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第四章 魔術師の国の王子
第四十三話
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ベネットは十分ほどして、ティモシーの様子を見に行くがどこにも見当たらず、あちこち探し回った。それでも発見出来ず、巡回兵に協力をお願いし王宮に連絡をしようとした時だった。
ふと馬車が目に留まった。それは、王宮の馬車で、薬師達でも使用出来る物だった。だが、なぜこんな所に停まっているか気になり近づくと、ランフレッドが馬車に乗り込もうとしている所だった。しかも、ティモシーを抱いていた! いわゆるお姫様だっこである。
「ティモシー!」
ベネットは、ランフレッドに走り寄った。
「ベネットさん……」
ボソッと名を口にするもランフレッドはそのまま馬車に乗り込んだ。いつもと様子が違う彼にベネットは戸惑う。
まさか……という思いがかすめる。そこに馬車の中からベネットに声が掛かる。
「ベネットか? あなたも馬車に乗りなさい」
その声の主は、ランフレッドではなかった。中を覗き込んだベネットは驚く。ランフレッドの向かい側に、フードを被ったルーファスが居たのである。
断ることも出来ず、しかもルーファスの横に座るように言われ、気まずい雰囲気の中馬車は出発する。
ティモシーは目元が腫れていた。泣いた事がわかる。ランフレッドによりかかり、寝ているようだった。
王宮の手前でランフレッドは、ティモシーを抱き上げ馬車を降りた。このまま家に帰るようだ。ベネットは慌てて彼に声を掛ける。
「あの! 後でお伺いしても宜しいでしょうか?」
「そうだな。俺も色々話を聞きたい」
そうランフレッドは返し、家の中へ入っていた。
ベネットが、ルーファスの前に座り直すと馬車は出発する。
「ベネット……」
突然、ルーファスがベネットに声を掛けた。
「君に私は、ティモシーに一般常識を教えて欲しいと頼んであったはずだが? 君のお蔭で、ランフは彼を半殺しの目に合せてしまった。止める間もなかった」
「も、申し訳ありません……」
やっぱりそうだったとベネットは顔が青ざめる。
「安心しろ。事なきを得ている。発見が早かったからな」
「よかった……」
ベネットは、両手で顔を覆い涙を流す。どうして止めに入る事が出来たのかなどは考えに浮かばない。最悪の事態は回避されたと思うだけだった。
アリックとダグは、あんぐりとしていた。ベネットからティモシーは暫く休むと聞かされ、すぐに噂が聞こえて来た。しかも、あのランフレッドが仕事を休んでいた。噂の信憑性が上がったのである。誰もが噂を真実だと捉えた。
ティモシーは、ベネットの話を聞き終え、自分がエイブについていって、彼女に凄く迷惑を掛けた事を謝っていない事に気づいた。家で会った時は、そんな余裕はなかっのである。
「ベネットさん、ごめんなさい。ちゃんと話してくれたのに……。偶然エイブさんに会って、噂を確かめたくて……。迷惑いっぱい掛けてしまって……」
「私は大丈夫よ。あなたの性格上、そういう行動もとるかも知れないってわかっていたのに、釘を刺さなかった私にも非はあるわ。最悪な事態にならなくてよかった……」
「お前なぁ……。偶然って。……まあ、これからは周りのいう事に耳を傾けるこったな。アリックも気を付けろよ。ランフレッドさんの制裁を受けないようにな」
「な、何言ってるのさ!」
ダグが最後にアリックをからかう様に言うと、彼は顔を真っ赤にした。
「本当にごめんなさい。これからはちゃんと話を聞きますので、許して下さい」
深々とティモシーは頭を下げた。
今日家を出る時に、ふと皆は怒ってるのではと思ったティモシーは、皆が怒っていたかと聞くと、ランフレッドは『悪いと思ったら誠心誠意謝る事だな』とだけ言ってほほ笑んだ。
ティモシーは、三人には嫌われたくないと思った。だからランフレッドの言う通り、誠心誠意な気持ちで謝った。
「許すも何も怒ってないわよ」
「そうだよ。無事でよかったよ」
「少しは成長したみたいだな。まぁ、これからも宜しくな」
「皆、ありがとう!」
ティモシーの笑顔を見て、三人は大丈夫そうだと安堵するのだった。
ふと馬車が目に留まった。それは、王宮の馬車で、薬師達でも使用出来る物だった。だが、なぜこんな所に停まっているか気になり近づくと、ランフレッドが馬車に乗り込もうとしている所だった。しかも、ティモシーを抱いていた! いわゆるお姫様だっこである。
「ティモシー!」
ベネットは、ランフレッドに走り寄った。
「ベネットさん……」
ボソッと名を口にするもランフレッドはそのまま馬車に乗り込んだ。いつもと様子が違う彼にベネットは戸惑う。
まさか……という思いがかすめる。そこに馬車の中からベネットに声が掛かる。
「ベネットか? あなたも馬車に乗りなさい」
その声の主は、ランフレッドではなかった。中を覗き込んだベネットは驚く。ランフレッドの向かい側に、フードを被ったルーファスが居たのである。
断ることも出来ず、しかもルーファスの横に座るように言われ、気まずい雰囲気の中馬車は出発する。
ティモシーは目元が腫れていた。泣いた事がわかる。ランフレッドによりかかり、寝ているようだった。
王宮の手前でランフレッドは、ティモシーを抱き上げ馬車を降りた。このまま家に帰るようだ。ベネットは慌てて彼に声を掛ける。
「あの! 後でお伺いしても宜しいでしょうか?」
「そうだな。俺も色々話を聞きたい」
そうランフレッドは返し、家の中へ入っていた。
ベネットが、ルーファスの前に座り直すと馬車は出発する。
「ベネット……」
突然、ルーファスがベネットに声を掛けた。
「君に私は、ティモシーに一般常識を教えて欲しいと頼んであったはずだが? 君のお蔭で、ランフは彼を半殺しの目に合せてしまった。止める間もなかった」
「も、申し訳ありません……」
やっぱりそうだったとベネットは顔が青ざめる。
「安心しろ。事なきを得ている。発見が早かったからな」
「よかった……」
ベネットは、両手で顔を覆い涙を流す。どうして止めに入る事が出来たのかなどは考えに浮かばない。最悪の事態は回避されたと思うだけだった。
アリックとダグは、あんぐりとしていた。ベネットからティモシーは暫く休むと聞かされ、すぐに噂が聞こえて来た。しかも、あのランフレッドが仕事を休んでいた。噂の信憑性が上がったのである。誰もが噂を真実だと捉えた。
ティモシーは、ベネットの話を聞き終え、自分がエイブについていって、彼女に凄く迷惑を掛けた事を謝っていない事に気づいた。家で会った時は、そんな余裕はなかっのである。
「ベネットさん、ごめんなさい。ちゃんと話してくれたのに……。偶然エイブさんに会って、噂を確かめたくて……。迷惑いっぱい掛けてしまって……」
「私は大丈夫よ。あなたの性格上、そういう行動もとるかも知れないってわかっていたのに、釘を刺さなかった私にも非はあるわ。最悪な事態にならなくてよかった……」
「お前なぁ……。偶然って。……まあ、これからは周りのいう事に耳を傾けるこったな。アリックも気を付けろよ。ランフレッドさんの制裁を受けないようにな」
「な、何言ってるのさ!」
ダグが最後にアリックをからかう様に言うと、彼は顔を真っ赤にした。
「本当にごめんなさい。これからはちゃんと話を聞きますので、許して下さい」
深々とティモシーは頭を下げた。
今日家を出る時に、ふと皆は怒ってるのではと思ったティモシーは、皆が怒っていたかと聞くと、ランフレッドは『悪いと思ったら誠心誠意謝る事だな』とだけ言ってほほ笑んだ。
ティモシーは、三人には嫌われたくないと思った。だからランフレッドの言う通り、誠心誠意な気持ちで謝った。
「許すも何も怒ってないわよ」
「そうだよ。無事でよかったよ」
「少しは成長したみたいだな。まぁ、これからも宜しくな」
「皆、ありがとう!」
ティモシーの笑顔を見て、三人は大丈夫そうだと安堵するのだった。
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