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第七章 彼と彼女の復讐劇
第七十二話
しおりを挟む ティモシーはドアをノックし調合室のドアを開けた。
「あの、失礼します」
お辞儀をして顔を上げると、先ほどの女性以外に二人の男性がいた。
「ぶつかった相手ってどっちだ?」
「女のひと」
ダグは小さな声でティモシーに聞き、答えを聞いて驚く。相手は男だと思っていた。だから『どっちだ』と聞いたのである。
「あら結局助っ人呼んだの?」
「え? いや……」
「バッタリ会ったんです。許可も取っていないようでしたので、一緒についてきました。オーギュストさんには許可を頂いたのでしょうか?」
気の強そうな女性だし先輩なので、ダグは努めて丁寧に聞くが、女性はムッとした顔つきになった。
「なぜ私が許可を取りに行かなくてはいけないの? 調合すると言い出したのはその子よ? 自分でいくものでしょう普通は」
「わかりました。では、許可を取りに行って来ます。で、何を調合……」
「もう言いわ。三人でやった方が早そうだし、じゃまだから出て行って!」
女性の一言で二人は部屋から追い出されてしまった。
「……取りあえず、オーギュストさんには言っておけよ。ビン割った事」
「うん。わかった」
そう言って二人は歩き出した。ダグは第一倉庫に戻り、ティモシーはオーギュストを探す事にする。
「監察官室……」
そういう部屋をティモシーは見つけた。よく考えれば、ダグに聞けば早かったかもしれないとティモシーは思った。彼なら知っていただろう。
ティモシーはドアをノックすると、ドアが開いた。
ビンゴだった。オーギュストが出来てきたのである。
「おや? どうしました?」
「よかった。今朝、女性にぶつかってビンを割ってしまって……。えっと、その報告に来ました。申し訳ありません」
ティモシーは、取りあえず頭を下げた。
「そうですか。で、相手の名前は? 何のビンだったか聞いてますか?」
「あ!」
また名前を問われ、結局聞いていない事に気がついた。声を上げたティモシーに、オーギュストは眉を顰める。何となく察しがついたのである。
「えっと……。たぶん、第八調合室の女性の人だと思います」
その部屋を使っていたのでそれで間違いはないだろう。だが、女性が一人とは限らない。
「ザイダですかね……」
オーギュストは、ぼそりと呟いた。女性は一人だけのようだ。
「わかりました。聞いておきます。ティモシー、あなたは休養中なのですから大人しく部屋にいて下さい」
「はい……」
オーギュストにビシッと注意され、元気なく返事をして部屋へ向かった。
「ティモシー」
今日はついてないとティモシーは歩いていると、後ろから声が掛かった。声は女性だ。ベネットかと思い振り向くが、相手はさっきの女性だった。
「え? ザイダさん?」
「あら? 私の名前を知っているという事は、ちゃんと報告は入れたみたいね」
「あ、はい」
ザイダはフンと鼻を鳴らした。
「しおらしくして見せたって、私には効かないわよ。エイブさんにもそうしたんでしょう?」
ティモシーは、突然出て来た名前に驚く。
「当たりかしら? あなたみたいなガキになびくわけないものね? あなたのせいで彼、王宮追い出されたのよ?」
噂は聞いているだろうが、ティモシーの方が悪者のような言い方だ。
(なんでエイブさんの話になってるんだ?)
「なぜここで、エイブさんが出てくるんだよ……」
「それが、あなたの本性なのかしら? ガサツね!」
彼女はどうも、ティモシーを目の敵にしているようだ。ティモシーでもそれはわかった。
(男なんだし、当たり前だろう)
そう思うも何とか、口にも顔にも出さずに頭を下げる。
「もう戻るので失礼します」
「何を言ってるのよ。ちゃんと責任はとりなさいよ」
驚いてティモシーは顔を上げた。
(一体どうすれって言うんだよ!)
なぜかザイダはにやりとする。
「さっきの人がね、道具倉庫のお手伝いをしてほしいそうよ。手伝いに行ってあげてよ。それでチャラにしてあげるわ」
「え? 調合は?」
三人でやらなくて間に合うのだろうかと驚く。
「ブラッドリーさんに聞いたら、他の人が作ったのがあったみたいなの。今日はそれで間に合いそうだから、一人でやる事にしたわ。着いてきなさい」
説明をすると、さっさとザイダは歩き出す。迷うもティモシーはついて行った。無視しても面倒そうだからである。
「あの、失礼します」
お辞儀をして顔を上げると、先ほどの女性以外に二人の男性がいた。
「ぶつかった相手ってどっちだ?」
「女のひと」
ダグは小さな声でティモシーに聞き、答えを聞いて驚く。相手は男だと思っていた。だから『どっちだ』と聞いたのである。
「あら結局助っ人呼んだの?」
「え? いや……」
「バッタリ会ったんです。許可も取っていないようでしたので、一緒についてきました。オーギュストさんには許可を頂いたのでしょうか?」
気の強そうな女性だし先輩なので、ダグは努めて丁寧に聞くが、女性はムッとした顔つきになった。
「なぜ私が許可を取りに行かなくてはいけないの? 調合すると言い出したのはその子よ? 自分でいくものでしょう普通は」
「わかりました。では、許可を取りに行って来ます。で、何を調合……」
「もう言いわ。三人でやった方が早そうだし、じゃまだから出て行って!」
女性の一言で二人は部屋から追い出されてしまった。
「……取りあえず、オーギュストさんには言っておけよ。ビン割った事」
「うん。わかった」
そう言って二人は歩き出した。ダグは第一倉庫に戻り、ティモシーはオーギュストを探す事にする。
「監察官室……」
そういう部屋をティモシーは見つけた。よく考えれば、ダグに聞けば早かったかもしれないとティモシーは思った。彼なら知っていただろう。
ティモシーはドアをノックすると、ドアが開いた。
ビンゴだった。オーギュストが出来てきたのである。
「おや? どうしました?」
「よかった。今朝、女性にぶつかってビンを割ってしまって……。えっと、その報告に来ました。申し訳ありません」
ティモシーは、取りあえず頭を下げた。
「そうですか。で、相手の名前は? 何のビンだったか聞いてますか?」
「あ!」
また名前を問われ、結局聞いていない事に気がついた。声を上げたティモシーに、オーギュストは眉を顰める。何となく察しがついたのである。
「えっと……。たぶん、第八調合室の女性の人だと思います」
その部屋を使っていたのでそれで間違いはないだろう。だが、女性が一人とは限らない。
「ザイダですかね……」
オーギュストは、ぼそりと呟いた。女性は一人だけのようだ。
「わかりました。聞いておきます。ティモシー、あなたは休養中なのですから大人しく部屋にいて下さい」
「はい……」
オーギュストにビシッと注意され、元気なく返事をして部屋へ向かった。
「ティモシー」
今日はついてないとティモシーは歩いていると、後ろから声が掛かった。声は女性だ。ベネットかと思い振り向くが、相手はさっきの女性だった。
「え? ザイダさん?」
「あら? 私の名前を知っているという事は、ちゃんと報告は入れたみたいね」
「あ、はい」
ザイダはフンと鼻を鳴らした。
「しおらしくして見せたって、私には効かないわよ。エイブさんにもそうしたんでしょう?」
ティモシーは、突然出て来た名前に驚く。
「当たりかしら? あなたみたいなガキになびくわけないものね? あなたのせいで彼、王宮追い出されたのよ?」
噂は聞いているだろうが、ティモシーの方が悪者のような言い方だ。
(なんでエイブさんの話になってるんだ?)
「なぜここで、エイブさんが出てくるんだよ……」
「それが、あなたの本性なのかしら? ガサツね!」
彼女はどうも、ティモシーを目の敵にしているようだ。ティモシーでもそれはわかった。
(男なんだし、当たり前だろう)
そう思うも何とか、口にも顔にも出さずに頭を下げる。
「もう戻るので失礼します」
「何を言ってるのよ。ちゃんと責任はとりなさいよ」
驚いてティモシーは顔を上げた。
(一体どうすれって言うんだよ!)
なぜかザイダはにやりとする。
「さっきの人がね、道具倉庫のお手伝いをしてほしいそうよ。手伝いに行ってあげてよ。それでチャラにしてあげるわ」
「え? 調合は?」
三人でやらなくて間に合うのだろうかと驚く。
「ブラッドリーさんに聞いたら、他の人が作ったのがあったみたいなの。今日はそれで間に合いそうだから、一人でやる事にしたわ。着いてきなさい」
説明をすると、さっさとザイダは歩き出す。迷うもティモシーはついて行った。無視しても面倒そうだからである。
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