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第四章 魔術師の国の王子
第四十一話
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ティモシーは、あの後すぐに開放されたが、レオナールは暫くエクランド国に滞在すると聞き、生きた心地がしなかった。いつ呼び出され、実験台にされるかわからないからである。
そしてティモシーは今、ランフレッドと街中の雑貨屋の前に着いた所だった。王宮を出て、家ではなく街中へ向かったのだ。
「ほら、好きなの選べ」
「なんでまた、急に……。あんなにダメだって言っていたのに……」
「それじゃ、お前を守れないってわかったからだ。それに、髪を切って気分転換するつもりだっただろ? それの代わり。それと一人ではダメだがアリック達となら買いに来ていい。この店なら安心だからな」
ランフレッドは、ティモシーの安全を考えて、何でもダメだと押えこんでいた。それがなければ、エイブに騙され一人でついて行く事はしなかっただろう。それで買う店と一緒に来る人物を限定してだが、自由にさせようと考えた。自分だけでは目が届かない。そう、悟ったのだ。
「え? いいのか?」
「今日は俺が買ってやるが、自分で買う時はちゃんと考えて買えよ」
嬉しそうに聞くティモシーに、ランフレッドは頷いた。
「じゃ、ポーチにするかな!」
「ポーチ? まあ、何でもいいけど……」
ティモシーは上機嫌で、ポーチといいながら色んな物を見てまわる。そして、店の奥を見て指差した。
「これがいい!」
淡いオレンジ色のポーチで緑色のリーフの刺繍が施してあった。大きさは、今のより少し大き目、値段はポーチの中で一番高かった。
「高!」
「お嬢ちゃん、お目が高い! これは職人さんが刺繍を施したポーチ。あなたならとってもお似合いだよ」
ランフレッドが値段に驚いていると、店の亭主がそう声を掛けて来た。
(お嬢ちゃんって……)
「おや、失礼。王宮専属薬師なんだね。立派なレディーにお嬢ちゃんはないか。しかし、ランフレッド。いつのまにこんなにキュートな彼女を口説き落としたんだい?」
亭主はランフレッドの知り合いだった。と、いうか街中で王子であるルーファスの護衛のランフレッドを知らない者はいない。
(レディー……。キュート……だと!)
何故かティモシーは、ランフレッドを睨んだ。
「……なんで睨むんだ。ティモシーは彼女じゃなくて、俺は保護者兼後見人なんだ。まあ、これからもちょくちょく買い物に来ると思うから宜しく頼むわ」
そう言いながらランフレッドは、ティモシーの頭をポンポンとすると、ティモシーはベシッとその手を払いのける。
「いいお得意さんになりそうだ。ポーチの他に何かいるかい?」
「とりあえず、今回はそれだけでいい!」
ランフレッドは、慌ててそう言った。懐事情というモノがあり、このままホイホイ買われてもこまるのである。
「毎度あり! ティモシーさん、また買いに来てくださいね」
「絶対に来る!」
ティモシーは頷くと、亭主に手を振って店を後にした。
そしてティモシーは今、ランフレッドと街中の雑貨屋の前に着いた所だった。王宮を出て、家ではなく街中へ向かったのだ。
「ほら、好きなの選べ」
「なんでまた、急に……。あんなにダメだって言っていたのに……」
「それじゃ、お前を守れないってわかったからだ。それに、髪を切って気分転換するつもりだっただろ? それの代わり。それと一人ではダメだがアリック達となら買いに来ていい。この店なら安心だからな」
ランフレッドは、ティモシーの安全を考えて、何でもダメだと押えこんでいた。それがなければ、エイブに騙され一人でついて行く事はしなかっただろう。それで買う店と一緒に来る人物を限定してだが、自由にさせようと考えた。自分だけでは目が届かない。そう、悟ったのだ。
「え? いいのか?」
「今日は俺が買ってやるが、自分で買う時はちゃんと考えて買えよ」
嬉しそうに聞くティモシーに、ランフレッドは頷いた。
「じゃ、ポーチにするかな!」
「ポーチ? まあ、何でもいいけど……」
ティモシーは上機嫌で、ポーチといいながら色んな物を見てまわる。そして、店の奥を見て指差した。
「これがいい!」
淡いオレンジ色のポーチで緑色のリーフの刺繍が施してあった。大きさは、今のより少し大き目、値段はポーチの中で一番高かった。
「高!」
「お嬢ちゃん、お目が高い! これは職人さんが刺繍を施したポーチ。あなたならとってもお似合いだよ」
ランフレッドが値段に驚いていると、店の亭主がそう声を掛けて来た。
(お嬢ちゃんって……)
「おや、失礼。王宮専属薬師なんだね。立派なレディーにお嬢ちゃんはないか。しかし、ランフレッド。いつのまにこんなにキュートな彼女を口説き落としたんだい?」
亭主はランフレッドの知り合いだった。と、いうか街中で王子であるルーファスの護衛のランフレッドを知らない者はいない。
(レディー……。キュート……だと!)
何故かティモシーは、ランフレッドを睨んだ。
「……なんで睨むんだ。ティモシーは彼女じゃなくて、俺は保護者兼後見人なんだ。まあ、これからもちょくちょく買い物に来ると思うから宜しく頼むわ」
そう言いながらランフレッドは、ティモシーの頭をポンポンとすると、ティモシーはベシッとその手を払いのける。
「いいお得意さんになりそうだ。ポーチの他に何かいるかい?」
「とりあえず、今回はそれだけでいい!」
ランフレッドは、慌ててそう言った。懐事情というモノがあり、このままホイホイ買われてもこまるのである。
「毎度あり! ティモシーさん、また買いに来てくださいね」
「絶対に来る!」
ティモシーは頷くと、亭主に手を振って店を後にした。
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