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第六章 真実と魔術師組織

第六十三話

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 ダグは、俯いたまま話し出す。それは、身の上話から始まった――。



 そこはエクランド国の端の村の自然豊かでそして何もない村だった。ダグはこの時五歳、色々やりたってみたい時期。親には止められたが、こっそりと魔術を使って遊んでいた。
 ダグの両親は二人共魔術師だったが、魔術を使ったところは見たことがなかったのでダグは独学だ。
 木の実を採るのに風の刃で枝を切り、落ちてくる実をフワフワと浮かせて手に取る。そんな事をして遊んでいた。普通の子ならば、木に登ってその実を採っていただろう。
 そしてその行為は、見つかった! 瞬く間に村中に知れ渡り、両親はダグを連れ慌てて村を出た。いや、逃げ出した。
 今の世の中は、魔術師に対し怯えるか、自分の身を守ると言う体裁の元襲って来るかのどちらかが普通で、受け入れてくれる者は珍しい。
 この村の者は後者だった。逃げ出すしかなかった。ダグはこの時やっと、親が言っていた意味を理解したのである。しかしもう遅い。違う場所へ移って生活するしかなかった。
 たどり着いた村は、ニ十人程の小さな村で薬師の村だった。薬草を栽培しそれを売ったり、調合して薬を売ったりして細々と暮らす、エクランド国では一般的な村。
 お金も無くなり、お願いをしてその村に住まわせてもらえる事になった。両親は薬師ではなかったので、村の人が作った薬草や薬を運搬する仕事をする事になり、ダグも小さいながらお手伝いをした。
 村人はあまりよそ者をよしとしなかったが、ダグには優しかった。薬師の事を教えてくれて、才能があると試験を受けるよう勧められ十八歳の時に取得し、村でそのまま薬師として過ごしていた。絶対マイスターになれるから、まずは王宮専属薬師を受けてみろと村人に言われるも、ダグは別にこの村でまったりでもいいと思って過ごしていた。
 そんなある日、両親が商品を持って村を出るのを見送って村に戻ると、入り口に荷馬車が止まっていた。滅多に来ない、いや初めてだった。何が運ばれてきたのかと村に入るも人影ない。
 何となくいつもと違うと感じつつ、村長の家へ向かう。誰が来たのか気になったので見に行こうとしたのである。近づくとドアが開いていて、中から声が聞こえて来た。

 「エドアル、これはどういう事だ!」

 村長の怒鳴り声だ。
 エドアルは薬師ではない。村の巡警兵だった。村などの集落は、村人からなる巡警兵が村人を守っていた。国から依頼という形になっているので、国から給料が支給されている職業である。
 その相手に村長は、怒鳴っていた。どういう事態だと中を覗くと、エドアルが何かブツブツと言っていた。

 「……ノナミイモナスイ……」

 一瞬ダグは、何故彼が外国語を話しているのかと思ったが、突然村長に向かって黒い石を投げつけた! それは粉々砕けたと思うと村長は膝を折り、そしてそのままうつ伏せに倒れ込んだ!

 「村長!」

 驚いたダグが叫ぶと、エドアルは振り向いた。その顔はいつもの凛々しく優し気な顔ではなかった。

 「そいつがダグか?」
 「あぁ。この村で一番の腕の薬師だ」

 その時、見知らぬ男が一人いた事に気が付いた。何かやばい! と感じ取ったダグは、翻しその場を逃げ出した。
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