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第九章 追われる者

第九十三話

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 「お座りなさい」

 レオナールに言われ、ストンと腰を下ろす。

 「話して下さい。覚えている範囲で宜しいので、夢の内容を話して下さい」
 「……エイブさんは、トンマーゾさんが助けを呼んだって。でも、エイブさんは足手まといだから殺されるかもって言っていて……。そこに母さんが現れて、エイブさんが母さんに、王宮内にまだ魔術師はいるって言って消えたんだ……」

 ティモシーは、素直に話した。結局話す事になったとため息をつく。

 「彼の夢は初めてですか? 私がいなくなってから何度か見ましたか?」
 「母さんと同じ事聞いているし……」

 ティモシーはボソッと呟いた。
 レオナールはティモシーの呟きを聞くと、頷き立ち上がった。

 「あなたの母親に聞いた方が早そうですね。案内なさいなさい。まだ、いるのでしょう?」
 「え! 何故ですか!」
 「別に危害を加えるつもりはありません。彼女は、あなたの夢に出来てたのでしょう? つまり干渉してきた。話を聞きたいだけです」
 「わかりました……」

 ティモシーは、自分が案内しなくとも探し出して接触するだろうと思い立ち上がる。
 部屋を出ると通路には、カミーユが立っている。

 「私達はこれから、王宮内を周ります。あなたは、ここで待機していてください」
 「はい」

 カミーユが頷くと、レオナールは歩き出す。何度か曲がると壁際に行く。そこは辺りから死角になっていた。
 カチャリと音がしたと思ったら、壁が消えた。いや、ドアになっていた。

 「………」

 どんだけ、秘密通路があるんだ。しかも、他国の者が使うってどうなっているんだ。と、ティモシーは言いたかった。

 (ホント、ここ誰の為に作ったんだよ)

 これが、レオナールの為だとしたら彼はかなり特別な人物なのだろう。
 階段をどんどんと下りて行く。そして、通路を真っ直ぐ進む。
 何となく、王宮の外までありそうな気がする距離だ。

 (これ、どこと繋がっているんだ?)

 その答えはすぐにわかった。
 階段を上がると、ドアがあり二人は外に出た。――王宮を囲む城壁の外だ。

 (ありえない。これ、他国の人が知っていていいものなのか?)

 ティモシーが驚いていると、何気なしにレオナールは施錠をする。

 「え! 鍵まで!」

 ――持っているのか! そう言いたかったのだが……

 「もし万が一という事がありますからね」

 ここから侵入されるかもしれない。とレオナールは言ったのである。だが、鍵を所持しているは、他国の王子だ。彼が言う台詞ではない。
 ルーファスがこっそり城を抜け出し、街に出るのならわかるが、他国の王子がするのはおかしいと、ティモシーでも思うが言わないないでおく事にした。

 「で、どちらですか?」
 「こっちです」

 ティモシーは、ミュアンが宿泊している宿にレオナールを案内した。



 宿に着くと、ティモシーはミュアンを呼び出してもらう。すぐに彼女は嬉しそうに現れるが、一人ではないと気づくと怪訝な顔をする。

 「ティモシー……。この人は?」
 「えっと……」
 「ここでは何ですから、お部屋でお話を致しませんか?」

 ティモシーは戸惑っていると、レオナールはそう提案する。ミュアンは頷き二人は、彼女に着いて行った。
 部屋に入るとレオナールは、失礼しますと角に立つ。そして驚く事を始めた!
 両手を肩の高さに前にVに広げ突き出すと魔力を感じた。トライアングルである。
 真っ直ぐ伸びた手の先の部屋の壁まで魔力で直線が描かれ、片方の先からもう片方の先までまた直線が描かれる。
 それが出来上がると中心に進み結界を張った。
 あまりにも鮮やかで速やかに行われた為、二人はただ見ているだけだった。

 「さぁ、結界の中へどうぞ。大丈夫です。これは普通なら気づかれない行為です」
 「あ、あなたは何者なのです!」

 レオナールの言葉にハッとして、ミュアンは問う。

 「隠しても仕方がありませんので、正直にお答え致しましょう。私は、ハルフォード国の第一王子レオナールと申します」

 レオナールはニッコリと微笑んだ。
 ティモシーは、着いて早々の暴露に戸惑うだけだった。
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