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第十章 駆け引き
第百十一話
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ティモシーは目を覚ました。何となく体がだるい。ベットから起き上がるとふらつき、床に倒れ込んだ。
「いた……」
「お前何やってるんだ? 寝ぼけてるのか?」
ランフレッドは、ティモシーを起こそうとして驚く。
「お前、熱あるんじゃないか?」
「……大丈夫」
「大丈夫じゃない! ほら、ベットに戻れって」
ランフレッドは、ティモシーを抱きかかえベットに寝かせた。
「今、誰か呼んで来るから大人しくしてろよ」
そう言うとランフレッドは部屋を出て行く。その姿をボウッとして見送ると、すぐにダグが部屋に入って来た。
「あ、ダグさん……」
「今、ランフレッドさんがブラッドリーさんを呼びに行ったから。大丈夫か? 結構熱ありそうだな……」
「………」
ダグは取りあえず、冷たいタオルをティモシーのおでこに乗せる。
「なあ、ティモシー。お前、レオナール王子とどこに出掛けていたんだ? 皆は気づかずにスルーしていたみたいだけど、イリステーナ皇女がポロッと言ったんだ」
それを聞きティモシーは、驚いてダグを見た。聞き取りの時は上手く誤魔化せたが、結局二人で出掛けた事をイリステーナは話してしまっていた。
「あの人、お前に何をさせているんだ? ずっと傍に置いていたよな? ランフレッドさんもそれを了承している感じだったし……。もしかして……」
トントンとドアがノックされ、ランフレッドが入って来た。ブラッドリーも一緒だ。
「話はまた後で……」
ダグはボソッとティモシーに耳打ちした。
ブラッドリーがティモシーを診ている間に、ランフレッドはレオナールに連絡をしにまた出て行った。そして、二人で戻って来る。
「どうです? ブラッドリー」
「主に精神的ものでしょう……。薬を用意してきます」
「お願いします」
レオナールが聞くとブラッドリーはそう答え、調合しに研究室に向かった。
「じゃ、今日は俺、ルーファ……」
「あなたはきちんとルーファスの護衛を致しなさい」
ランフレッドがついていると言おうとすると、それをレオナールが遮った。
「ブラッドリーさんにつかせるのですか?」
「いいえ。私がつきます。皆さんにはお仕事があるのですから……」
レオナールがランフレッドに答える。
「……一人で大丈夫だけど」
ティモシーがボソッと言うと、三人は振り向いた。その顔は、心配そうな顔だ。
「あなたは何も心配せずにおやすみなさい」
(やっぱり見張られているんだな、俺……)
「はい……」
ティモシーは、エイブが言っていた通り、自分は疑われ監視対象だと確信する。自分を見張っていても仕方がないのにと思いながらも、返事を返した。
暫くするとブラッドリーが調合した薬を持って戻って来た。水と一緒に渡される。
ティモシーは苦い薬を水と一緒に飲んだ。
「今日は私がついています。あなたも仕事に戻りなさい」
レオナールの言葉にブラドリーは、はいと頷く。
ティモシーとレオナールを残し、他の者は仕事へと向かい部屋を出て行った。
レオナールは、ティモシーが横たわるベットの脇に座ると、ティモシーに話しかける。
「すみません。あなたの信用を得るにはこうするしかなかったのです……」
「……別にいいです。疑わられるのは仕方がないし……」
「あなたの母親が話す気になって下されば、あなたの疑惑は晴れるはずです。それに事は大きく進展すると思われます」
ティモシーは、不安げにレオナールを見る。
ミュアンが持っている情報がもし、自分にとって好ましくない物だったらどうなるんだろうか。
例えば、魔術師の組織に属していて、逃げ出していた。もしそうなら情報は持っているかもしれないが、警戒対象者になるかもしれない。それにもしそうだとしたら、自分は大変な失敗をした事になる。
(やっぱり話した方がいいだろうか?)
レオナールにだけにでも話し、相談した方がいいかもしれない。でも、その事がバレれば、エイブが殺される。彼を助け出したい。ティモシーはそう思うと、どうしても言い出せなかった。
「ティモシー。一つお伺いしたいのですが……あなたは、エイブと私のどちらを信用しておりますか?」
「え……」
何故突然そんな事を聞くのだろうとティモシーは驚く。もしかして本当は色々バレているのだろうか?
この場しのぎでもレオナールだと言っておくべきなのに、口は開かなかった。
「いえ。忘れて下さい」
そう言ったレオナールは小さくため息をついた。
「もう、寝なさい」
レオナールは、ニッコリ微笑んだ。そう言えばさっきから眠気が襲ってきていた。ティモシーは、目を瞑った。
「彼にそこまで、心を許していますか。厄介ですね……」
レオナールがそう呟く声がティモシーの耳に届いた――。
「いた……」
「お前何やってるんだ? 寝ぼけてるのか?」
ランフレッドは、ティモシーを起こそうとして驚く。
「お前、熱あるんじゃないか?」
「……大丈夫」
「大丈夫じゃない! ほら、ベットに戻れって」
ランフレッドは、ティモシーを抱きかかえベットに寝かせた。
「今、誰か呼んで来るから大人しくしてろよ」
そう言うとランフレッドは部屋を出て行く。その姿をボウッとして見送ると、すぐにダグが部屋に入って来た。
「あ、ダグさん……」
「今、ランフレッドさんがブラッドリーさんを呼びに行ったから。大丈夫か? 結構熱ありそうだな……」
「………」
ダグは取りあえず、冷たいタオルをティモシーのおでこに乗せる。
「なあ、ティモシー。お前、レオナール王子とどこに出掛けていたんだ? 皆は気づかずにスルーしていたみたいだけど、イリステーナ皇女がポロッと言ったんだ」
それを聞きティモシーは、驚いてダグを見た。聞き取りの時は上手く誤魔化せたが、結局二人で出掛けた事をイリステーナは話してしまっていた。
「あの人、お前に何をさせているんだ? ずっと傍に置いていたよな? ランフレッドさんもそれを了承している感じだったし……。もしかして……」
トントンとドアがノックされ、ランフレッドが入って来た。ブラッドリーも一緒だ。
「話はまた後で……」
ダグはボソッとティモシーに耳打ちした。
ブラッドリーがティモシーを診ている間に、ランフレッドはレオナールに連絡をしにまた出て行った。そして、二人で戻って来る。
「どうです? ブラッドリー」
「主に精神的ものでしょう……。薬を用意してきます」
「お願いします」
レオナールが聞くとブラッドリーはそう答え、調合しに研究室に向かった。
「じゃ、今日は俺、ルーファ……」
「あなたはきちんとルーファスの護衛を致しなさい」
ランフレッドがついていると言おうとすると、それをレオナールが遮った。
「ブラッドリーさんにつかせるのですか?」
「いいえ。私がつきます。皆さんにはお仕事があるのですから……」
レオナールがランフレッドに答える。
「……一人で大丈夫だけど」
ティモシーがボソッと言うと、三人は振り向いた。その顔は、心配そうな顔だ。
「あなたは何も心配せずにおやすみなさい」
(やっぱり見張られているんだな、俺……)
「はい……」
ティモシーは、エイブが言っていた通り、自分は疑われ監視対象だと確信する。自分を見張っていても仕方がないのにと思いながらも、返事を返した。
暫くするとブラッドリーが調合した薬を持って戻って来た。水と一緒に渡される。
ティモシーは苦い薬を水と一緒に飲んだ。
「今日は私がついています。あなたも仕事に戻りなさい」
レオナールの言葉にブラドリーは、はいと頷く。
ティモシーとレオナールを残し、他の者は仕事へと向かい部屋を出て行った。
レオナールは、ティモシーが横たわるベットの脇に座ると、ティモシーに話しかける。
「すみません。あなたの信用を得るにはこうするしかなかったのです……」
「……別にいいです。疑わられるのは仕方がないし……」
「あなたの母親が話す気になって下されば、あなたの疑惑は晴れるはずです。それに事は大きく進展すると思われます」
ティモシーは、不安げにレオナールを見る。
ミュアンが持っている情報がもし、自分にとって好ましくない物だったらどうなるんだろうか。
例えば、魔術師の組織に属していて、逃げ出していた。もしそうなら情報は持っているかもしれないが、警戒対象者になるかもしれない。それにもしそうだとしたら、自分は大変な失敗をした事になる。
(やっぱり話した方がいいだろうか?)
レオナールにだけにでも話し、相談した方がいいかもしれない。でも、その事がバレれば、エイブが殺される。彼を助け出したい。ティモシーはそう思うと、どうしても言い出せなかった。
「ティモシー。一つお伺いしたいのですが……あなたは、エイブと私のどちらを信用しておりますか?」
「え……」
何故突然そんな事を聞くのだろうとティモシーは驚く。もしかして本当は色々バレているのだろうか?
この場しのぎでもレオナールだと言っておくべきなのに、口は開かなかった。
「いえ。忘れて下さい」
そう言ったレオナールは小さくため息をついた。
「もう、寝なさい」
レオナールは、ニッコリ微笑んだ。そう言えばさっきから眠気が襲ってきていた。ティモシーは、目を瞑った。
「彼にそこまで、心を許していますか。厄介ですね……」
レオナールがそう呟く声がティモシーの耳に届いた――。
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