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第十三章 嘘に紛れた思惑
第百五十三話
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魔術は封印されていない。エイブが言っている事は本当だろう。逃げ出す事は出来ない。そしてどちらにしても、王宮に戻るつもりはなかった。
「協力は出来ないけどここには居るよ。だからせめて母さんを追っている理由を教えてほしい……」
「仕方ねぇなぁ。お前の母親は、魔術師復活の為のアイテムを持っているらしい。亡命時に持って逃げたみたいだな。詳しい話は聞いてないから知らんが……」
(アイテム? じゃ、狙いは文献ではない。全部母さんの嘘!)
「……ありがとう」
結局全てミュアンが言っていた事は嘘だった。
ティモシーは、ミュアンに沸々と怒りが湧いてきた。そして王女とバレてもなお、嘘を付き通している。何故そこまでするのかがわからなかった。
(そう言えば……レオナール王子って母さんの事知っている風だった)
「ちょっと、街で凄い噂広がってるわよって……。あら、この子……とうとう拾って来たの?」
騒がしく現れたのはクレだ。後ろにはザイダもいる。
「あら、ティモシーじゃない。また怪我したの? あ、させられたのか」
ザイダがチラッとトンマーゾ見て訂正する。
「逆だ。助けてやったんだ。で、噂って?」
「この国とハルフォード国が戦争になるかもって話!」
「その話向こうで聞く」
ちらっとティモシーを見てトンマーゾは部屋を出て行く。
それに伴い、エイブも部屋を後にする。
「じゃ、ゆっくり寝てなよ……」
「待って! エイブさん、お願いがあるんだけど……」
「なーに?」
ティモシーに返事を返したのは、エイブではなくザイダだ。
「えっと……」
ザイダに睨まれティモシーは口ごもる。
「ザイダさん。で、何? お願いって」
「レオナール王子の情報が入ったら教えてほしい」
さっきのクレの言葉に、自分が王宮を飛び出すきっかけを思い出したのだ。レオナールは命を狙われている。ヴィルターヌ帝国にルーファス王子と一緒に出掛けたが、こんな噂があるのでは一緒に帰ってこないだろう。
知った所でどうする事も出来ないが知りたかった。
「別にいいけど……。わかってるよね? 知ってもここからは出れないよ?」
ティモシーは頷く。
「俺、あの人に助けてもらってばかりだし、迷惑もいっぱいかけて……この噂はハミッシュ王子が捕まった時に流す事になっていたかもしれないんだ。母さんのせいでこんな噂が流れた……」
「ほう。そこまで用意してお前達を消しにかかったのか? あの国は」
ティモシーはギョッとしてドアの方を向いた。勿論そこにはトンマーゾが立っている。部屋から出たが立ち去っていなかった。
「探りを入れてやろうか?」
「え?」
トンマーゾの意外な言葉にティモシーは目を丸くする。
「俺はしないからな!」
エイブは、もうごめんだと先に断っておく。
「俺がするから大丈夫だ」
「な、なんで?」
「興味があるからさ。今あいつは行くあてもないだろうし。まあ、この国に居れば連れて来てやるよ」
ティモシーは、静かに頷いた――。
「協力は出来ないけどここには居るよ。だからせめて母さんを追っている理由を教えてほしい……」
「仕方ねぇなぁ。お前の母親は、魔術師復活の為のアイテムを持っているらしい。亡命時に持って逃げたみたいだな。詳しい話は聞いてないから知らんが……」
(アイテム? じゃ、狙いは文献ではない。全部母さんの嘘!)
「……ありがとう」
結局全てミュアンが言っていた事は嘘だった。
ティモシーは、ミュアンに沸々と怒りが湧いてきた。そして王女とバレてもなお、嘘を付き通している。何故そこまでするのかがわからなかった。
(そう言えば……レオナール王子って母さんの事知っている風だった)
「ちょっと、街で凄い噂広がってるわよって……。あら、この子……とうとう拾って来たの?」
騒がしく現れたのはクレだ。後ろにはザイダもいる。
「あら、ティモシーじゃない。また怪我したの? あ、させられたのか」
ザイダがチラッとトンマーゾ見て訂正する。
「逆だ。助けてやったんだ。で、噂って?」
「この国とハルフォード国が戦争になるかもって話!」
「その話向こうで聞く」
ちらっとティモシーを見てトンマーゾは部屋を出て行く。
それに伴い、エイブも部屋を後にする。
「じゃ、ゆっくり寝てなよ……」
「待って! エイブさん、お願いがあるんだけど……」
「なーに?」
ティモシーに返事を返したのは、エイブではなくザイダだ。
「えっと……」
ザイダに睨まれティモシーは口ごもる。
「ザイダさん。で、何? お願いって」
「レオナール王子の情報が入ったら教えてほしい」
さっきのクレの言葉に、自分が王宮を飛び出すきっかけを思い出したのだ。レオナールは命を狙われている。ヴィルターヌ帝国にルーファス王子と一緒に出掛けたが、こんな噂があるのでは一緒に帰ってこないだろう。
知った所でどうする事も出来ないが知りたかった。
「別にいいけど……。わかってるよね? 知ってもここからは出れないよ?」
ティモシーは頷く。
「俺、あの人に助けてもらってばかりだし、迷惑もいっぱいかけて……この噂はハミッシュ王子が捕まった時に流す事になっていたかもしれないんだ。母さんのせいでこんな噂が流れた……」
「ほう。そこまで用意してお前達を消しにかかったのか? あの国は」
ティモシーはギョッとしてドアの方を向いた。勿論そこにはトンマーゾが立っている。部屋から出たが立ち去っていなかった。
「探りを入れてやろうか?」
「え?」
トンマーゾの意外な言葉にティモシーは目を丸くする。
「俺はしないからな!」
エイブは、もうごめんだと先に断っておく。
「俺がするから大丈夫だ」
「な、なんで?」
「興味があるからさ。今あいつは行くあてもないだろうし。まあ、この国に居れば連れて来てやるよ」
ティモシーは、静かに頷いた――。
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