63 / 192
第六章 真実と魔術師組織
第六十三話
しおりを挟む
ダグは、俯いたまま話し出す。それは、身の上話から始まった――。
そこはエクランド国の端の村の自然豊かでそして何もない村だった。ダグはこの時五歳、色々やりたってみたい時期。親には止められたが、こっそりと魔術を使って遊んでいた。
ダグの両親は二人共魔術師だったが、魔術を使ったところは見たことがなかったのでダグは独学だ。
木の実を採るのに風の刃で枝を切り、落ちてくる実をフワフワと浮かせて手に取る。そんな事をして遊んでいた。普通の子ならば、木に登ってその実を採っていただろう。
そしてその行為は、見つかった! 瞬く間に村中に知れ渡り、両親はダグを連れ慌てて村を出た。いや、逃げ出した。
今の世の中は、魔術師に対し怯えるか、自分の身を守ると言う体裁の元襲って来るかのどちらかが普通で、受け入れてくれる者は珍しい。
この村の者は後者だった。逃げ出すしかなかった。ダグはこの時やっと、親が言っていた意味を理解したのである。しかしもう遅い。違う場所へ移って生活するしかなかった。
たどり着いた村は、ニ十人程の小さな村で薬師の村だった。薬草を栽培しそれを売ったり、調合して薬を売ったりして細々と暮らす、エクランド国では一般的な村。
お金も無くなり、お願いをしてその村に住まわせてもらえる事になった。両親は薬師ではなかったので、村の人が作った薬草や薬を運搬する仕事をする事になり、ダグも小さいながらお手伝いをした。
村人はあまりよそ者をよしとしなかったが、ダグには優しかった。薬師の事を教えてくれて、才能があると試験を受けるよう勧められ十八歳の時に取得し、村でそのまま薬師として過ごしていた。絶対マイスターになれるから、まずは王宮専属薬師を受けてみろと村人に言われるも、ダグは別にこの村でまったりでもいいと思って過ごしていた。
そんなある日、両親が商品を持って村を出るのを見送って村に戻ると、入り口に荷馬車が止まっていた。滅多に来ない、いや初めてだった。何が運ばれてきたのかと村に入るも人影ない。
何となくいつもと違うと感じつつ、村長の家へ向かう。誰が来たのか気になったので見に行こうとしたのである。近づくとドアが開いていて、中から声が聞こえて来た。
「エドアル、これはどういう事だ!」
村長の怒鳴り声だ。
エドアルは薬師ではない。村の巡警兵だった。村などの集落は、村人からなる巡警兵が村人を守っていた。国から依頼という形になっているので、国から給料が支給されている職業である。
その相手に村長は、怒鳴っていた。どういう事態だと中を覗くと、エドアルが何かブツブツと言っていた。
「……ノナミイモナスイ……」
一瞬ダグは、何故彼が外国語を話しているのかと思ったが、突然村長に向かって黒い石を投げつけた! それは粉々砕けたと思うと村長は膝を折り、そしてそのままうつ伏せに倒れ込んだ!
「村長!」
驚いたダグが叫ぶと、エドアルは振り向いた。その顔はいつもの凛々しく優し気な顔ではなかった。
「そいつがダグか?」
「あぁ。この村で一番の腕の薬師だ」
その時、見知らぬ男が一人いた事に気が付いた。何かやばい! と感じ取ったダグは、翻しその場を逃げ出した。
そこはエクランド国の端の村の自然豊かでそして何もない村だった。ダグはこの時五歳、色々やりたってみたい時期。親には止められたが、こっそりと魔術を使って遊んでいた。
ダグの両親は二人共魔術師だったが、魔術を使ったところは見たことがなかったのでダグは独学だ。
木の実を採るのに風の刃で枝を切り、落ちてくる実をフワフワと浮かせて手に取る。そんな事をして遊んでいた。普通の子ならば、木に登ってその実を採っていただろう。
そしてその行為は、見つかった! 瞬く間に村中に知れ渡り、両親はダグを連れ慌てて村を出た。いや、逃げ出した。
今の世の中は、魔術師に対し怯えるか、自分の身を守ると言う体裁の元襲って来るかのどちらかが普通で、受け入れてくれる者は珍しい。
この村の者は後者だった。逃げ出すしかなかった。ダグはこの時やっと、親が言っていた意味を理解したのである。しかしもう遅い。違う場所へ移って生活するしかなかった。
たどり着いた村は、ニ十人程の小さな村で薬師の村だった。薬草を栽培しそれを売ったり、調合して薬を売ったりして細々と暮らす、エクランド国では一般的な村。
お金も無くなり、お願いをしてその村に住まわせてもらえる事になった。両親は薬師ではなかったので、村の人が作った薬草や薬を運搬する仕事をする事になり、ダグも小さいながらお手伝いをした。
村人はあまりよそ者をよしとしなかったが、ダグには優しかった。薬師の事を教えてくれて、才能があると試験を受けるよう勧められ十八歳の時に取得し、村でそのまま薬師として過ごしていた。絶対マイスターになれるから、まずは王宮専属薬師を受けてみろと村人に言われるも、ダグは別にこの村でまったりでもいいと思って過ごしていた。
そんなある日、両親が商品を持って村を出るのを見送って村に戻ると、入り口に荷馬車が止まっていた。滅多に来ない、いや初めてだった。何が運ばれてきたのかと村に入るも人影ない。
何となくいつもと違うと感じつつ、村長の家へ向かう。誰が来たのか気になったので見に行こうとしたのである。近づくとドアが開いていて、中から声が聞こえて来た。
「エドアル、これはどういう事だ!」
村長の怒鳴り声だ。
エドアルは薬師ではない。村の巡警兵だった。村などの集落は、村人からなる巡警兵が村人を守っていた。国から依頼という形になっているので、国から給料が支給されている職業である。
その相手に村長は、怒鳴っていた。どういう事態だと中を覗くと、エドアルが何かブツブツと言っていた。
「……ノナミイモナスイ……」
一瞬ダグは、何故彼が外国語を話しているのかと思ったが、突然村長に向かって黒い石を投げつけた! それは粉々砕けたと思うと村長は膝を折り、そしてそのままうつ伏せに倒れ込んだ!
「村長!」
驚いたダグが叫ぶと、エドアルは振り向いた。その顔はいつもの凛々しく優し気な顔ではなかった。
「そいつがダグか?」
「あぁ。この村で一番の腕の薬師だ」
その時、見知らぬ男が一人いた事に気が付いた。何かやばい! と感じ取ったダグは、翻しその場を逃げ出した。
0
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
【完結】 元魔王な兄と勇者な妹 (多視点オムニバス短編)
津籠睦月
ファンタジー
<あらすじ>
世界を救った元勇者を父、元賢者を母として育った少年は、魔法のコントロールがド下手な「ちょっと残念な子」と見なされながらも、最愛の妹とともに平穏な日々を送っていた。
しかしある日、魔王の片腕を名乗るコウモリが現れ、真実を告げる。
勇者たちは魔王を倒してはおらず、禁断の魔法で赤ん坊に戻しただけなのだと。そして彼こそが、その魔王なのだと…。
<小説の仕様>
ひとつのファンタジー世界を、1話ごとに、別々のキャラの視点で語る一人称オムニバスです(プロローグ(0.)のみ三人称)。
短編のため、大がかりな結末はありません。あるのは伏線回収のみ。
R15は、(直接表現や詳細な描写はありませんが)そういうシーンがあるため(←父母世代の話のみ)。
全体的に「ほのぼの(?)」ですが(ハードな展開はありません)、「誰の視点か」によりシリアス色が濃かったりコメディ色が濃かったり、雰囲気がだいぶ違います(父母世代は基本シリアス、子ども世代&猫はコメディ色強め)。
プロローグ含め全6話で完結です。
各話タイトルで誰の視点なのかを表しています。ラインナップは以下の通りです。
0.そして勇者は父になる(シリアス)
1.元魔王な兄(コメディ寄り)
2.元勇者な父(シリアス寄り)
3.元賢者な母(シリアス…?)
4.元魔王の片腕な飼い猫(コメディ寄り)
5.勇者な妹(兄への愛のみ)
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる