配せをするものの顎をくいっとやって進めと促す。
「少しはいたわれよ!」
「自分から行くって言ったんでしょう? 着いてきてやったんだからお礼を言ってほしいぐらいよ!」
レオナールは二人の会話を聞きふと思う。自分に聞きたい事とは何だろうかと。命を狙われているのを知っている様子だ。だとするならば自分を使ってハルフォード国に何かをする事が出来ないのはわかっている。
殺す邪魔建てもしている。国との交渉も不可能。彼らの狙いがレオナールにはわからなかった。
森に入ってすぐに辺りは白いもやに包まれ何も見えなくなる。クレが言っていた意味がわかった。――アジトは森の中にある。
そしてもやが晴れると建物が目の前に現れた。
「ティモシーを襲った奴らの仲間かもな」
ブラッドリーに駆け寄った二人はそう話す。
「どういう事です?」
「で、こいつは俺が背負うのか?」
レオナールの問いには答える気はないようで、スルーされる。
「王子がそんな事すると思う?」
「しねーな。まあ、どちらにしてもそんな体力はなさそうだがな」
クレとトンマーゾは呑気にそう会話を交わす。レオナールは何も言い返せなかった。本当なら自分で背負いたい。彼が背負えば人質にしかならない。しかし自分には今、そんな体力はないのである。
「よいしょっと。いくぜ。魔術師の王子さんよ」
ブラッドリーを肩に担ぎトンマーゾは歩き始める。
「……ティモシーはまた命を狙われたのですか?」
「噂を聞いて王宮を飛び出して来たみだいだな。おたくもそうだろう? こんなところにいるんだからな」
レオナールの前を歩くトンマーゾは振り返りもせず答えた。
「助けて頂いたようで……ありがとうございます」
「何故、あんたが礼を言うんだか。礼を言うなら今回の件じゃないか、普通は」
「そうですね……ありがとうございます……」
「礼を言う王子なんて初めて見たわ。私……」
レオナールの横に並んで歩いているクレは、信じられないような目で彼を見て言った。
「自国に命を狙われている王子でもあるがな」
「え? あいつらハルフォードの連中?」
「連中はどうかしらないが、依頼したのはそうだろう? 今回も痺れ薬が塗られていたようだしな」
「ふうん。権力争いでも……」
「その話はもういいでしょう!」
レオナールは、怒鳴って二人の会話を中断させる。
「あら、こわ~い」
「この中で一番怖いのはお前だろう」
「そう? まあ、二人は魔術を封じられちゃってるようだからね。じゃなければ、魔術を使わないわけないわよね?」
殺さずとも蹴散らすぐらいはするだろうと言う事である。
レオナールは、魔術を封じられたところか、練れなくされていた。一時的なものかと思っていたが未だに回復の兆しはない。
その事からも間違いなく賊を寄こしたのは、ハルフォード国からだ。確実に殺そうとしている。
レオナールは、トンマーゾに担がれたブラッドリーを見つめた。彼も巻き込んでしまったと思っていた。
権力争い? 元々ハミッシュに譲ってもいいと思っているのにと思うも、それは相手に伝わっていなかったのかも知れないとレオナールは思った。
どうやってそれを伝えるかレオナールは歩きながら考えていた。
「いやぁ。疲れたな。やっと森だ……」
一時間ほど歩いた先は森。レオナールはこの森を抜ける気なのかと驚く。見れば道などない。
「腕でも組みましょうか?」
「……いえ、大丈夫です」
「あら、迷子になっちゃうわよ?」
つかまらずとも歩けると返すが、ガシッと右手首をクレに捕まれる。
「何を……」
「入ればわかるわよ」
「休まずに入るのかよ……」
トンマーゾは少し休みたいとクレに目配せをするものの顎をくいっとやって進めと促す。
「少しはいたわれよ!」
「自分から行くって言ったんでしょう? 着いてきてやったんだからお礼を言ってほしいぐらいよ!」
レオナールは二人の会話を聞きふと思う。自分に聞きたい事とは何だろうかと。命を狙われているのを知っている様子だ。だとするならば自分を使ってハルフォード国に何かをする事が出来ないのはわかっている。
殺す邪魔建てもしている。国との交渉も不可能。彼らの狙いがレオナールにはわからなかった。
森に入ってすぐに辺りは白いもやに包まれ何も見えなくなる。クレが言っていた意味がわかった。――アジトは森の中にある。
そしてもやが晴れると建物が目の前に現れた。
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