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第五章 疑惑の彼
第五十一話
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ティモシー達は、馬車で王宮に向かった。そして、そのまま医務室に連れて行かれる。医務室は普段無人で、怪我人が出た時は、王宮のマイスター全員が医師の資格を持っているので、診れる者が担当するのである。
待っていたのは、オーギュストとブラッドリーだった。
「大丈夫か」
オーギュストが三人に声を掛ける。
「はい……」
アリックが代表するように頷きながら答えた。
「アリックさんとティモシーさんが怪我をなさったようです」
付き添った巡回兵がそう申し送りをする。
ティモシーは左半身、アリックは身体の後ろ側に怪我を負っていた。
「ありがとうございます。後はこちらで診ます」
オーギュトがそう答えると、巡回兵はお辞儀をし、部屋を出て行った。
医務室は、それほど広くなかった。ベットが縦に頭が向こう側で二つ奥に設置してあり、薬品棚も小さいのが二つ壁に設置してあるのみだった。
薬師用の医務室で、ほとんど使われる事はない。兵士用の医務室は別になっている。
「ではアリック、診ますのでこちらへ」
オーギュストに呼ばれ、左側のベットにアリックは行くと、オーギュストはカーテンを閉める。右側には、ブラッドリーが待っている。
ティモシーは、青ざめた顔でブラッドリーが待つ右側のベットに行った。そして、カーテンは閉められる。
ブラッドリーの顔を見てからティモシーは、一つの疑惑が頭を過り心臓が煩かった。
あの男たちを遣わしたのは、ブラッドリーなのではないか? あの大きな穴を見れば、殺すきだったのは明白だ。ダグだって、誰にも見られていないと思って殺した。魔術で殺すと後で困るので首を絞めた。
ティモシーはもう、誰を信じていいかわからなくなっていた。正確な判断が出来なくなり、早くを治療を終えて帰りたい。それだけを考えていた。
流石に、怪我をしているのにレオナールの元へは連れて行かないだろう。そのレオナールがブラッドリーに命令した可能性だってある。
(あーもう、わかんない!)
ティモシーは、自分でも色々考えに矛盾があるとわかっているが、不安の方が大きかった。しかも、今日に限ってランフレッドが飛んでこない。
ティモシーにとって、今確実に信頼できるのはランフレッドだった。早く彼に会って安心したかったのである。
「大丈夫か? 一人で着れるか?」
考え込んでいるうちに治療が終わり、ブラッドリーが新しい制服をティモシーの前に出していた。それに気付かずにボーっとしていたのである。
「あ、自分で……」
それだけ言うとティモシーは制服を受け取る。ブラッドリーは制服を渡すと、カーテンの外に出て行った。
「オーギュストさん、何か手伝いますか」
ブラッドリーがそう声を掛ける。
「いえ、もう終わりますので」
オーギュストはそう返した。
「あなたは大丈夫ですか?」
今度は、ダグに声を掛ける。
「あぁ、いた場所がよかったみたいで、かすり傷程度だから問題ない……です」
ティモシーは、着替え終わったがカーテンを開ける気にならず、そのままベットに腰を下ろす。
治療が終わりオーギュストが出て来た。
「どうでした?」
「後ろ側全体に打撲や切り傷がみられます。心配なのは、頭部にも怪我がある事ですね。そちらは?」
ブラッドリーが聞くと、オーギュストはそう答えブラッドリーにも様子をどうかと聞き返す。
「ティモシーは、左側面に打撲と切り傷。左肩を強打したようでそれ以外は大丈夫そうだ。頭にも怪我はない」
「そうですか。一応、一安心ってところですか」
二人が安堵する様子と同時に、アリックがカーテンを開ける。
「あの……ティモシー大丈夫ですか?」
今、二人が大丈夫だと話していたが、カーテンが閉められたままなので不安になったアリックがブラッドリーに聞いたのである。
仕方なく、ティモシーもカーテンを開けた。
「大丈夫?」
アリックの問いにティモシーは静かに頷く。
ティモシーがベットに腰を下ろすと、アリックはティモシーの横に来て隣に座った。隣に座るとは思っていなかったティモシーは、少し驚いて彼を見た。
「ごめんね。結局怪我させちゃって……。肩、大丈夫?」
アリックは何も悪くない。ティモシーが怪我をしたのは、彼の下から這い出たからだ。
「ありがとう。大丈夫。アリックさんこそ頭大丈夫?」
アリックは、ニッコリ微笑んで頷く。
「アリックは、何も悪くないだろう」
いつの間にか、二人の向かい側のベットに腰を下ろし座ったダグがボソッと言った。
と、その時、トントンとドアがノックされる。
「治療は終わりましたか?」
顔を覗かせたのは、レオナールだ。ティモシーは、ギョッとする。オーギュストもはいと答えるも訝しそうに彼を見た。知らない人物ではないが、何故彼がというところである。
「陛下、治療が終わったようです」
その声に、部屋に居た皆は、え! っと驚く。わざわざ足を運んだからである。
グスターファスにルーファスが入って来る。そして、その後ろにレオナールが、最後にランフレッドも入って来た。
ティモシーは、ランフレッドを見て安堵し、少し緊張がほぐれた。
待っていたのは、オーギュストとブラッドリーだった。
「大丈夫か」
オーギュストが三人に声を掛ける。
「はい……」
アリックが代表するように頷きながら答えた。
「アリックさんとティモシーさんが怪我をなさったようです」
付き添った巡回兵がそう申し送りをする。
ティモシーは左半身、アリックは身体の後ろ側に怪我を負っていた。
「ありがとうございます。後はこちらで診ます」
オーギュトがそう答えると、巡回兵はお辞儀をし、部屋を出て行った。
医務室は、それほど広くなかった。ベットが縦に頭が向こう側で二つ奥に設置してあり、薬品棚も小さいのが二つ壁に設置してあるのみだった。
薬師用の医務室で、ほとんど使われる事はない。兵士用の医務室は別になっている。
「ではアリック、診ますのでこちらへ」
オーギュストに呼ばれ、左側のベットにアリックは行くと、オーギュストはカーテンを閉める。右側には、ブラッドリーが待っている。
ティモシーは、青ざめた顔でブラッドリーが待つ右側のベットに行った。そして、カーテンは閉められる。
ブラッドリーの顔を見てからティモシーは、一つの疑惑が頭を過り心臓が煩かった。
あの男たちを遣わしたのは、ブラッドリーなのではないか? あの大きな穴を見れば、殺すきだったのは明白だ。ダグだって、誰にも見られていないと思って殺した。魔術で殺すと後で困るので首を絞めた。
ティモシーはもう、誰を信じていいかわからなくなっていた。正確な判断が出来なくなり、早くを治療を終えて帰りたい。それだけを考えていた。
流石に、怪我をしているのにレオナールの元へは連れて行かないだろう。そのレオナールがブラッドリーに命令した可能性だってある。
(あーもう、わかんない!)
ティモシーは、自分でも色々考えに矛盾があるとわかっているが、不安の方が大きかった。しかも、今日に限ってランフレッドが飛んでこない。
ティモシーにとって、今確実に信頼できるのはランフレッドだった。早く彼に会って安心したかったのである。
「大丈夫か? 一人で着れるか?」
考え込んでいるうちに治療が終わり、ブラッドリーが新しい制服をティモシーの前に出していた。それに気付かずにボーっとしていたのである。
「あ、自分で……」
それだけ言うとティモシーは制服を受け取る。ブラッドリーは制服を渡すと、カーテンの外に出て行った。
「オーギュストさん、何か手伝いますか」
ブラッドリーがそう声を掛ける。
「いえ、もう終わりますので」
オーギュストはそう返した。
「あなたは大丈夫ですか?」
今度は、ダグに声を掛ける。
「あぁ、いた場所がよかったみたいで、かすり傷程度だから問題ない……です」
ティモシーは、着替え終わったがカーテンを開ける気にならず、そのままベットに腰を下ろす。
治療が終わりオーギュストが出て来た。
「どうでした?」
「後ろ側全体に打撲や切り傷がみられます。心配なのは、頭部にも怪我がある事ですね。そちらは?」
ブラッドリーが聞くと、オーギュストはそう答えブラッドリーにも様子をどうかと聞き返す。
「ティモシーは、左側面に打撲と切り傷。左肩を強打したようでそれ以外は大丈夫そうだ。頭にも怪我はない」
「そうですか。一応、一安心ってところですか」
二人が安堵する様子と同時に、アリックがカーテンを開ける。
「あの……ティモシー大丈夫ですか?」
今、二人が大丈夫だと話していたが、カーテンが閉められたままなので不安になったアリックがブラッドリーに聞いたのである。
仕方なく、ティモシーもカーテンを開けた。
「大丈夫?」
アリックの問いにティモシーは静かに頷く。
ティモシーがベットに腰を下ろすと、アリックはティモシーの横に来て隣に座った。隣に座るとは思っていなかったティモシーは、少し驚いて彼を見た。
「ごめんね。結局怪我させちゃって……。肩、大丈夫?」
アリックは何も悪くない。ティモシーが怪我をしたのは、彼の下から這い出たからだ。
「ありがとう。大丈夫。アリックさんこそ頭大丈夫?」
アリックは、ニッコリ微笑んで頷く。
「アリックは、何も悪くないだろう」
いつの間にか、二人の向かい側のベットに腰を下ろし座ったダグがボソッと言った。
と、その時、トントンとドアがノックされる。
「治療は終わりましたか?」
顔を覗かせたのは、レオナールだ。ティモシーは、ギョッとする。オーギュストもはいと答えるも訝しそうに彼を見た。知らない人物ではないが、何故彼がというところである。
「陛下、治療が終わったようです」
その声に、部屋に居た皆は、え! っと驚く。わざわざ足を運んだからである。
グスターファスにルーファスが入って来る。そして、その後ろにレオナールが、最後にランフレッドも入って来た。
ティモシーは、ランフレッドを見て安堵し、少し緊張がほぐれた。
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