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第二章 仕事が始まったばかりなのに……

第二十話

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 「アリックじゃなくて、君の方が来るなんてな。今日はべっぴんさんも一緒とはついてるなぁ」

 ベネットは青ざめる。
 彼らはここで待ち伏せしていたのだ。つまり本気で復讐をするつもりに違いない。

 「どうしてここに配達があると……」

 ベネットが驚いて聞くと、男はニヤッとする。

 「別に王宮の薬師に聞かなくなって、届け先の奴らに聞けばいいだけだろう?」

 男たちは、相手を脅し聞きだしたのだろう。もしかしたら、ここにアリックが来るかもしれないと待ち伏せしていた。まさかそこまでするとは思わなかったベネットは焦る。

 「ティモシー、研究所まで走るわよ!」

 ティモシーは頷く。
 道を戻って交差する道に出る方が研究所に行くより近い。だが、必ず人に出会えるかわからない。それにそちら側の道には、声を掛けて来た緑色の髪の男が道を塞いでいる。

 「おっと、逃がさないぜ」

 走り出した二人の前に、紺色の髪の男が出て来て道を塞ぐ。

 (やっぱり昨日、のしっておくんだった!)

 ティモシーは、目の前を塞ぐ男を睨み付けた。

 「可愛い顔で睨んでも怖くないさ。それより昨日はよくも人前で恥をかかせてくれたな!」
 「今日は俺達の番だ!」

 男たちは恐怖を煽るように、一歩ずつ近づいてくる。

 「ティモシー、荷物を私に。いい? 全速力で走って研究所に逃げ込んで、助けを呼んできて」

 ベネットは、ティモシーの耳元で囁いた。それに頷くと、ティモシーはベネットに荷物を預ける。
 そして走り出した。だが、ベネットの言う通りにする気はなかった。
 どうせ捕まえようとしてくるのだから、暴れるフリをして倒そうと思ったのである。
 予想通り男はティモシーを捕まえようと追いかけて来た。ティモシーは、それにワザと捕まる。

 「離せ!」
 「おとなしくし……」

 ワザと暴れて見せ、ガツンと急所を蹴り上げる!
 ウッと言って、男はうずくまった。

 「ベネットさん、早くこっちに……」

 そう言って振り向くと、ベネットは男に捕まっていた。

 「ティモシー早く行って!」
 「おっと、大人しくしなって。おい、ティモシーこっちに来な。まあ、この女置いて行くっていうならそれでもいいけどな」

 よく見れば、男はナイフを持って首元に当てていた。

 (っち。二人共女だと思っている相手に刃物かよ! まあ、いいや。こいつものしってやる!)

 ティモシーは、怯えたフリをして二人に近づく。あまり上手ではないが、効果はあった。

 「ティモシーだめよ!」
 「よーしいい子だ。おっとそこで止まれ」

 あと少しで手が届く、いや蹴りが届く場所で止められる。何をするのかと見ているとポケットから縄を取り出した。

 「縄まで用意していたのかよ!」

 つい驚いてティモシーは叫んだ。男はニヤリとする。

 「両手を出せや、ティモシー」

 (手を縛る気かよ)

 ティモシーは仕方なく両手を突き出す。

 「ほら早く縛れ!」
 「で、出来ないわ……」
 「殺されたいのか!」

 拒否するベネットに男は叫び、胸元をナイフで切り裂く!

 「やめろ! ベネットさん、縛って!」

 ティモシーがそう言うと、震える手でベネットはティモシーの腕を縛る。

 「もっとちゃんと縛れ!」

 男に催促され仕方なく、しっかりと手首を縛った。

 「ったく、いてえぇな」

 後ろから声が聞こえてきた。
 男は痛みに耐えながらも起き上がり、三人に元へ進む。

 (っち。もう復活したのかよ。気を失わせておくんだった)

 当初の計画では、男が倒れた隙に二人で研究所に逃げ込むつもりだったティモシーは、男に二打目は入れていない。
 バシッ!
 紺色の髪の男に腕を掴まれ振り向かされたティモシーに、男は容赦なく平手打ちをした!

 「っつ……」
 「ティモシー!」

 ベネットが悲鳴を上げるような声で名を叫んだ。ティモシーは俯いたままだ。
 ティモシーは、ベネットが捕まっていて男が復活した以上、隙見て反撃するしかないと大人しくする事にした。
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