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第四章 魔術師の国の王子

第四十話

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 「あの、一つだけいい……でしょうか? 俺、薬師として生きていきたいんです!」
 「勿論、構いませんよ。ブラッドリーも私も薬師です。いずれ私もブラッドリーのようにマイスターを取得するつもりです。ご一緒に目指しましょう」

 にっこり頷いてそう言われ、自分で逃げ道を塞いでしまったようだ。

 「え? レオナール王子も薬師なのか……じゃなくて、ですか?」

 眉をピクッとされ、慌ててティモシーは言い直す。

 「そうです。勿論、私もブラッドリーも実力で王宮専属薬師になりました。あなたと一緒ですね」

 (は? 王子なのに王宮専属って何だよ! って、もう逃げ場ないんだけど……)

 ティモシーはもう断りようがないと諦める事にした。とにかくバラさない様に今一度お願いする事にする。

 「わかりました。魔術師である事を隠して頂けるのなら協力します」
 「それはよかった。共に協力しあい、マイスターをめざしましょう」
 「は? マイスター?」

 魔術師としての協力じゃなかったのかと驚いて、ティモシーは声を裏返させる。

 「いいですか? 私でも治癒魔術は使えません。完ぺきではないのです。ですが、マイスターになれば、医療ができそれを補えるのです。まずは魔術の力を磨きつつマイスターを目指しましょう」
 「……はい」

 (なんかよくわかんないけど、どうせマイスターは取得するつもりだったしいいか……)

 無理難題を言われるのではないかと思っていたティモシーは、マイスター取得という簡単な願いでよかったと胸を撫で下ろした。

 「では、刻印を見せて頂きましょうか」
 「え? あ、はい……」

 レオナールがティモシーの横に移動してくる間に、前ボタンを外しておく。
 左胸についた刻印の痕は、魔術師の二人には古くなった傷跡のように見えた。それをレオナールは、そっと右手の指でなぞる。

 「初めてはっきりと拝見できました。……少し魔力で触れてみて宜しいですか?」

 拒否はできないのだから、ティモシーはこくんと頷いた。

 「では……」
 「いた!」

 刻印を刻まれてた時ほど痛くないが、ついレオナールの腕を掴み押えてしまった。

 「何をするのです!」
 「す、すみません!」

 慌ててティモシーは、手を離した。

 「まあ、いいでしょう。その痕はこれから調べさせて頂きます。宜しいですね」
 「え……。あ、あの、これって消さないとダメなものなのでしょうか……」

 このままでは実験台にされそうで、なんとか逃れられないかと思い聞いたのである。

 「ですから、それを含め調べるのではありませんか。今のところ、刻印を施された者で生き証人といいますか、そういう者はあなただけなのです」

 (マジかよ。それって俺が魔術師なの関係ないだろう……)

 ティモシーは、青ざめる。実験台確定だったからである。
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