【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第八章 惑わす声

第八十四話

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 「この人が魔術師だという事は確実よ! あの時否定しなかった! ティモシーも知っているわ! って言うか、皆知っているのよね? 脅されているの?」

 ザイダの言葉に困ったと、グスターファスとルーファスは顔を見合わせる。適当な事を言ってももう誤魔化せない。

 「あの、一ついいでしょうか?」

 ダグは控え目に、声を上げる。

 「なんだ?」
 「ザイダさんって、もしかしてティモシーに復讐しようとしたのではなく、ブラッドリーさんに復讐しようとしたのですか?」
 「そうよ!」

 ダグの質問にグスターファスではなく、ザイダが答えた。
 彼は、エイブからティモシーを助け出したのは、ブラッドリーだとは聞いていた。だが、エイブがどうなったかは聞いてはいない。しかし、彼女が復讐をしようと思う程の事が、エイブの身に起きていたという考えに至る。助けだしたぐらいでは、ここまで恨みは積もらないだろう。

 「あれ? 全部知っているんじゃ……」

 ランフレッドは、ダグも事の成り行きを知っていると思い込んでいた。だが、聞いたのは道具アイテム倉庫に閉じ込められた事までだった。

 「じゃ、あの噂の半分はあっていた?」

 ダグは、ボソッと呟いた。
 ランフレッドにではなく、ブラッドリーに半殺しの目に合っていた。そう気が付く。

 「そうだよ。……予定通りだったの? エイブさんが私をターゲットにする事も……あの倉庫にあてがわれるのも! ザイダさんが何かアクションを起こす事も!」

 立ち上がり、隣にるブラッドリーにティモシーは言った! それにはブラッドリーも面食らう。

 「な、何を。たまたまそうなっただけだ」
 「たまたま? 自分が抜ければ誰かがあてがわれる。それをわかっていてよく言うよ!」

 シーンと静まり返る。ティモシーの言いたい事が皆わかったからである。
 ジッとブラッドリーは、ティモシーを見据えた。一体誰が彼に口添えをしたのか。ブラッドリーに怯える様子は伺える事もあったが、今までそう思っている素振りはなかった。
 ブラッドリーだけではない。ザイダを除く全員がそう思った。

 「お前、何があった? 誰に言われたんだ? それ……」

 ダグはそう言いながら立ち上がる。

 「誰にも別に言われてない」

 自分が利用されたとしたら、そういう事だろうと思ったのだ。

 「そうみたいね。エイブさんを嵌める為にティモシーを利用したのね!」
 ザイダはそう言い放った。どうしてエイブを嵌めなくてはいけなかったか。などという事は、彼女には関係なかった。
 「二人共落ち着きなさい」

 グスターファスは、二人をなだめるように言う。

 「陛下は、平等ではないのですね。今お聞きしましたよね? トンマーゾさんをもブラッドリーが嵌めた! その可能性があるのに、彼の話は聞かないのですか!」
 「わかった。彼にも話を聞こう」
 「え! 父上!」

 ため息をしつつ、ルーファスに耳打ちをする。

 「真相をしる為には必要だ。それに、ダグもいる」
 「それはそうですが……」

 不安は残るが、トンマーゾは、マジックアイテムで魔術を封じている。滅多な事は起こらないだろう。それがグスターファスの考えだ。

 「悪いが、ダグとランフレッドは、ブラッドリーと一緒にトンマーゾをここに連れて来てほしい」

 グスターファスの命令に、三人は頷き部屋を出て行った。
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