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第十章 駆け引き
第百八話
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「ごめん。やっぱりここに連れて来るんじゃなかった……」
ティモシーは首を横に振る。
「ザイダさんは、エイブさんが魔術師だと知ってるの?」
「いや、知らないよ。俺もトンマーゾさんの刻印を刻まれている事になっている。それより、首に刻印を刻まれた事、絶対にバレないようにね。バレたらもう相手の信用を得る事は出来なくなるから……」
ティモシーは、頷く。
「エイブさんは、早く体を治して」
エイブも頷いた。
「その刻印だけど、魔法陣じゃないからトンマーゾさんが死ねば解放されるはずだから……」
「こ、殺さないと解放されないの?」
「多分ね。後、俺に何かあっても君は向こう側にいるんだよ。俺のせいでこうなったのにこんな事言うの変だけど。この組織は俺が思っていた組織とは違ったみたいだ。俺は、ヴィルターヌ帝国の様な共存を望んでいたのに」
エイブは首を横に振った。
「ううん。トンマーゾさんは、女性二人を共存が無理な者達だからって……。もうその時点で望んでいた共存と違っていたのに。自分を誤魔化していた」
エイブは俯いた。
「皇女が狙われてから目が覚めるなんて……。皇帝だけは助け出したい。何としても! 難しいと思うけど、全く情報を得られないと怪しまれるから見聞きした事は教えて! 俺が教えても大丈夫そうなのだけ伝えるから……」
ティモシーは頷く。
「無理はしないでね。探りは別に入れなくていいから……。じゃ、もう戻った方がいいよ。きっと探してる」
「うん……」
「またね」
「うん。また夢で……」
そう言い残しティモシーは部屋を出て一階に上がり外に出た。
(俺が何とかしなくちゃ!)
そう思うもどうしたらいいかなどわからない。
「待ちな」
ティモシーはビクッと体を振るわす。ドアの横の壁に腕と足を組んでトンマーゾが寄しかかっていた。
(もしかして、さっきの会話聞かれていた?)
心臓がドクンドクンと高まる。
「手を出しな」
「手……?」
言われた通り、恐る恐る両手を出すと、紙と黒い石を渡される。
(この黒い石!)
「見覚えあるだろう? もし相手にバレた時に逃げ出すのに使いな。その紙に呪文が書いてある。石を持って口に出して唱え、その石を壊せば発動する。一度きりのものだからな。あと呪文は暗記して、燃やして処理しろ。わかったな」
「はい……。あの、この石はどんな効果が?」
「近くの相手の魔力を封じるモノだ。威力はそうだな。そのペンダントにそのレジスト効果があっても効いちゃうぐらいの優れものだ。後は必死に逃げてこい。どこかに隠れて、エイブに連絡を取れ。いいな」
ティモシーは小さく頷く。
「それ、しまっていけよ……」
そのまま持って立ち去ろうとすると、トンマーゾは呆れた様に言った。
「あ……」
慌てて、ポーチの中にしまった。
そして、ティモシーは走り出した。まるで逃げる様に。その姿をジッとトンマーゾが見つめていた。
貰った石を使って逃げエイブに連絡を取った所で、二人共消されるだろうとわかっていた。
兎に角今は、皇帝を助け出すのが先だ。だが、そうすれば裏切った事がバレるだろう。
はぁはぁと息を切らし、一度立ち止まる。知っている道についた。
エイブとトンゾーマの事は話した方がいいのだろうか? ティモシーは思案する。
トンマーゾに見つかる前に、エイブは会った事は内緒にと言っていた。取りあえずそうした方がいいのかもしれない。
(そうだ。母さんに組織の事を聞いてから判断しよう……)
そう結論に至った。
「ティモシー! やっと見つけた」
声の方に振り向くと、ダグが居た。
「よかった。どこまで行っていたんだ」
「あ、えっと。わかんない……」
「はぁ? まあいい。戻ろう。大丈夫だ。皆もレオナール王子の説明で納得したから」
ティモシーは頷いた。どこまで話したのか不安だったが、戻るしかなかった。
ティモシーは首を横に振る。
「ザイダさんは、エイブさんが魔術師だと知ってるの?」
「いや、知らないよ。俺もトンマーゾさんの刻印を刻まれている事になっている。それより、首に刻印を刻まれた事、絶対にバレないようにね。バレたらもう相手の信用を得る事は出来なくなるから……」
ティモシーは、頷く。
「エイブさんは、早く体を治して」
エイブも頷いた。
「その刻印だけど、魔法陣じゃないからトンマーゾさんが死ねば解放されるはずだから……」
「こ、殺さないと解放されないの?」
「多分ね。後、俺に何かあっても君は向こう側にいるんだよ。俺のせいでこうなったのにこんな事言うの変だけど。この組織は俺が思っていた組織とは違ったみたいだ。俺は、ヴィルターヌ帝国の様な共存を望んでいたのに」
エイブは首を横に振った。
「ううん。トンマーゾさんは、女性二人を共存が無理な者達だからって……。もうその時点で望んでいた共存と違っていたのに。自分を誤魔化していた」
エイブは俯いた。
「皇女が狙われてから目が覚めるなんて……。皇帝だけは助け出したい。何としても! 難しいと思うけど、全く情報を得られないと怪しまれるから見聞きした事は教えて! 俺が教えても大丈夫そうなのだけ伝えるから……」
ティモシーは頷く。
「無理はしないでね。探りは別に入れなくていいから……。じゃ、もう戻った方がいいよ。きっと探してる」
「うん……」
「またね」
「うん。また夢で……」
そう言い残しティモシーは部屋を出て一階に上がり外に出た。
(俺が何とかしなくちゃ!)
そう思うもどうしたらいいかなどわからない。
「待ちな」
ティモシーはビクッと体を振るわす。ドアの横の壁に腕と足を組んでトンマーゾが寄しかかっていた。
(もしかして、さっきの会話聞かれていた?)
心臓がドクンドクンと高まる。
「手を出しな」
「手……?」
言われた通り、恐る恐る両手を出すと、紙と黒い石を渡される。
(この黒い石!)
「見覚えあるだろう? もし相手にバレた時に逃げ出すのに使いな。その紙に呪文が書いてある。石を持って口に出して唱え、その石を壊せば発動する。一度きりのものだからな。あと呪文は暗記して、燃やして処理しろ。わかったな」
「はい……。あの、この石はどんな効果が?」
「近くの相手の魔力を封じるモノだ。威力はそうだな。そのペンダントにそのレジスト効果があっても効いちゃうぐらいの優れものだ。後は必死に逃げてこい。どこかに隠れて、エイブに連絡を取れ。いいな」
ティモシーは小さく頷く。
「それ、しまっていけよ……」
そのまま持って立ち去ろうとすると、トンマーゾは呆れた様に言った。
「あ……」
慌てて、ポーチの中にしまった。
そして、ティモシーは走り出した。まるで逃げる様に。その姿をジッとトンマーゾが見つめていた。
貰った石を使って逃げエイブに連絡を取った所で、二人共消されるだろうとわかっていた。
兎に角今は、皇帝を助け出すのが先だ。だが、そうすれば裏切った事がバレるだろう。
はぁはぁと息を切らし、一度立ち止まる。知っている道についた。
エイブとトンゾーマの事は話した方がいいのだろうか? ティモシーは思案する。
トンマーゾに見つかる前に、エイブは会った事は内緒にと言っていた。取りあえずそうした方がいいのかもしれない。
(そうだ。母さんに組織の事を聞いてから判断しよう……)
そう結論に至った。
「ティモシー! やっと見つけた」
声の方に振り向くと、ダグが居た。
「よかった。どこまで行っていたんだ」
「あ、えっと。わかんない……」
「はぁ? まあいい。戻ろう。大丈夫だ。皆もレオナール王子の説明で納得したから」
ティモシーは頷いた。どこまで話したのか不安だったが、戻るしかなかった。
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