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第七章 彼と彼女の復讐劇
第七十一話
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ティモシーは、呼ぶ声で覚醒した。
目の前には、ランフレッドの心配そうな顔。寝ているのは、王宮の部屋のベットの上。それを確認すると、ティモシーはホッとする。
「夢だった。よかった」
「お前うなされていたぞ」
ランフレッドが心配そうに言うと、大丈夫と頷きティモシーは体を起こす。体中たっぷりと汗をかいていた。
「ほら、水」
「ありがとう」
ランフレッドから受け取った水をティモシーは一気に飲み干す。
「で、どんな夢見たんだ?」
そう問われティモシーは首をひねった。
(あれ? なんか怖い夢だったはず……。起きた時は覚えていたよな?)
「えーと。そうだ! エイブさんが……。ダメだ、忘れちゃった……」
「そ、そうか。まあ、嫌な夢みたいだし。無理して思い出さなくてもいいんじゃないか?」
エイブと聞いてランフレッドはそう言ったのである。内容など聞かなくとも彼が夢に出て来ただけでうなされるだろうと。
「あれ? もう交代なのか?」
ランフレッドは、腰に剣を下げていた。
「あぁ。もう六時になる。今日は夜までだから。何かあったらブラッドリーさんに言えよ」
ティモシーは、こくんと頷いた。
「いってらっしゃい」
「おう! 行ってくるわ」
ティモシーはランフレッドを見送った後、寝る気が起きず湯を浴びる事にした。
朝七時頃は、まだ王宮内も静かだった。ティモシーは、何となく気分転換がしたくなり、王宮内をうろついていた。
帰りは遅くとも二十時には薬師達は帰っていた。出勤している人数も半分なので、少しずつ色々滞り始めていた。なので朝六時出勤の者もいた。
何人かとすれ違うと、皆ティモシーに振り帰った。ティモシーは時の人だ。エイブの件もそうだが、今回の拉致未遂事件は衝撃的だった。何より薬師達自身にも関係がある話であり、すでに影響が出ている。
別にティモシーが悪いわけでない。だが、ティモシーを知らない者でもその容姿ですぐにわかる。(見た目)美少女! どうしても目立ってしまうのである。
(なんか気分転換にならないや)
外に出たい。そう思うも出て何かあれば大変である。その為に王宮に寝泊りしているというのに。
「きゃ!」
「あ、ごめん……」
ガッシャン!
ボーっとしていたせいなのか、すれ違いざまにぶつかってしまい相手が持っていたビンが落下し割れてしまった。勿論中身は入っていた。それは調合した物だったのだろうがもう使えない。
「ちょっとどうするのよ!」
女性だった。軽くウエーブがかかった肩よりちょっと長い藤紫色の髪。大人し気に見えるが、気が強そうだ。
「ごめんなさい!」
ティモシーは素直に謝った。深く頭を下げる。
「わかってる? 今、人が少ないの! これ、今日納めるものよ! ホントあなたは迷惑な人だわ!」
そこまで言わなくてもと思うも、ぶつかって落としてしまった責任は、自分にもあるとティモシーは思い願い出る事にする。
「あの調合手伝います! それで許して下さい」
ティモシーは、大抵な事なら出来る。やったことがないモノでも順序を教えてもらえれば出来る自信もあった。
「はぁ? 何言ってるのよ! あなたに出来る訳ないでしょ!」
「やってみないとわからないだろう!」
つい相手の言葉に反感して男言葉で返してしまい、ティモシーはハッとする。
「あ、えっと……」
「そう。そこまで言うのならやってもらいましょう」
彼女はティモシーを睨みそう返して来た。そして、片づけをしたら第八調合室に来るように言われ、その場に置いて行かれたのである。
(片付けろって言われてもなぁ。調合室空いてるかな?)
片付ける為の道具が他にどこにあるか、ティモシーは知らなかった。
「何してるんだ? そんな所で……」
ポツンと割れたビンをどうしたらいいかと眺めていたら、後ろから声が掛かり振り向くとダグが立っていた。
「えっと……おはようございます」
「あぁ、おはよう……」
ティモシーが見つめていた場所をダグも見て驚く。
「どうしたそれ……」
「今さっき、人とぶつかって割れちゃったんだけど……。片付けておくように言われて。でも、道具がどこにあるのか……」
朝っぱらから何をしているのだとダグは溜息をつく。
ダグは第一倉庫から道具を持って来て、割れたビンを片付ける。
「ありがとう……」
「で、相手はどうしたんだ? また、作りに戻ったのか?」
「うん。先に行ってるって」
「先に?」
ティモシーの返事にダグは驚いた。それは、ティモシーが手伝う事になるからである。普通許可なく作る事は規約違反である。ぶつかった相手はまだいいとして、ティモシーは許可を経なくてはならない。
「まてまて。オーギュストさんには許可取ったか?」
「許可? でもさっきの人がいいって……」
「相手って誰だよ」
そう聞かれてティモシーは、相手の名前を聞いていない事に気が付いた。
「……名前聞いてないや」
「お前なぁ。俺も一緒に行くからちょっと待ってろ!」
ダグは朝から本日二回目の大きなため息をついてそう言った。
その後二人は、第八調合室に向かった。
目の前には、ランフレッドの心配そうな顔。寝ているのは、王宮の部屋のベットの上。それを確認すると、ティモシーはホッとする。
「夢だった。よかった」
「お前うなされていたぞ」
ランフレッドが心配そうに言うと、大丈夫と頷きティモシーは体を起こす。体中たっぷりと汗をかいていた。
「ほら、水」
「ありがとう」
ランフレッドから受け取った水をティモシーは一気に飲み干す。
「で、どんな夢見たんだ?」
そう問われティモシーは首をひねった。
(あれ? なんか怖い夢だったはず……。起きた時は覚えていたよな?)
「えーと。そうだ! エイブさんが……。ダメだ、忘れちゃった……」
「そ、そうか。まあ、嫌な夢みたいだし。無理して思い出さなくてもいいんじゃないか?」
エイブと聞いてランフレッドはそう言ったのである。内容など聞かなくとも彼が夢に出て来ただけでうなされるだろうと。
「あれ? もう交代なのか?」
ランフレッドは、腰に剣を下げていた。
「あぁ。もう六時になる。今日は夜までだから。何かあったらブラッドリーさんに言えよ」
ティモシーは、こくんと頷いた。
「いってらっしゃい」
「おう! 行ってくるわ」
ティモシーはランフレッドを見送った後、寝る気が起きず湯を浴びる事にした。
朝七時頃は、まだ王宮内も静かだった。ティモシーは、何となく気分転換がしたくなり、王宮内をうろついていた。
帰りは遅くとも二十時には薬師達は帰っていた。出勤している人数も半分なので、少しずつ色々滞り始めていた。なので朝六時出勤の者もいた。
何人かとすれ違うと、皆ティモシーに振り帰った。ティモシーは時の人だ。エイブの件もそうだが、今回の拉致未遂事件は衝撃的だった。何より薬師達自身にも関係がある話であり、すでに影響が出ている。
別にティモシーが悪いわけでない。だが、ティモシーを知らない者でもその容姿ですぐにわかる。(見た目)美少女! どうしても目立ってしまうのである。
(なんか気分転換にならないや)
外に出たい。そう思うも出て何かあれば大変である。その為に王宮に寝泊りしているというのに。
「きゃ!」
「あ、ごめん……」
ガッシャン!
ボーっとしていたせいなのか、すれ違いざまにぶつかってしまい相手が持っていたビンが落下し割れてしまった。勿論中身は入っていた。それは調合した物だったのだろうがもう使えない。
「ちょっとどうするのよ!」
女性だった。軽くウエーブがかかった肩よりちょっと長い藤紫色の髪。大人し気に見えるが、気が強そうだ。
「ごめんなさい!」
ティモシーは素直に謝った。深く頭を下げる。
「わかってる? 今、人が少ないの! これ、今日納めるものよ! ホントあなたは迷惑な人だわ!」
そこまで言わなくてもと思うも、ぶつかって落としてしまった責任は、自分にもあるとティモシーは思い願い出る事にする。
「あの調合手伝います! それで許して下さい」
ティモシーは、大抵な事なら出来る。やったことがないモノでも順序を教えてもらえれば出来る自信もあった。
「はぁ? 何言ってるのよ! あなたに出来る訳ないでしょ!」
「やってみないとわからないだろう!」
つい相手の言葉に反感して男言葉で返してしまい、ティモシーはハッとする。
「あ、えっと……」
「そう。そこまで言うのならやってもらいましょう」
彼女はティモシーを睨みそう返して来た。そして、片づけをしたら第八調合室に来るように言われ、その場に置いて行かれたのである。
(片付けろって言われてもなぁ。調合室空いてるかな?)
片付ける為の道具が他にどこにあるか、ティモシーは知らなかった。
「何してるんだ? そんな所で……」
ポツンと割れたビンをどうしたらいいかと眺めていたら、後ろから声が掛かり振り向くとダグが立っていた。
「えっと……おはようございます」
「あぁ、おはよう……」
ティモシーが見つめていた場所をダグも見て驚く。
「どうしたそれ……」
「今さっき、人とぶつかって割れちゃったんだけど……。片付けておくように言われて。でも、道具がどこにあるのか……」
朝っぱらから何をしているのだとダグは溜息をつく。
ダグは第一倉庫から道具を持って来て、割れたビンを片付ける。
「ありがとう……」
「で、相手はどうしたんだ? また、作りに戻ったのか?」
「うん。先に行ってるって」
「先に?」
ティモシーの返事にダグは驚いた。それは、ティモシーが手伝う事になるからである。普通許可なく作る事は規約違反である。ぶつかった相手はまだいいとして、ティモシーは許可を経なくてはならない。
「まてまて。オーギュストさんには許可取ったか?」
「許可? でもさっきの人がいいって……」
「相手って誰だよ」
そう聞かれてティモシーは、相手の名前を聞いていない事に気が付いた。
「……名前聞いてないや」
「お前なぁ。俺も一緒に行くからちょっと待ってろ!」
ダグは朝から本日二回目の大きなため息をついてそう言った。
その後二人は、第八調合室に向かった。
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