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第十三章 嘘に紛れた思惑
第百五十四話
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はぁはぁと息を切らし、レオナールとブラッドリーは走っていた――。
二人は馬を一頭借り、ヴィルターヌ帝国を人目を盗んで出て来た。服装も万が一の為にと持って来た薬師の制服に着替えている。
そしてエクランド国に入った。レオナールは、ミュアン達が住んでいた村に向かおうと思っていたのだ。本人がいるとは思わないが、何か残して行ってくれているかもしれないと、淡い期待を持って向かう。
だが思わぬ歓迎を受ける。相手は三人だが賊に襲われた! エクランド国では滅多にない。相手は魔術師の組織でもない。
馬を矢で撃たれ、その拍子に二人は落馬。打ち身程度ですんだが、相手に無色無臭の液体を掛けられた。多分そのせいだろう。魔術が使えない!
相手も魔術は使ってこない。魔術師ではないが、剣を持ち切りかかって来たのである。こうなると対応できるのはレオナールだけだ。ブラッドリーは剣術の心得はない。魔術を封じられればタダの人。
何とか一人の動きを止めるも不利のままだ。掛けられた液体の効力が切れるまで時間稼ぎをする事にし、二人は賊から逃げていた。
――呪文があったとして、それが正しく伝えられていると思うか?
走りながらレオナールは、モゼレスの言葉を思い出す。
封印を解く呪文について聞いた時の答えだ。レオナールもそれはずっと思っていた。文字ではなく口頭で残しても正しく伝え残すのは不可能に近い。
少なくともハルフォード国にあった文献には、文字として残されていない。
レオナールはまた、呪文自体に疑問を持っていた。封印したモノを開放する呪文。本来なら必要ないものだ。その存在を隠したい程のモノなのに、それを開放する呪文に意義があるとは思えない。
そうなればもう、ミュアンが言った内容がデタラメという事になる。彼女が何故そんな嘘をついたのか。そして、嘘をつくとしても呪文と言う考えはどこからきたのか。
――あなたの国が彼女を狙う理由があったとしても私の国にはない。
彼女――ミュアンの事だ。モゼレスはそうも言った。
自分が狙われる意味が根本から覆る。
ミュアンを殺さなければならないからではなく、レオナールを殺さなくてはならないから彼女を利用した! レオナールは、二人を巻き込んだのは自分の方だと行きあたる。
「レオナール様。大丈夫ですか?」
気づけばだいぶスピードが落ちていた。
レオナールは、ブラッドリーよりも若く鍛えてもいるので、彼よりは体力がある。だが今は体調が悪い。魔術も使える様になる兆しもない。
これ以上逃げ回るのは無理と判断し、レオナールは剣を再び抜く。
「あなたは下がっていてください!」
「……はい」
何か言いたげだが、従うしかなくブラッドリーは後ろに下がる。
賊の二人は一斉にレオナールに襲い掛かるが、彼はかわす。それを見通してか一人がそのままブラッドリーに向かった!
「待ちなさい! ブラッドリーにげ……」
ハッとして叫ぶレオナールにもう一人が襲い掛かる!
「うわー!」
慌ててかわすレオナールにブラッドリーの悲痛な声が届く! 振り返れば背中を斬られ倒れ込んだところだった!
「ブラッドリー!」
今すぐ駆け寄りたいがそれを相手が許さない。ブラッドリーを襲ったもう一人もレオナールの方に加勢する。
ブラッドリーは倒れたまま動かない。
体力も限界に近く、ブラッドリーの事で焦りが出ているレオナールは、追い詰められていく。
せめて魔術が使える様になればと思った時だった。目の前の二人が後ろに吹き飛んだ!
「ぐわー!」
後ろから魔術が放たれたと驚いて振り向いたレオナールは青ざめる。そこには見覚えのある二人がいた。トンマーゾとクレである。
「来てみるもんだな。おたくのこんな姿が見れるなんてな!」
「………」
トンマーゾに言い返す言葉が咄嗟に出てこない。
「貴様!」
吹き飛ばされた男の一人が立ち上がり、トンマーゾを睨む。
「俺はこの王子に用があるんだ。邪魔するなら……」
「殺してはなりませんよ!」
トンマーゾが魔術を繰り出そうとしていると察し、咄嗟にレオナールは叫ぶ。
「この状況でそれかよ」
「ほんと王族って、どうしてこうも偉そうなのかしら?」
クレはそう言いつつ、賊に向かって魔術を放った。それは彼らの足元を抉る!
「王子が逃がすって言ってるんだから十数える間に行きな。い~ち……」
トンゾーマの言葉に慌てて賊は逃げ出す。
レオナールは安堵するもトンマーゾ達がいるので気は抜けない。
「用とは何です?」
レオナールを不意打ちで攻撃しなかった事から本当に用事があるのだろうと思い問う。
「うん? アジトへのご招待」
「………」
レオナールはチラッと倒れたブラッドリーを見た。彼を置いては逃げられない。いや今のレオナールでは逃げようがなかった。
「どうやってここにいるとわかりました?」
「これで追ってきた」
懐からトンマーゾはアンクル取り出し見せた。それは、ティモシーに渡した物だ。
「何故それを……」
「ティモシーもアジトに招待したからな。で、どうする? 大人しく来るならあいつも一緒に連れて行ってやるが」
トンマーゾは、ブラッドリーを見て言った。
「わかりました。行きましょう」
レオナールが取れる選択は、一択しかない。大人しくトンマーゾと一緒にアジトへ行くだ。
レオナールは、剣を鞘にしまった。
「その恰好に剣をぶら下げるのもどうかと思うが……」
薬師の制服に腰に剣。見たことがない出で立ちだ。薬師の制服を持って来たがフードを持って来るのを忘れたのである。馬に乗るのに仕方なく下げていた。
二人は馬を一頭借り、ヴィルターヌ帝国を人目を盗んで出て来た。服装も万が一の為にと持って来た薬師の制服に着替えている。
そしてエクランド国に入った。レオナールは、ミュアン達が住んでいた村に向かおうと思っていたのだ。本人がいるとは思わないが、何か残して行ってくれているかもしれないと、淡い期待を持って向かう。
だが思わぬ歓迎を受ける。相手は三人だが賊に襲われた! エクランド国では滅多にない。相手は魔術師の組織でもない。
馬を矢で撃たれ、その拍子に二人は落馬。打ち身程度ですんだが、相手に無色無臭の液体を掛けられた。多分そのせいだろう。魔術が使えない!
相手も魔術は使ってこない。魔術師ではないが、剣を持ち切りかかって来たのである。こうなると対応できるのはレオナールだけだ。ブラッドリーは剣術の心得はない。魔術を封じられればタダの人。
何とか一人の動きを止めるも不利のままだ。掛けられた液体の効力が切れるまで時間稼ぎをする事にし、二人は賊から逃げていた。
――呪文があったとして、それが正しく伝えられていると思うか?
走りながらレオナールは、モゼレスの言葉を思い出す。
封印を解く呪文について聞いた時の答えだ。レオナールもそれはずっと思っていた。文字ではなく口頭で残しても正しく伝え残すのは不可能に近い。
少なくともハルフォード国にあった文献には、文字として残されていない。
レオナールはまた、呪文自体に疑問を持っていた。封印したモノを開放する呪文。本来なら必要ないものだ。その存在を隠したい程のモノなのに、それを開放する呪文に意義があるとは思えない。
そうなればもう、ミュアンが言った内容がデタラメという事になる。彼女が何故そんな嘘をついたのか。そして、嘘をつくとしても呪文と言う考えはどこからきたのか。
――あなたの国が彼女を狙う理由があったとしても私の国にはない。
彼女――ミュアンの事だ。モゼレスはそうも言った。
自分が狙われる意味が根本から覆る。
ミュアンを殺さなければならないからではなく、レオナールを殺さなくてはならないから彼女を利用した! レオナールは、二人を巻き込んだのは自分の方だと行きあたる。
「レオナール様。大丈夫ですか?」
気づけばだいぶスピードが落ちていた。
レオナールは、ブラッドリーよりも若く鍛えてもいるので、彼よりは体力がある。だが今は体調が悪い。魔術も使える様になる兆しもない。
これ以上逃げ回るのは無理と判断し、レオナールは剣を再び抜く。
「あなたは下がっていてください!」
「……はい」
何か言いたげだが、従うしかなくブラッドリーは後ろに下がる。
賊の二人は一斉にレオナールに襲い掛かるが、彼はかわす。それを見通してか一人がそのままブラッドリーに向かった!
「待ちなさい! ブラッドリーにげ……」
ハッとして叫ぶレオナールにもう一人が襲い掛かる!
「うわー!」
慌ててかわすレオナールにブラッドリーの悲痛な声が届く! 振り返れば背中を斬られ倒れ込んだところだった!
「ブラッドリー!」
今すぐ駆け寄りたいがそれを相手が許さない。ブラッドリーを襲ったもう一人もレオナールの方に加勢する。
ブラッドリーは倒れたまま動かない。
体力も限界に近く、ブラッドリーの事で焦りが出ているレオナールは、追い詰められていく。
せめて魔術が使える様になればと思った時だった。目の前の二人が後ろに吹き飛んだ!
「ぐわー!」
後ろから魔術が放たれたと驚いて振り向いたレオナールは青ざめる。そこには見覚えのある二人がいた。トンマーゾとクレである。
「来てみるもんだな。おたくのこんな姿が見れるなんてな!」
「………」
トンマーゾに言い返す言葉が咄嗟に出てこない。
「貴様!」
吹き飛ばされた男の一人が立ち上がり、トンマーゾを睨む。
「俺はこの王子に用があるんだ。邪魔するなら……」
「殺してはなりませんよ!」
トンマーゾが魔術を繰り出そうとしていると察し、咄嗟にレオナールは叫ぶ。
「この状況でそれかよ」
「ほんと王族って、どうしてこうも偉そうなのかしら?」
クレはそう言いつつ、賊に向かって魔術を放った。それは彼らの足元を抉る!
「王子が逃がすって言ってるんだから十数える間に行きな。い~ち……」
トンゾーマの言葉に慌てて賊は逃げ出す。
レオナールは安堵するもトンマーゾ達がいるので気は抜けない。
「用とは何です?」
レオナールを不意打ちで攻撃しなかった事から本当に用事があるのだろうと思い問う。
「うん? アジトへのご招待」
「………」
レオナールはチラッと倒れたブラッドリーを見た。彼を置いては逃げられない。いや今のレオナールでは逃げようがなかった。
「どうやってここにいるとわかりました?」
「これで追ってきた」
懐からトンマーゾはアンクル取り出し見せた。それは、ティモシーに渡した物だ。
「何故それを……」
「ティモシーもアジトに招待したからな。で、どうする? 大人しく来るならあいつも一緒に連れて行ってやるが」
トンマーゾは、ブラッドリーを見て言った。
「わかりました。行きましょう」
レオナールが取れる選択は、一択しかない。大人しくトンマーゾと一緒にアジトへ行くだ。
レオナールは、剣を鞘にしまった。
「その恰好に剣をぶら下げるのもどうかと思うが……」
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