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第八章 惑わす声

第八十九話

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 翌日、目が覚めたティモシーは、心臓のバクバクが止まらなかった。
 覚えていたのだ。エイブが殺されるかもしれないと言った事も。途中からミュアンが乱入した事も。

 (夢だ大丈夫……)

 夢のはずなのに、現実に会っていたような感覚。牢にまで確認しに行きたいとまでティモシーは思った。
 隣のベットを見ると、ランフレッドが寝ている。戻って来ていた。

 (言った方がいいのだろうか?)

 夢の内容を話した方がいいだろうかとティモシーは悩む。

 (そうだ、母さんが……)

 会いに来ると言っていた。夢でなければ会いに来る。ティモシーはそう思い、そわそわしていた。
 トントントン。
 ドアをノックする音にティモシーは、ドアに駆け寄り開けるとブラッドリーが立っている。

 「おはよう。悪いがランフレッドを起こしてくれないか」
 「……おはようございます。今、起こします」

 違った。呼ばれたのはランフレッドだった。ティモシーは、彼を揺り起こす。

 「ブラッドリーさんが呼んでるけど」
 「うん? ブラッドリーさん?」

 ランフレッドは飛び起きた。

 「ルーに何かありましたか!」

 大慌てでブラッドリーの元に駆け寄った。

 「いや、そうではない。ある客人が来た。……その寝癖を直してからこい」

 そう伝えると、ブラッドリーは去って行く。ランフレッドは、手を頭にやると髪が立っていた。

 「あ、ティモシーおはよう。俺、身支度したら行くから。……何か困った事あったら、遠慮せずに俺に言えよ」
 「あ、うん……」

 前は、ブラッドリーに言えと言っていたのにと思うも頷く。
 しばらくして、ランフレッドは部屋を出て行った。

 「はぁ。別に夢の方がいいじゃん。エイブさん、死なないんだし……」

 気が抜けてティモシーは、ベットの上にポスンと座った。

 「はぁ。調合室に行こう」

 ティモシーが部屋を出ると、ダグもちょうど部屋から出て来た。

 「おはよう」
 「おはようございます」

 二人は、調合室へ向かう。

 「そう言えば、昨日どうだった?」
 「うん。ごはん美味しかった」
 「あははは。そりゃよかったな」

 他愛もない話をして歩くと調合室の前に着いた。
 ダグが調合室のドアに手を掛けた時、後ろから声が掛かる。

 「あの、ティモシーさんですか?」

 二人が振り向くと兵士が立っていた。

 「あ、はい……」
 「お母さんが訪ねて来ています」

 兵士の言葉に、ティモシーはハッとする。

 (母さんが来た!)

 ティモシーは、礼を言ってダッシュでミュアンのも元へ向かう。

 「よほど、母親に会うの嬉しいのですね。しかし、美人の親子ですね……」
 「へえ、母親似か……。見てみたいな。こっそり……」
 「何言ってるのよ!」

 いつの間にか、ドアを開けてベネットが立っていた。

 「あ、では……」

 兵士は慌てて、持ち場に戻って行く。
 ダグも挨拶をして、残念そうに調合室に入って行った。
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