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第九章 追われる者
第百話
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「では……。イリステーナ皇女は、このエクランド国と協定を結びたく来訪したと聞きました。その理由は、モゼレス皇帝の体調が思わしくなく、生存中に結んでおきたいとの事。これには間違いはありませんね」
「はい」
レオナールが確認をすると、イリステーナは頷いた。
「トンマーゾですが、あの場所で待ち構えていたという事は、後をつけられていた証拠です。ティモシー、彼はどなたを狙っていたのでしょうか?」
イリステーナに聞くとばかり思っていた質問が自分に振られ、本当の事を言ってもいいのだろうかとティモシーは動揺する。
「あ、あの、多分、イリステーナ皇女だと思います。トンマーゾさんは、私に殺せともいいましたし……」
だが隠した所で仕方がないので素直に話した。
「それはどういう事だ……」
グスターファスは問う。
「え? えっと……仲間になれと言われました……」
「ザイダだけではなく、ティモシーまでもか……」
ルーファスがポツリと呟く。
「あの……宜しいですか?」
ダグがそっと口を開いた。それにグスターファスが頷く。
「トンマーゾは、イリステーナ皇女が来ている事をどうやって知ったのでしょうか? 逃げる時にでも知られたのでしょうか? 一部の者しか知らなかったですよね?」
ダグの質問にグスターファスは、うむと頷く。
「おそらく、助けに来た仲間に聞いたのだろう」
「その事ですが、エイブはヴィルターヌ帝国の出身のようです。顔を見られたのかもしれません。ただ、それとすぐに命を狙う事とは結びつかないのです。彼らが王宮の近くに潜んでいた事から、偶然にイリステーナ皇女の姿を見つけて消しにかかったとは考えづらい。彼に与えられた命令と考えていいでしょう」
レオナールの言葉に皆、顔を曇らせる。もしそうならば、ヴィルターヌ帝国とエクランド国の協定を魔術師の組織は何らかの理由で阻止したいという事になる。しかも、協定を結ぼうとしている事がどこからか漏れている事にもなる。
そうなると内通者がいたとしてもエクランド国ではなく、ヴィルターヌ帝国にいる可能性も出て来る。
「困りましたな。協定内容からして阻止する内容ではないのだが……」
「陛下。宜しければ後で、イリステーナ皇女を交えその協定の内容をお教え願いたいの……」
「別に今お教えしても構いませんよ。グスターファス陛下が宜しいのであれば、私は構いません」
レオナールのお伺いを遮る様に、イリステーナは発言する。
「わかった。私もレオナール殿に力添えを頂きたい」
チラッとグスターファスは、ティモシーとダグを見た。これから聞く事は他言無用という事だろう。
「別に普通の協定です。私の国の魔術師とエクランド国の薬師とのトレードです」
「薬師と魔術師ですか……。エクランド国にとってメリットがあるように思えないのですが?」
レオナールがそう言うとイリステーナは淡々と答える。
「エクランド国はあなたの国と密かに協定を結んでいると聞き及んでおります。魔術師に対して寛容のようですので、こちらの国とも結んで頂きたくお願いに来ました。私達の国は、魔術師の国だとオープンにするつもりはありませんが、もし万が一戦争などがあった場合は協定に基づき全力で協力致しますという内容です」
レオナールは、明らかに怪訝な顔つきになる。
「私の国と協定を結んでいると噂されている国に戦争を吹っ掛ける国がいるとでも?」
「協定に盛り込んだだけですわ」
「逆ではないのか? 内容は相互だった。つまり、あなたの国が戦争になったら我が国からも応援を送らなければならない」
二人の言い争いにルーファスはそう進言した。
ルーファスの言っている通りとなると、いきなり協定の話を持って来たという事は、戦争になりそうな相手がいるという事になる。
「なるほど。あなたの国は危機迫っているという事でしょうか?」
「……いいえ」
レオナールの問いに、イリステーナは、一言だけで返した。
「では、何が目的でこのような協定を? 失礼ではありますが、こんな取って付けたような内容では協定は結ばないでしょう。……いえ、協定はダミーなのでしょう? 本当は何が目的でこの国に来たのです?」
「………」
その発言には、皆驚く。よほどの事がなければそんな事はしない。だが考えてみれば、命が狙われているのだから何かが起きていると考えるのが普通だ。協定を結ぼうとしたからではなく、助けを求めに来た。そう考えるのが妥当だ。
「わかりました。時間を差し上げます。元々私にではなく、陛下に求めに来たのでしょうから、内密に陛下にご相談しても私は構いません。ですが、相手は待ってはくれませんよ」
「………」
レオナールの言葉にイリステーナは、何も返さなかった。それが答えだ。レオナールの言っている事は、全てでなくとも合っているのだろう。
「協定の真偽は、明日以降話し合おう。イリステーナ殿もお疲れだろう。ゆっくり休んで考えてほしい」
グスターファスはそう締めくくると、立ち上がった。それに続きルーファスも立ち上がる。
「ティモシー、あなたには話があります。残りなさい」
立ち上がろうとした時、レオナールから声が掛かった。やっぱりそうなるのかと、ティモシーは頷いた。
ブラッドリーも出て行き、レオナールとティモシー二人になった。
「はい」
レオナールが確認をすると、イリステーナは頷いた。
「トンマーゾですが、あの場所で待ち構えていたという事は、後をつけられていた証拠です。ティモシー、彼はどなたを狙っていたのでしょうか?」
イリステーナに聞くとばかり思っていた質問が自分に振られ、本当の事を言ってもいいのだろうかとティモシーは動揺する。
「あ、あの、多分、イリステーナ皇女だと思います。トンマーゾさんは、私に殺せともいいましたし……」
だが隠した所で仕方がないので素直に話した。
「それはどういう事だ……」
グスターファスは問う。
「え? えっと……仲間になれと言われました……」
「ザイダだけではなく、ティモシーまでもか……」
ルーファスがポツリと呟く。
「あの……宜しいですか?」
ダグがそっと口を開いた。それにグスターファスが頷く。
「トンマーゾは、イリステーナ皇女が来ている事をどうやって知ったのでしょうか? 逃げる時にでも知られたのでしょうか? 一部の者しか知らなかったですよね?」
ダグの質問にグスターファスは、うむと頷く。
「おそらく、助けに来た仲間に聞いたのだろう」
「その事ですが、エイブはヴィルターヌ帝国の出身のようです。顔を見られたのかもしれません。ただ、それとすぐに命を狙う事とは結びつかないのです。彼らが王宮の近くに潜んでいた事から、偶然にイリステーナ皇女の姿を見つけて消しにかかったとは考えづらい。彼に与えられた命令と考えていいでしょう」
レオナールの言葉に皆、顔を曇らせる。もしそうならば、ヴィルターヌ帝国とエクランド国の協定を魔術師の組織は何らかの理由で阻止したいという事になる。しかも、協定を結ぼうとしている事がどこからか漏れている事にもなる。
そうなると内通者がいたとしてもエクランド国ではなく、ヴィルターヌ帝国にいる可能性も出て来る。
「困りましたな。協定内容からして阻止する内容ではないのだが……」
「陛下。宜しければ後で、イリステーナ皇女を交えその協定の内容をお教え願いたいの……」
「別に今お教えしても構いませんよ。グスターファス陛下が宜しいのであれば、私は構いません」
レオナールのお伺いを遮る様に、イリステーナは発言する。
「わかった。私もレオナール殿に力添えを頂きたい」
チラッとグスターファスは、ティモシーとダグを見た。これから聞く事は他言無用という事だろう。
「別に普通の協定です。私の国の魔術師とエクランド国の薬師とのトレードです」
「薬師と魔術師ですか……。エクランド国にとってメリットがあるように思えないのですが?」
レオナールがそう言うとイリステーナは淡々と答える。
「エクランド国はあなたの国と密かに協定を結んでいると聞き及んでおります。魔術師に対して寛容のようですので、こちらの国とも結んで頂きたくお願いに来ました。私達の国は、魔術師の国だとオープンにするつもりはありませんが、もし万が一戦争などがあった場合は協定に基づき全力で協力致しますという内容です」
レオナールは、明らかに怪訝な顔つきになる。
「私の国と協定を結んでいると噂されている国に戦争を吹っ掛ける国がいるとでも?」
「協定に盛り込んだだけですわ」
「逆ではないのか? 内容は相互だった。つまり、あなたの国が戦争になったら我が国からも応援を送らなければならない」
二人の言い争いにルーファスはそう進言した。
ルーファスの言っている通りとなると、いきなり協定の話を持って来たという事は、戦争になりそうな相手がいるという事になる。
「なるほど。あなたの国は危機迫っているという事でしょうか?」
「……いいえ」
レオナールの問いに、イリステーナは、一言だけで返した。
「では、何が目的でこのような協定を? 失礼ではありますが、こんな取って付けたような内容では協定は結ばないでしょう。……いえ、協定はダミーなのでしょう? 本当は何が目的でこの国に来たのです?」
「………」
その発言には、皆驚く。よほどの事がなければそんな事はしない。だが考えてみれば、命が狙われているのだから何かが起きていると考えるのが普通だ。協定を結ぼうとしたからではなく、助けを求めに来た。そう考えるのが妥当だ。
「わかりました。時間を差し上げます。元々私にではなく、陛下に求めに来たのでしょうから、内密に陛下にご相談しても私は構いません。ですが、相手は待ってはくれませんよ」
「………」
レオナールの言葉にイリステーナは、何も返さなかった。それが答えだ。レオナールの言っている事は、全てでなくとも合っているのだろう。
「協定の真偽は、明日以降話し合おう。イリステーナ殿もお疲れだろう。ゆっくり休んで考えてほしい」
グスターファスはそう締めくくると、立ち上がった。それに続きルーファスも立ち上がる。
「ティモシー、あなたには話があります。残りなさい」
立ち上がろうとした時、レオナールから声が掛かった。やっぱりそうなるのかと、ティモシーは頷いた。
ブラッドリーも出て行き、レオナールとティモシー二人になった。
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