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第九章 追われる者
第百二話
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「ティモシーさん!」
そう呼ばれ、振り向いた。
「あ、エイブさん。……って、ここ夢!」
会うなと言われていのに、やはり無理だった。
「ごめんね。逃げ出しちゃって」
「……その、体は大丈夫?」
(何聞いてんだよ、俺)
「心配はいらないよ。ザイダさんが見てくれているからね」
「やっぱり一緒なんだ……」
ティモシーは、もうこうなったら何か聞き出そうと思った。
「ねえ、魔術師の組織って何が目的なの?」
「前にも話したんだけどなぁ。やっぱり覚えてないか。魔術師の世界の復活だよ」
(魔術師の世界の復活?)
だったら何故、魔術師のイリステーナを殺そうとしたのか。ティモシーは疑問に思う。
「ねえ、その組織って魔術師同士が手を取り合って魔術師の世界を作ろうとはしてないよね?」
「どういう意味?」
「どういう意味ってそのままだよ! イリステーナ皇女を襲っておいて! トンマーゾさんが殺しに来たよ! 知らない訳ないよね?」
「え……」
ティモシーの言葉にエイブは、本当に驚いた顔をする。
「今なんて……なんでイリスを? 何故彼女の事を君が知って……」
「え……イリス?」
エイブはハッとする。
「皇女を襲った話は聞いてないよ。俺、ほとんど寝たきりだからね」
ティモシーは、思ったよりエイブとイリステーナの仲は親密だと思った。彼は、イリステーナの事をイリスと呼んだ。
「ティモシー!」
突然、エイブの後ろから呼ぶ声が聞こえ見ると、そこにはイリステーナが立っていた。
「え……」
「もしかしてそこにいるのはエイブなの?」
ティモシーが驚いていると、エイブが振り向いた。
「……イリス! 何故君がここに!」
エイブは驚きの声を上げた。
「話は本当だったのね! 彼からティモシーが夢でエイブと会っていたみたいだって聞いて……。あなた何をやっているの? どうして父上を!」
「え……モゼレス皇帝?」
「知らないの? じゃ、あなたがいる魔術師の組織じゃないの?」
「まって! 話が見えないよ」
「父上が寝たきりになった。ううん。精神が空なの。こうやって見に行ったらいなかった! このままだと体の方が持たないわ!」
モゼレスの体調が悪いどころの話でなかった。だが、どうしてそれでエクランド国に来たのかはまだ疑問が残る。
「あ、あの、何しにこの国へ」
「………」
そう言えばティモシーが居たという顔でイリステーナは、彼を見た。
「悪いけど、言えないわ」
「え……」
「イリステーナ皇女、残念だけど皇帝の件は知っていても教えられないよ。俺はもう向こう側の人間だからね」
「エイブ! 一体何があったのよ!」
エイブはイリステーナから顔を背ける。
「別に。ただこの世界に嫌気が差しただけ。皇帝の事は……俺にはどうにも出来ないから……。頼るなら魔術師の王子にしなよ」
「エイブ……。そうわかったわ!」
そう言うとスッとイリステーナなは姿を消した。
「エイブさん、いいの?」
「いいのって。どうすれと? イリスが狙われた事さえ知らなかった俺に何が出来るって?」
「え? 本当に知らなかったの?」
エイブは小さくため息をつく。
「やめた。君をこの組織にと思ったけど……君には合わなさそう」
「待って! 皇女を助けないの? イリスって呼ぶぐらいだから親密な関係なんだよね? 彼女、側近の人と二人で来たみたいなんだ! きっと切羽詰まってると思う」
「……親密か。確かに他の者よりはね。俺は、彼女達と一緒に魔術を教わっていただけだよ。年も近いし遊び相手でもあったけど、それだけだ……」
「それだけって……」
エイブは見た事のない表情をしていた。切ないようなつらそうな顔だ。
「俺、エイブさんがイリステーナ皇女を助ける気なら協力するよ!」
「本当に君はお人好しだね。……だったら彼女の助けになってあげて」
「あ……」
そう言い残し、エイブもスッと姿を消した――。
そう呼ばれ、振り向いた。
「あ、エイブさん。……って、ここ夢!」
会うなと言われていのに、やはり無理だった。
「ごめんね。逃げ出しちゃって」
「……その、体は大丈夫?」
(何聞いてんだよ、俺)
「心配はいらないよ。ザイダさんが見てくれているからね」
「やっぱり一緒なんだ……」
ティモシーは、もうこうなったら何か聞き出そうと思った。
「ねえ、魔術師の組織って何が目的なの?」
「前にも話したんだけどなぁ。やっぱり覚えてないか。魔術師の世界の復活だよ」
(魔術師の世界の復活?)
だったら何故、魔術師のイリステーナを殺そうとしたのか。ティモシーは疑問に思う。
「ねえ、その組織って魔術師同士が手を取り合って魔術師の世界を作ろうとはしてないよね?」
「どういう意味?」
「どういう意味ってそのままだよ! イリステーナ皇女を襲っておいて! トンマーゾさんが殺しに来たよ! 知らない訳ないよね?」
「え……」
ティモシーの言葉にエイブは、本当に驚いた顔をする。
「今なんて……なんでイリスを? 何故彼女の事を君が知って……」
「え……イリス?」
エイブはハッとする。
「皇女を襲った話は聞いてないよ。俺、ほとんど寝たきりだからね」
ティモシーは、思ったよりエイブとイリステーナの仲は親密だと思った。彼は、イリステーナの事をイリスと呼んだ。
「ティモシー!」
突然、エイブの後ろから呼ぶ声が聞こえ見ると、そこにはイリステーナが立っていた。
「え……」
「もしかしてそこにいるのはエイブなの?」
ティモシーが驚いていると、エイブが振り向いた。
「……イリス! 何故君がここに!」
エイブは驚きの声を上げた。
「話は本当だったのね! 彼からティモシーが夢でエイブと会っていたみたいだって聞いて……。あなた何をやっているの? どうして父上を!」
「え……モゼレス皇帝?」
「知らないの? じゃ、あなたがいる魔術師の組織じゃないの?」
「まって! 話が見えないよ」
「父上が寝たきりになった。ううん。精神が空なの。こうやって見に行ったらいなかった! このままだと体の方が持たないわ!」
モゼレスの体調が悪いどころの話でなかった。だが、どうしてそれでエクランド国に来たのかはまだ疑問が残る。
「あ、あの、何しにこの国へ」
「………」
そう言えばティモシーが居たという顔でイリステーナは、彼を見た。
「悪いけど、言えないわ」
「え……」
「イリステーナ皇女、残念だけど皇帝の件は知っていても教えられないよ。俺はもう向こう側の人間だからね」
「エイブ! 一体何があったのよ!」
エイブはイリステーナから顔を背ける。
「別に。ただこの世界に嫌気が差しただけ。皇帝の事は……俺にはどうにも出来ないから……。頼るなら魔術師の王子にしなよ」
「エイブ……。そうわかったわ!」
そう言うとスッとイリステーナなは姿を消した。
「エイブさん、いいの?」
「いいのって。どうすれと? イリスが狙われた事さえ知らなかった俺に何が出来るって?」
「え? 本当に知らなかったの?」
エイブは小さくため息をつく。
「やめた。君をこの組織にと思ったけど……君には合わなさそう」
「待って! 皇女を助けないの? イリスって呼ぶぐらいだから親密な関係なんだよね? 彼女、側近の人と二人で来たみたいなんだ! きっと切羽詰まってると思う」
「……親密か。確かに他の者よりはね。俺は、彼女達と一緒に魔術を教わっていただけだよ。年も近いし遊び相手でもあったけど、それだけだ……」
「それだけって……」
エイブは見た事のない表情をしていた。切ないようなつらそうな顔だ。
「俺、エイブさんがイリステーナ皇女を助ける気なら協力するよ!」
「本当に君はお人好しだね。……だったら彼女の助けになってあげて」
「あ……」
そう言い残し、エイブもスッと姿を消した――。
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