93 / 192
第九章 追われる者
第九十三話
しおりを挟む
「お座りなさい」
レオナールに言われ、ストンと腰を下ろす。
「話して下さい。覚えている範囲で宜しいので、夢の内容を話して下さい」
「……エイブさんは、トンマーゾさんが助けを呼んだって。でも、エイブさんは足手まといだから殺されるかもって言っていて……。そこに母さんが現れて、エイブさんが母さんに、王宮内にまだ魔術師はいるって言って消えたんだ……」
ティモシーは、素直に話した。結局話す事になったとため息をつく。
「彼の夢は初めてですか? 私がいなくなってから何度か見ましたか?」
「母さんと同じ事聞いているし……」
ティモシーはボソッと呟いた。
レオナールはティモシーの呟きを聞くと、頷き立ち上がった。
「あなたの母親に聞いた方が早そうですね。案内なさいなさい。まだ、いるのでしょう?」
「え! 何故ですか!」
「別に危害を加えるつもりはありません。彼女は、あなたの夢に出来てたのでしょう? つまり干渉してきた。話を聞きたいだけです」
「わかりました……」
ティモシーは、自分が案内しなくとも探し出して接触するだろうと思い立ち上がる。
部屋を出ると通路には、カミーユが立っている。
「私達はこれから、王宮内を周ります。あなたは、ここで待機していてください」
「はい」
カミーユが頷くと、レオナールは歩き出す。何度か曲がると壁際に行く。そこは辺りから死角になっていた。
カチャリと音がしたと思ったら、壁が消えた。いや、ドアになっていた。
「………」
どんだけ、秘密通路があるんだ。しかも、他国の者が使うってどうなっているんだ。と、ティモシーは言いたかった。
(ホント、ここ誰の為に作ったんだよ)
これが、レオナールの為だとしたら彼はかなり特別な人物なのだろう。
階段をどんどんと下りて行く。そして、通路を真っ直ぐ進む。
何となく、王宮の外までありそうな気がする距離だ。
(これ、どこと繋がっているんだ?)
その答えはすぐにわかった。
階段を上がると、ドアがあり二人は外に出た。――王宮を囲む城壁の外だ。
(ありえない。これ、他国の人が知っていていいものなのか?)
ティモシーが驚いていると、何気なしにレオナールは施錠をする。
「え! 鍵まで!」
――持っているのか! そう言いたかったのだが……
「もし万が一という事がありますからね」
ここから侵入されるかもしれない。とレオナールは言ったのである。だが、鍵を所持しているは、他国の王子だ。彼が言う台詞ではない。
ルーファスがこっそり城を抜け出し、街に出るのならわかるが、他国の王子がするのはおかしいと、ティモシーでも思うが言わないないでおく事にした。
「で、どちらですか?」
「こっちです」
ティモシーは、ミュアンが宿泊している宿にレオナールを案内した。
宿に着くと、ティモシーはミュアンを呼び出してもらう。すぐに彼女は嬉しそうに現れるが、一人ではないと気づくと怪訝な顔をする。
「ティモシー……。この人は?」
「えっと……」
「ここでは何ですから、お部屋でお話を致しませんか?」
ティモシーは戸惑っていると、レオナールはそう提案する。ミュアンは頷き二人は、彼女に着いて行った。
部屋に入るとレオナールは、失礼しますと角に立つ。そして驚く事を始めた!
両手を肩の高さに前にVに広げ突き出すと魔力を感じた。トライアングルである。
真っ直ぐ伸びた手の先の部屋の壁まで魔力で直線が描かれ、片方の先からもう片方の先までまた直線が描かれる。
それが出来上がると中心に進み結界を張った。
あまりにも鮮やかで速やかに行われた為、二人はただ見ているだけだった。
「さぁ、結界の中へどうぞ。大丈夫です。これは普通なら気づかれない行為です」
「あ、あなたは何者なのです!」
レオナールの言葉にハッとして、ミュアンは問う。
「隠しても仕方がありませんので、正直にお答え致しましょう。私は、ハルフォード国の第一王子レオナールと申します」
レオナールはニッコリと微笑んだ。
ティモシーは、着いて早々の暴露に戸惑うだけだった。
レオナールに言われ、ストンと腰を下ろす。
「話して下さい。覚えている範囲で宜しいので、夢の内容を話して下さい」
「……エイブさんは、トンマーゾさんが助けを呼んだって。でも、エイブさんは足手まといだから殺されるかもって言っていて……。そこに母さんが現れて、エイブさんが母さんに、王宮内にまだ魔術師はいるって言って消えたんだ……」
ティモシーは、素直に話した。結局話す事になったとため息をつく。
「彼の夢は初めてですか? 私がいなくなってから何度か見ましたか?」
「母さんと同じ事聞いているし……」
ティモシーはボソッと呟いた。
レオナールはティモシーの呟きを聞くと、頷き立ち上がった。
「あなたの母親に聞いた方が早そうですね。案内なさいなさい。まだ、いるのでしょう?」
「え! 何故ですか!」
「別に危害を加えるつもりはありません。彼女は、あなたの夢に出来てたのでしょう? つまり干渉してきた。話を聞きたいだけです」
「わかりました……」
ティモシーは、自分が案内しなくとも探し出して接触するだろうと思い立ち上がる。
部屋を出ると通路には、カミーユが立っている。
「私達はこれから、王宮内を周ります。あなたは、ここで待機していてください」
「はい」
カミーユが頷くと、レオナールは歩き出す。何度か曲がると壁際に行く。そこは辺りから死角になっていた。
カチャリと音がしたと思ったら、壁が消えた。いや、ドアになっていた。
「………」
どんだけ、秘密通路があるんだ。しかも、他国の者が使うってどうなっているんだ。と、ティモシーは言いたかった。
(ホント、ここ誰の為に作ったんだよ)
これが、レオナールの為だとしたら彼はかなり特別な人物なのだろう。
階段をどんどんと下りて行く。そして、通路を真っ直ぐ進む。
何となく、王宮の外までありそうな気がする距離だ。
(これ、どこと繋がっているんだ?)
その答えはすぐにわかった。
階段を上がると、ドアがあり二人は外に出た。――王宮を囲む城壁の外だ。
(ありえない。これ、他国の人が知っていていいものなのか?)
ティモシーが驚いていると、何気なしにレオナールは施錠をする。
「え! 鍵まで!」
――持っているのか! そう言いたかったのだが……
「もし万が一という事がありますからね」
ここから侵入されるかもしれない。とレオナールは言ったのである。だが、鍵を所持しているは、他国の王子だ。彼が言う台詞ではない。
ルーファスがこっそり城を抜け出し、街に出るのならわかるが、他国の王子がするのはおかしいと、ティモシーでも思うが言わないないでおく事にした。
「で、どちらですか?」
「こっちです」
ティモシーは、ミュアンが宿泊している宿にレオナールを案内した。
宿に着くと、ティモシーはミュアンを呼び出してもらう。すぐに彼女は嬉しそうに現れるが、一人ではないと気づくと怪訝な顔をする。
「ティモシー……。この人は?」
「えっと……」
「ここでは何ですから、お部屋でお話を致しませんか?」
ティモシーは戸惑っていると、レオナールはそう提案する。ミュアンは頷き二人は、彼女に着いて行った。
部屋に入るとレオナールは、失礼しますと角に立つ。そして驚く事を始めた!
両手を肩の高さに前にVに広げ突き出すと魔力を感じた。トライアングルである。
真っ直ぐ伸びた手の先の部屋の壁まで魔力で直線が描かれ、片方の先からもう片方の先までまた直線が描かれる。
それが出来上がると中心に進み結界を張った。
あまりにも鮮やかで速やかに行われた為、二人はただ見ているだけだった。
「さぁ、結界の中へどうぞ。大丈夫です。これは普通なら気づかれない行為です」
「あ、あなたは何者なのです!」
レオナールの言葉にハッとして、ミュアンは問う。
「隠しても仕方がありませんので、正直にお答え致しましょう。私は、ハルフォード国の第一王子レオナールと申します」
レオナールはニッコリと微笑んだ。
ティモシーは、着いて早々の暴露に戸惑うだけだった。
0
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ネカマ姫のチート転生譚
八虚空
ファンタジー
朝、起きたら女になってた。チートも貰ったけど、大器晩成すぎて先に寿命が来るわ!
何より、ちゃんと異世界に送ってくれよ。現代社会でチート転生者とか浮くだろ!
くそ、仕方ない。せめて道連れを増やして護身を完成させねば(使命感
※Vtuber活動が作中に結構な割合で出ます
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる