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第十一章 彼らの選択

第百二十八話

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 グスターファスとミュアンは一人掛けのソファーに座り向かい合っていた。

 「ミュアンさん。私はあなたもティモシーも薬師として素晴らしい腕を持っていると思っております。ティモシーは、あの年であの技術。私は将来を楽しみにしているのです。そしてあなたもです。あなたがオズマンドと結婚すると聞いた時は驚きました。彼は女気がなかったからです。その彼が、あなたの願いだからと王宮警備兵を辞め、村の巡警兵になったのは本当に驚いた」
 「優秀な彼を辞めさせた事は謝ります……」
 「いやいや、そんな事を言っているのではない。本音を言うと、このままあの村で医者をしてほしいのだ。」

 グスターファスは、先ほどとは違い俯いて話を聞いているミュアンを見つめ言った。

 「彼は本当に君が大事なんだろう。私もだ。あなた達もレオナール殿も大事な薬師なのです」
 「彼は薬師なのですか? 確かに前にお会いした時は制服を着ていましたが……」

 グスターファスは頷く。

 「正真正銘の王宮専属薬師です。彼の実力で入りました」

 ミュアンは驚いた顔をする。

 「ご存知かどうかわかりませんが、私の妻は五年前病気でなくなりました。薬師の国の王妃なのに助ける事が出来なかった。私は今でも、自分の不甲斐なさを悔やんでいます。その時、私だけではなく、彼らも尽力を尽くしてくれた」
 「それって、あの王子の事ですか?」

 頷くとグスターファスは何故か、レオナールの身の上話を始めるのだった――。



 レオナールは生まれつき体が弱かった。そこでハルフォード国王の命令でブラッドリーは二十二年前、彼が二十歳の時に薬師になり、そして七年後にはエクランド国の王宮専属薬師になった。それからは、ずっとエクランド国にいた。
 ブラッドリーは、専属薬師になって直ぐにマイスターの資格を取得し、医者の免許を取った。
 その時、レオナールは薬師の試験を受けていた。勿論一発合格である。
 ブラッドリーはある日、王妃にと薬を調合してくれた。それは今までで一番効果があった。エクランド国でも知られていない薬草を調合しているようで、その出所を聞いてもどうしても教えてはくれなかった。
 そして、ある日レオナールは二十歳という若さで王宮専属薬師になった。しかしレオという偽名を使っていた。後見人がブラッドリーだった為、もしやと思い問い詰めると第一王子だったのである。しかも、国王に内緒で受けていたのだ。
 レオナールは、薬師になるのさえ反対されていた為だった。自分の事は自分で何とかしたい。その一心で励んできたのだ。
 グスターファスはレオナールと国王の間を取り持ち、彼を認めさせることに成功する。そしてその時に、実はレオナールとブラッドリーは、ハルフォード国で薬草の研究をしている事を知った。マイスターでないものが行うのは禁止されている。
 レオナールの病気の為、そしてエクランド国の王妃の為であった。グスターファスはダメだと思いつつ、目を瞑る事にした。自分には出来ない事を彼らはやってくれていたのだ。
 王妃は、残念ながら五年前この世を去ったが、その時に王妃の提案で協定を二国の間で結んだのである――。
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