47 / 192
第五章 疑惑の彼
第四十七話
しおりを挟む
「お前、レオナール王子に偉く気にいられたみたいだな」
家に帰り夕食後、紅茶を飲みながらランフレッドは嬉しそうに言うが、ティモシーの方は嬉しくない。逆に避けたい相手である。
「勘弁してほしい。ブラッドリーさんとも仲いいみたいだし……」
ため息交じりにティモシーは、そう返す。
「仲いいってお前。ブラッドリーさんは、レオナール王子の部下だぞ? ハルフォード国の人だ」
「え? ブラッドリーさんって、王族なの?」
「いや、違うって。王族以外全くいない訳じゃないし。自分たちが魔術師だからか、魔術師だと名乗る者が忠誠を誓えば、囲まってるらしい。まあ、彼がそうかは知らないが」
やっと二人の関係がわかり、スッキリするティモシーだが、別に安心感を得られた訳でなかった。
レオナールに逆らえば、ブラッドリーがこっそり相手を始末――なんて事もありえるのではないかと、恐ろしい想像をしてしまう。なにせ、殺さなかったはいえ、エイブにした攻撃は容赦なかったのだから。
翌日、まだ筋肉痛の腕で三人は調合を行い、午後からは、一か所しかないので三人で配達となり、倉庫の手伝いでなくてよかったと喜んで出掛けた。
今日の配達先は、トラスアイテム。街が造られた時から開業している大企業である。薬師が使う道具や研究所が使う道具など、始めの頃は薬師の道具だけだったが今では幅広く生産している。
トラスアイテム印の道具はブランド品として他国でも人気で、国外でも販売されている。勿論、王宮での道具は、全てこのトラスアイテムの物を使っていた。
また、観光用に薬草付きの道具などを販売しており、たまに配達があるのである。
そして、ティモシーは今日、それを知ったのだった。
「全く、お前には呆れるわ。薬師の癖にトラスアイテムを知らないなんて……」
ため息をしつつダグはそう言うも、ティモシーならおかしくもないとも納得する。むくれるティモシーだが、お店も開いていると聞いているので、見て帰れるとワクワクしていた。
時間にして九十分ほど。ティモシー達には苦にならない距離である。天気もいいしルンルンでティモシーは歩いていた。
「お前があまりにも機嫌がいいと、何かよくない事が起きそうで嫌だな」
「何それ!」
ダグがからかうと、いつものようにティモシーが反応しケラケラとダグは笑う。
「もう、ダグさん、機嫌悪いよりいいんだから、ティモシーをからかうのやめて、あ、ここを曲がろう」
アリックは、こっちと道を曲がった。
「こっち? もっと真っ直ぐじゃなかったか?」
ついて行くが、真っ直ぐの道を指差しダグは言う。
「裏口の方が手前にあるんだよ。建物が大きいから十分ほど短縮なるよ」
「え! お店屋さんは!」
店を見て回るのを勝手に楽しみにしていたティモシーが驚いて言うと、二人はあきれ顔だ。
「あのな、店は別な場所にあるんだ。こんな所にある訳ないだろう? って、言うかお前は、ホント懲りないな」
「え、だって、配達……」
薬草をここに持って行くのだから、ここで販売をしていると思っていたティモシーにアリックは丁寧に教える。
「あのね。ここで作った道具と一緒にセットにして、商品としてお店に送っているの。だから、お店は別の場所だよ。それにお店には寄らないからね。仕事中はダメだってオーギュストさんに散々言われたでしょ」
ティモシーはガックシと肩を落とす。ダグの言う通り辺りを見渡せば、遠くに見えるトラスアイテムの大きな建物以外には、トラスアイテムの社員用の宿舎ぐらいしかなかった。
ここ一帯は、昔からトラスアイテムの敷地で建物も建っていない空き地もあり、観光には不向きな場所だ。観光客が来るとすれば工場見学ぐらいだろう。
「わかったか? まあ、そんなに行きたいのなら早く上がれた日の帰りにでも連れて行ってやるよ。連れていくだけだけどな」
ダグはお金は出さないけど、買い物には付き合ってやると言うと、ティモシーは嬉しそうに頷いた。
「ホントちょろいな。大丈夫なのかよ……」
ダグを信用しているからの態度なのだろうが、この前それで痛い目に合ったばかりだ。
「僕も一緒に行くからね!」
アリックは、ダグを軽く睨みながら言った。
「お好きにどうぞ。俺は、アリックと違って下心ないし」
「僕にだってないよ!」
今度はアリックをからかい、ケラケラとダグは笑う。
そんなやり取りをしながら進んでいると、目的地のトラスアイテムの裏口についた。配達を終えて後は王宮に帰るだけだ。
家に帰り夕食後、紅茶を飲みながらランフレッドは嬉しそうに言うが、ティモシーの方は嬉しくない。逆に避けたい相手である。
「勘弁してほしい。ブラッドリーさんとも仲いいみたいだし……」
ため息交じりにティモシーは、そう返す。
「仲いいってお前。ブラッドリーさんは、レオナール王子の部下だぞ? ハルフォード国の人だ」
「え? ブラッドリーさんって、王族なの?」
「いや、違うって。王族以外全くいない訳じゃないし。自分たちが魔術師だからか、魔術師だと名乗る者が忠誠を誓えば、囲まってるらしい。まあ、彼がそうかは知らないが」
やっと二人の関係がわかり、スッキリするティモシーだが、別に安心感を得られた訳でなかった。
レオナールに逆らえば、ブラッドリーがこっそり相手を始末――なんて事もありえるのではないかと、恐ろしい想像をしてしまう。なにせ、殺さなかったはいえ、エイブにした攻撃は容赦なかったのだから。
翌日、まだ筋肉痛の腕で三人は調合を行い、午後からは、一か所しかないので三人で配達となり、倉庫の手伝いでなくてよかったと喜んで出掛けた。
今日の配達先は、トラスアイテム。街が造られた時から開業している大企業である。薬師が使う道具や研究所が使う道具など、始めの頃は薬師の道具だけだったが今では幅広く生産している。
トラスアイテム印の道具はブランド品として他国でも人気で、国外でも販売されている。勿論、王宮での道具は、全てこのトラスアイテムの物を使っていた。
また、観光用に薬草付きの道具などを販売しており、たまに配達があるのである。
そして、ティモシーは今日、それを知ったのだった。
「全く、お前には呆れるわ。薬師の癖にトラスアイテムを知らないなんて……」
ため息をしつつダグはそう言うも、ティモシーならおかしくもないとも納得する。むくれるティモシーだが、お店も開いていると聞いているので、見て帰れるとワクワクしていた。
時間にして九十分ほど。ティモシー達には苦にならない距離である。天気もいいしルンルンでティモシーは歩いていた。
「お前があまりにも機嫌がいいと、何かよくない事が起きそうで嫌だな」
「何それ!」
ダグがからかうと、いつものようにティモシーが反応しケラケラとダグは笑う。
「もう、ダグさん、機嫌悪いよりいいんだから、ティモシーをからかうのやめて、あ、ここを曲がろう」
アリックは、こっちと道を曲がった。
「こっち? もっと真っ直ぐじゃなかったか?」
ついて行くが、真っ直ぐの道を指差しダグは言う。
「裏口の方が手前にあるんだよ。建物が大きいから十分ほど短縮なるよ」
「え! お店屋さんは!」
店を見て回るのを勝手に楽しみにしていたティモシーが驚いて言うと、二人はあきれ顔だ。
「あのな、店は別な場所にあるんだ。こんな所にある訳ないだろう? って、言うかお前は、ホント懲りないな」
「え、だって、配達……」
薬草をここに持って行くのだから、ここで販売をしていると思っていたティモシーにアリックは丁寧に教える。
「あのね。ここで作った道具と一緒にセットにして、商品としてお店に送っているの。だから、お店は別の場所だよ。それにお店には寄らないからね。仕事中はダメだってオーギュストさんに散々言われたでしょ」
ティモシーはガックシと肩を落とす。ダグの言う通り辺りを見渡せば、遠くに見えるトラスアイテムの大きな建物以外には、トラスアイテムの社員用の宿舎ぐらいしかなかった。
ここ一帯は、昔からトラスアイテムの敷地で建物も建っていない空き地もあり、観光には不向きな場所だ。観光客が来るとすれば工場見学ぐらいだろう。
「わかったか? まあ、そんなに行きたいのなら早く上がれた日の帰りにでも連れて行ってやるよ。連れていくだけだけどな」
ダグはお金は出さないけど、買い物には付き合ってやると言うと、ティモシーは嬉しそうに頷いた。
「ホントちょろいな。大丈夫なのかよ……」
ダグを信用しているからの態度なのだろうが、この前それで痛い目に合ったばかりだ。
「僕も一緒に行くからね!」
アリックは、ダグを軽く睨みながら言った。
「お好きにどうぞ。俺は、アリックと違って下心ないし」
「僕にだってないよ!」
今度はアリックをからかい、ケラケラとダグは笑う。
そんなやり取りをしながら進んでいると、目的地のトラスアイテムの裏口についた。配達を終えて後は王宮に帰るだけだ。
0
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~
有楽 森
ファンタジー
人生最良の日になるはずだった俺は、運命の無慈悲な采配により異世界へと落ちてしまった。
地球に戻りたいのに戻れない。狼モドキな人間と地球人が助けてくれたけど勇者なんて呼ばれて……てか他にも勇者候補がいるなら俺いらないじゃん。
やっとデートまでこぎつけたのに、三年間の努力が水の泡。それにこんな化け物が出てくるとか聞いてないし。
あれ?でも……俺、ここを知ってる?え?へ?どうして俺の記憶通りになったんだ?未来予知?まさかそんなはずはない。でもじゃあ何で俺はこれから起きる事を知ってるんだ?
努力の優等生である中学3年の主人公が何故か異世界に行ってしまい、何故か勇者と呼ばれてしまう。何故か言葉を理解できるし、何故かこれから良くないことが起こるって知っている。
事件に巻き込まれながらも地球に返る為、異世界でできた友人たちの為に、頑張って怪物に立ち向かう。これは中学男子学生が愛のために頑張る恋愛冒険ファンタジーです。
第一章【冬に咲く花】は完結してます。
他のサイトに掲載しているのを、少し書き直して転載してます。若干GL・BL要素がありますが、GL・BLではありません。前半は恋愛色薄めで、ヒロインがヒロインらしくなるのは後半からです。主人公の覚醒?はゆっくり目で、徐々にといった具合です。
*印の箇所は、やや表現がきわどくなっています。ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる