116 / 192
第十一章 彼らの選択
第百十六話
しおりを挟む「え……」
ランフレッドは、立ったままティモシーをしばし見つめる。
「トンマーゾに胸に刻まれたのか!」
ランフレッドは、片膝を付きティモシーの前にかかんだ。
「違う。首の後ろに……。殺す事は出来ないけど、激痛を与える事は出来るって。本当は、胸に魔法陣の刻印を刻まれそうになったけど、エイブさんが止めてくれたんだ!」
「そうか。わかった……」
ランフレッドは、ギュッとティモシーを抱きしめる。ティモシーは彼の胸で泣いた。その彼の首の後ろを髪をかき上げ、首を見るもランフレッドには見えるはずもない。
「俺のせいだな。あそこでお前を追い詰めなければ……」
ランフレッドがこぼした言葉に、ティモシーは彼の胸の中で首を横に振った。
(全て俺のせいだ。逃げてばっかりだったから……)
「俺、レオナール王子を裏切ってばかりだな。もう、母さんを助けてもらえないかも……」
「お前の母親を? どういう事だ?」
「母さんは、魔術師の組織に追われてるみたいなんだ……」
「え……」
ランフレッドは、一番それに驚いた!
「なんで? いや、それ変だろう? 先日会った時は薬師になった事を二人共喜んでくれていただろう?」
「父さんは知らないんだ」
「じゃレオナール王子と一緒に出掛けた先って……」
ランフレッドもきっちり聞いていた。ティモシーをジッと見つめ問う。それにこくんと頷いて答えた。
「そうか。レオナール王子は全て知っていたのか。本当に秘密主義だよな、あの王子……」
ランフレッドは立ち上がった。
「兎に角、トンマーゾが戻る前にここを脱出しよう!」
そう言うと、ランフレッドは辺りをキョロキョロと見渡す。勿論何もない。
ティモシーも立ち上がった。
「ドアを壊すなら、俺、やってみるよ」
そう言ってティモシーは、ペンダントを外す。
「それ……」
ランフレッドはペンダントを見て呟く。
「これは、母さんが作ってくれたモノだったんだ。この前、これをくれた意図を知ったんだ。魔術師の組織から俺が魔術師だとバレない為の物だった。これね、付けていると魔術使えないんだ」
そう語りながらティモシーは背伸びをしつつ、ランフレッドの首にペンダントを掛けた。
「それと、これには眠りなどをレジストする付加ついているんだ。多分、それがなくても俺はレジストしちゃうんだと思う。だからわざわざペンダントにその効果を付けてそれを誤魔化した……」
「そうだったのか……」
ティモシーは、ランフレッドを見て頷くと、ドアに向かっていく。
(もう逃げない! 魔術師だとバラした事を母さんには謝ろう。そして、魔術師の組織から母さんを守る! いや、ランフレッドもエイブさんも守る!)
ティモシーは、そう決断した。もし、ミュアンが前に魔術師の組織の一員だったとしても絶対に守り切る。そう誓う。
「俺が魔術でドアを壊す! やった事がないから加減がわからないけど」
「おいおい。建物自体壊すなよ……」
ランフレッドは、そう言いつつティモシーに近づいた。
「いくよ!」
ドキドキと高まる胸の音と二人の息遣いだけが聞こえる。
ティモシーは右手を振った。
あの黒い石が抉った魔術をイメージして!
大きな音とともにドアは粉々だ! 勿論辺りに破片が飛び散る。ランフレッドも身構えるが破片は飛んでこなかった。二人の周りには、ティモシーが張った結界で守られていた。
「凄いな、お前……」
魔術を目の当たりにしてランフレッドは、正直な感想を述べた。
「よかった。壊れた……」
「ありがとう。ティモシー。じゃ、戻ろう!」
二人は、建物の外に出た。辺りは明るくなっていた。
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
蓮華
釜瑪 秋摩
ファンタジー
小さな島国。 荒廃した大陸の四国はその豊かさを欲して幾度となく侵略を試みて来る。 国の平和を守るために戦う戦士たち、その一人は古より語られている伝承の血筋を受け継いだ一人だった。 守る思いの強さと迷い、悩み。揺れる感情の向かう先に待っていたのは――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる