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第三章 仕掛けられた罠

第二十八話

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 次の日、ここ一か月ほぼ無言で仕事をしていたティモシーだが、鼻歌でも歌いながら仕事をしそうな程機嫌がよかった。

 「お前、ほんとわかりやすいな……」

 呆れたようにダグが言う。
 三人共、エイブとの間に何か進展があったと手に取るようにわかった。

 「わかりやすいって何だよ……」

 ティモシーは、チラッとダグを見てボソッと言うと……

 「デートの約束でもしたのか?」

 ダグは遠慮なく聞いた。

 「別にデートじゃない! 一緒に買い物行くだけだ! あ!」

 ついティモシーは、そう言ってしまって慌てる。

 「え! 二人で出掛けるの? いつ?」
 「べ、別にアリックさんには関係ない」

 ティモシーはそっぽを向く。

 「関係ないって……。僕は心配してるんだよ。君、本当に噂の内容知ってる?」
 「内容? ……この前、ダグさんが言っていた内容だ……よね?」

 アリックは、困惑した顔をする。ティモシーは、彼の事をただの女たらしだと思っているのだと。本当の事を言いたいが、またそれによって傷つけたくないとも思い言い出せない。

 「ティモシー、一つだけ言っておく。お前が傷つけば、周りも悲しむって事は覚えておけよ」
 「なんで私が傷つく話になってるんだ! 別に買い物にいくだけだろう? 二人っきりっていったって周りに人はいる! それに本人と話した事もないのに、噂だけ信じるなんて! エイブさんはそんな人じゃないから!」
 「ちょっと!」

 ダグの言葉にそう返すとティモシーは、バンッと思いっきりドアを閉め、ベネットが止める間もなく部屋を出て行った。

 「どうしよう。これ、まずいよね?」
 「いいんじゃないか? 恋愛は自由なんだろう?」
 「そういう問題じゃないだろう! やっぱり噂の内容知らなかったんだから!」
 「今更何を言っても聞かないだろう? 思いっきりのめり込んでるだろう?」
 「だからこれ以上のめり込まない様に、ランフレッドさんに言う! 僕じゃ無理だろうし」
 「好きにすれば? お前が恨まれ役買って出るって言うなら別に止めない」
 「あぁ、そうするよ。今、憎まれてもティモシーが助かれば!」
 「え、ちょっと、今?」

 アリックもまた、ベネットが止める間もなく部屋を出て行く。しかも、会話にすら入れなかった。
 ベネットは溜息をもらす。
 ティモシーの気持ちもアリックの気持ちも理解出来る。
 彼女も出来るだけティモシーを傷つけたくないし助けたい。と頭を悩ます中、何事もなかったかのように、ダグだけは調合を行っていた。



 「こうなったらエイブさんと皆で出掛けるとか……」

 ティモシーは、バルコニーで風に当たりながらブツブツと、何とかしてエイブに対するの誤解を解こうと考えていた。
 バンッ!

 「やっぱりここにいた!」

 乱暴に開いたドアに振り向くと、ズカズカとティモシーにランフレッドが向かってくる。

 (え! ランフレッド!)

 ドアの所に目をやると、心配そうにアリックが立っていた。

 「言いに行ったの?」

 その問いに静かに彼は頷いた。
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