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第九章 追われる者
第百一話
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レオナールは、ジッとティモシーを見つめ言った。
「あなたはつくづく災難にあう方ですね」
「………」
(それ、俺のせいじゃない……)
レオナールは、大きなため息をついた。本来ならティモシーがつくはずのものだ。
「今回は焦りました。しかし、命が狙われているのに出歩くなど、彼女は何を考えていたのでしょうか」
「狙われているって知らなかったとか?」
ティモシーがボソッと返す。
「協定内容や態度から言って、少なくとも何かが起こっているのでしょう。大体皇女と側近のみなど、昔から交流のある国でないとありえませんので、よっぽど切羽詰まっているとしか考えられません。皇帝の身に何かあったか、これからそうなると予測される事態になっているか……」
「……あの、俺になんでそんな話を……」
襲われた時の事を聞くのかと思えば、全然違う話を聞かせられた。疑問に思ったのである。
「あなたに正直に話して頂きたいからです」
「正直にって何をでしょうか」
ティモシーは、生唾をごくりと飲み込む。
「エイブとの事です。先ほど言った事は本当です。エイブと彼女には繋がりがあります。ですが、彼女達が彼らを逃がした訳ではないでしょう。トンマーゾから命を狙われたのが証拠です。彼女は、ここにエイブがいる事は知らなかったと言っています。ですがエイブが彼女達が来る事を知っていた可能性はあります。思い出せませんか? 彼との会話を」
レオナールは、エイブとの夢の話を聞きたいと言っているとティモシーにも理解できたが、どんな話をしたかを覚えているのは一回だけだった。それはもう、話した内容だ。
「すみません。本当に覚えてないんです」
ティモシーは、俯いて答えた。
「そうですか」
「あの、俺とレオナール王子が王宮を出たのを見たようなんですが、どうして見られたってわかったんですか?」
「彼女はあなたの存在は知らなかったはずです。あなたの事を知ったのだとしたらあの時しかありません。そして、接触を図った。何か私の事を聞けると思ったのでしょう」
「なるほど」
ティモシーは、レオナールの推理に関心して頷く。
「彼女は何かを隠しています。そして、簡単に助けを求める事も出来ない状況なのでしょう。それが、魔術師の組織に関わる事だとしたら放ってはおけません」
彼女は一体自分から何を聞き出したかったのか。ティモシーは俯いて考えていた。
レオナール事には違いない。だがあの時、別に脅そうとしていたわけでもなさそうだった。内容は物騒な事ではないだろう。
「ブラッドリーの事ですが、彼にはあなたが魔術師だという事はバレてしまいました。ですが、今まで通り振る舞う様に指示してあります」
やっぱりバレていたとティモシーは溜息をつく。
「あの、イリステーナ皇女には……」
「気づかれておりませんよ」
「え! だってあんな近くで使ったのに!」
レオナールはジッとティモシーを見つめる。
「あなたは本当に自分の事がわかっていないのですね。大抵の者は、使われた方向はわかりますが場所はわかりません。彼女は、ブラッドリーが魔術師なのを知っています。ですので、彼が使ったと思っているようです」
ティモシーは、レオナールの言葉に驚いていた。自分は特別魔術の練習もしていないのに普通にわかる。ただ魔術の種類まではわからないだけだった。だけど他の人は、それすらわからないものだったと今知ったのである。
「あなたが本気で魔術を学べば、ダグの上を行くと思いますよ。結界で言えば、あなたは、ブラッドリーと同じ事が出来ると思います。きっと母親もそれに気付いているはずです。だからこそ、そのペンダントを作ったのでしょう」
(俺は魔術師としては優秀だったのか……)
きっと魔術を使えば、ミュアンの子だともバレるかもしれないと思ってミュアンはペンダントを作ったのではないか。ミュアンに話を聞きたい。もう魔術師の組織からは逃れられない。向こうにはエイブがいる。自分が魔術師だというのも知っていてミュアンとも出会ってしまった。それを組織の者に言えば、自分もミュアンも追ってが来る。
レオナールの協力ではなく、してもらう方になるだろう。だとしたら、ミュアンの情報が必要だ。自分になら話してくれるかもしれない。
ティモシーは、そう結論を出した。
「あの、俺、母さんに連絡をとって話を聞いてみます!」
「そうですか。ありがとう。お願いします」
「はい」
ティモシーは、そう約束し部屋に戻った。
「あなたはつくづく災難にあう方ですね」
「………」
(それ、俺のせいじゃない……)
レオナールは、大きなため息をついた。本来ならティモシーがつくはずのものだ。
「今回は焦りました。しかし、命が狙われているのに出歩くなど、彼女は何を考えていたのでしょうか」
「狙われているって知らなかったとか?」
ティモシーがボソッと返す。
「協定内容や態度から言って、少なくとも何かが起こっているのでしょう。大体皇女と側近のみなど、昔から交流のある国でないとありえませんので、よっぽど切羽詰まっているとしか考えられません。皇帝の身に何かあったか、これからそうなると予測される事態になっているか……」
「……あの、俺になんでそんな話を……」
襲われた時の事を聞くのかと思えば、全然違う話を聞かせられた。疑問に思ったのである。
「あなたに正直に話して頂きたいからです」
「正直にって何をでしょうか」
ティモシーは、生唾をごくりと飲み込む。
「エイブとの事です。先ほど言った事は本当です。エイブと彼女には繋がりがあります。ですが、彼女達が彼らを逃がした訳ではないでしょう。トンマーゾから命を狙われたのが証拠です。彼女は、ここにエイブがいる事は知らなかったと言っています。ですがエイブが彼女達が来る事を知っていた可能性はあります。思い出せませんか? 彼との会話を」
レオナールは、エイブとの夢の話を聞きたいと言っているとティモシーにも理解できたが、どんな話をしたかを覚えているのは一回だけだった。それはもう、話した内容だ。
「すみません。本当に覚えてないんです」
ティモシーは、俯いて答えた。
「そうですか」
「あの、俺とレオナール王子が王宮を出たのを見たようなんですが、どうして見られたってわかったんですか?」
「彼女はあなたの存在は知らなかったはずです。あなたの事を知ったのだとしたらあの時しかありません。そして、接触を図った。何か私の事を聞けると思ったのでしょう」
「なるほど」
ティモシーは、レオナールの推理に関心して頷く。
「彼女は何かを隠しています。そして、簡単に助けを求める事も出来ない状況なのでしょう。それが、魔術師の組織に関わる事だとしたら放ってはおけません」
彼女は一体自分から何を聞き出したかったのか。ティモシーは俯いて考えていた。
レオナール事には違いない。だがあの時、別に脅そうとしていたわけでもなさそうだった。内容は物騒な事ではないだろう。
「ブラッドリーの事ですが、彼にはあなたが魔術師だという事はバレてしまいました。ですが、今まで通り振る舞う様に指示してあります」
やっぱりバレていたとティモシーは溜息をつく。
「あの、イリステーナ皇女には……」
「気づかれておりませんよ」
「え! だってあんな近くで使ったのに!」
レオナールはジッとティモシーを見つめる。
「あなたは本当に自分の事がわかっていないのですね。大抵の者は、使われた方向はわかりますが場所はわかりません。彼女は、ブラッドリーが魔術師なのを知っています。ですので、彼が使ったと思っているようです」
ティモシーは、レオナールの言葉に驚いていた。自分は特別魔術の練習もしていないのに普通にわかる。ただ魔術の種類まではわからないだけだった。だけど他の人は、それすらわからないものだったと今知ったのである。
「あなたが本気で魔術を学べば、ダグの上を行くと思いますよ。結界で言えば、あなたは、ブラッドリーと同じ事が出来ると思います。きっと母親もそれに気付いているはずです。だからこそ、そのペンダントを作ったのでしょう」
(俺は魔術師としては優秀だったのか……)
きっと魔術を使えば、ミュアンの子だともバレるかもしれないと思ってミュアンはペンダントを作ったのではないか。ミュアンに話を聞きたい。もう魔術師の組織からは逃れられない。向こうにはエイブがいる。自分が魔術師だというのも知っていてミュアンとも出会ってしまった。それを組織の者に言えば、自分もミュアンも追ってが来る。
レオナールの協力ではなく、してもらう方になるだろう。だとしたら、ミュアンの情報が必要だ。自分になら話してくれるかもしれない。
ティモシーは、そう結論を出した。
「あの、俺、母さんに連絡をとって話を聞いてみます!」
「そうですか。ありがとう。お願いします」
「はい」
ティモシーは、そう約束し部屋に戻った。
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