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第十章 駆け引き
第百六話
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「バカだよなぁ。そういう訳で俺ではどうにも出来ないんだ。思い当たる所は探すよ。見つけたらいつものように知らせに行くから。もう、夢を忘れないで覚えてるみたいだし……」
ティモシーは頷いた。
「ねえ、組織抜けない? 本当は抜けたいんだよね?」
「わかってないね。城の中から俺達を連れ出しちゃう連中だよ? 無理だろう? それに君の元締めは、魔術師の王子だよね? 彼は俺を許すと思う?」
「それは……」
今の話を信じてくれれば、許してくれるかもしれない。それにイリステーナがエイブ側につけば、殺す事はしないだろう。
「大丈夫。だから……」
「ありがとう。じゃ、皇帝を助けてからだね。実績ないとだめだろう?」
「うん。……わかった」
ガシッとエイブは、ティモシーの腕を掴む。
「ここの場所は、絶対に人に言ったらだめだよ? 皇帝が無事戻れるまでは、君と俺が接触した事は誰にも知られちゃいけないから。いいね」
ティモシーは頷く。
「所でどうして、俺が近くにいるとわかったの?」
「普段は精神で動いているからね。ちょっと彷徨っていたら、君を見つけたからさ。この時間だし、こんな場所だし、何かあったんだろうと思ってね」
「そっか……」
エイブも勘がいいなとティモシーは関心した。
バタン。
上からドアを閉める音がした。
「え……」
エイブとティモシーは青ざめる。誰か来たと……。二人はその場で固まった。ここには隠れる場所などない。
「おい、エイブ……おっと」
二人を見た人物は、右手を向ける。それはトンマーゾだった。
最悪だと二人は思った。
「さて、この状況はどういう事だ? 一応言い訳を聞いてやる」
「言い訳って……」
エイブはごくりと生唾を飲み込む。
「レ、レオナール王子と喧嘩して王宮を飛び出して来たんだ。何も考えずに走っていたら迷子になって……」
「ほう。それを信じろと? 迷子になったらここにたどり着くのか?」
「俺が近くにいるのを関知して迎えに行った。勝手な行動をしてすまない……」
エイブはジッとトンマーゾを見据える。
「まあ、いいだろう……」
トンマーゾは、手を下ろした。二人は安堵する。
「で、王宮を抜け出すような喧嘩とはどんなのだ?」
トンマーゾ鋭い視線を飛ばしティモシーに質問した。王子と喧嘩するような内容だ。そうそうない。
「イ、イリステーナ皇女の事で。何も聞かされないで案内させられて。前もそんな事あったから……。言い合いと言うか怖くなって逃げて来たというか……」
「なるほどな」
トンマーゾは腕を組み、ティモシーの話を聞いている。
「それで近くにいるのがわかったから、行ってみたら動けなくなって、ここに運んでもらったところなんだ……」
「そうか」
そう言いながらトンマーゾは近づき、ティモシーの手を引っ張った。
「あ……」
「何を!」
ティモシーはトンマーゾに押し倒された。
「選べ。死か仲間になるか……。まさか、このまま無事に帰されるなんて甘い考えしてないよな?」
「え……」
「エイブのお気に入りみたいだから選ばせてやるって言っているんだ」
(仲間って……。魔術師だとバレた!?)
ティモシーは、トンマーゾの言葉に驚く。
「まあ、仲間になるって言うなら刻印刻む事になるけどな」
「え!」
(そんな! どっちにしても同じ事じゃないか!)
ティモシーは青ざめる。もう逃れられないと……。万事休すだった!
ティモシーは頷いた。
「ねえ、組織抜けない? 本当は抜けたいんだよね?」
「わかってないね。城の中から俺達を連れ出しちゃう連中だよ? 無理だろう? それに君の元締めは、魔術師の王子だよね? 彼は俺を許すと思う?」
「それは……」
今の話を信じてくれれば、許してくれるかもしれない。それにイリステーナがエイブ側につけば、殺す事はしないだろう。
「大丈夫。だから……」
「ありがとう。じゃ、皇帝を助けてからだね。実績ないとだめだろう?」
「うん。……わかった」
ガシッとエイブは、ティモシーの腕を掴む。
「ここの場所は、絶対に人に言ったらだめだよ? 皇帝が無事戻れるまでは、君と俺が接触した事は誰にも知られちゃいけないから。いいね」
ティモシーは頷く。
「所でどうして、俺が近くにいるとわかったの?」
「普段は精神で動いているからね。ちょっと彷徨っていたら、君を見つけたからさ。この時間だし、こんな場所だし、何かあったんだろうと思ってね」
「そっか……」
エイブも勘がいいなとティモシーは関心した。
バタン。
上からドアを閉める音がした。
「え……」
エイブとティモシーは青ざめる。誰か来たと……。二人はその場で固まった。ここには隠れる場所などない。
「おい、エイブ……おっと」
二人を見た人物は、右手を向ける。それはトンマーゾだった。
最悪だと二人は思った。
「さて、この状況はどういう事だ? 一応言い訳を聞いてやる」
「言い訳って……」
エイブはごくりと生唾を飲み込む。
「レ、レオナール王子と喧嘩して王宮を飛び出して来たんだ。何も考えずに走っていたら迷子になって……」
「ほう。それを信じろと? 迷子になったらここにたどり着くのか?」
「俺が近くにいるのを関知して迎えに行った。勝手な行動をしてすまない……」
エイブはジッとトンマーゾを見据える。
「まあ、いいだろう……」
トンマーゾは、手を下ろした。二人は安堵する。
「で、王宮を抜け出すような喧嘩とはどんなのだ?」
トンマーゾ鋭い視線を飛ばしティモシーに質問した。王子と喧嘩するような内容だ。そうそうない。
「イ、イリステーナ皇女の事で。何も聞かされないで案内させられて。前もそんな事あったから……。言い合いと言うか怖くなって逃げて来たというか……」
「なるほどな」
トンマーゾは腕を組み、ティモシーの話を聞いている。
「それで近くにいるのがわかったから、行ってみたら動けなくなって、ここに運んでもらったところなんだ……」
「そうか」
そう言いながらトンマーゾは近づき、ティモシーの手を引っ張った。
「あ……」
「何を!」
ティモシーはトンマーゾに押し倒された。
「選べ。死か仲間になるか……。まさか、このまま無事に帰されるなんて甘い考えしてないよな?」
「え……」
「エイブのお気に入りみたいだから選ばせてやるって言っているんだ」
(仲間って……。魔術師だとバレた!?)
ティモシーは、トンマーゾの言葉に驚く。
「まあ、仲間になるって言うなら刻印刻む事になるけどな」
「え!」
(そんな! どっちにしても同じ事じゃないか!)
ティモシーは青ざめる。もう逃れられないと……。万事休すだった!
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