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第二章 仕事が始まったばかりなのに……
第十二話
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ランフレッドと別れたティモシーは、調合室に向かった。
部屋は三階で十も部屋があり、新人三人は一番奥の十号室だった。
王宮内を端から端まで歩く感じだ。
ドアを開けると、もう二人は来ていた。
「あ、おはよう。ティモシー」
ドアに振り向いたアリックが、一番に声を掛けて来た。
「おはようございます!」
直立不動。ピシッと立ち、バッと頭を下げる。
その姿に部屋にいた者達は、目をぱちくりとする。
アリック達以外にオーギュストと女の薬師もいた。
彼女の碧い髪は短く碧い眼も鋭い為一瞬男性かと思うも、胸に目をやれば女性だと一目瞭然だった。
「あははは。お前、緊張しすぎ!」
ダグは笑い出す。
ティモシーは単に、オズマンドに習ったお辞儀をしただけなのだが、それを見た者の目には緊張のあまりカチコチになっていると映った。
「大丈夫だよティモシー。もうダグさんが昨日脅すから……」
(俺、何か脅されたっけ?)
昨日ダグが洗礼を受けると言った言葉で緊張しているのだと思ったアリックだったが、ティモシー本人は『洗礼=脅し』ではなかった為、何の事かわからなかったのである。
オーギュストも少し呆れた顔をするが、ティモシーに二人の横に並ぶように言った。
彼は試験がない時は、指導係も兼務していた。
ティモシーが二人の隣に並ぶと、オーギュストは隣にいる薬師の紹介を始める。
「皆さん、おはよう。今日からあなた達の指導を行うベネットだ。暫くは彼女の元で仕事に励み、早く仕事を覚えて欲しい。ベネット、ご挨拶を」
ベネットは軽く頭を下げる。
「紹介にあったように、今日から私があなた達の指導にあたります。わからない事があったら勝手に行わず、必ず聞いてほしい。特にティモシー、あなたは仕事の経験がないようなので……」
ティモシーは、真顔を頷いた。
ここでも直立不動。
ランフレッドの前での姿が本来の姿だが、それを隠す術はオズマンドから習った言動だ。薬師の中で行えば、ただ単に緊張した人物に見えるが、兵士の中に居れば違和感はないだろう。
「大丈夫かよ……」
ダグがボソッと漏らす。
ベネットも苦笑いをし、オーギュストと顔を見合わせた。
ティモシー本人だけが、どう思われているか気づいていなかったのである。
ベネットの挨拶が終わると後の事は彼女に任せ、オーギュストは部屋から出て行った。
「さて、これからの作業について説明します」
ベネットの言葉に三人は頷く。
「まず暫くは、十三時まで苦臭素草の調合をやって頂きます。昼食後、配達があれば配達をして頂きます。ない場合は、倉庫の整理や他の人の手伝いを行って頂きます」
「え! 午後からも仕事あるの?」
「当たり前です!」
驚きの声を上げたティモシーに、ベネットは睨みをきかせ言葉を続ける。
「あなた、仕事をなめるんじゃないわよ!」
普通のか弱い少女だと泣き出すところだが、ティモシーは『はい、申し訳ありません!』と返事を返し皆を驚かせた。勿論直立不動である。
「まあ、わかったのならいいわ……」
仕事をした事がないティモシーは知らなかったが、午後から配達は一般的だった。当然の事だったので、昨日はそこまで説明がないだけだった。
苦臭素草とは、擦り潰すと強烈な臭いを放つ草で、その匂いを消す為の調合が必要だった。凄く苦みがあるが、他に混ぜると薬の効果を高めるので一般的に使用されている草だ。
だがその調合は、ティモシーが一番苦手とするモノだった。臭いで具合が悪くなるのだ。なので村では屋外でやっていた作業だ。それをここで、しかも三人同時に行うのである。
(考えるだけで、具合が悪くなる)
初日から心が折れそうになるティモシーだった。
部屋は三階で十も部屋があり、新人三人は一番奥の十号室だった。
王宮内を端から端まで歩く感じだ。
ドアを開けると、もう二人は来ていた。
「あ、おはよう。ティモシー」
ドアに振り向いたアリックが、一番に声を掛けて来た。
「おはようございます!」
直立不動。ピシッと立ち、バッと頭を下げる。
その姿に部屋にいた者達は、目をぱちくりとする。
アリック達以外にオーギュストと女の薬師もいた。
彼女の碧い髪は短く碧い眼も鋭い為一瞬男性かと思うも、胸に目をやれば女性だと一目瞭然だった。
「あははは。お前、緊張しすぎ!」
ダグは笑い出す。
ティモシーは単に、オズマンドに習ったお辞儀をしただけなのだが、それを見た者の目には緊張のあまりカチコチになっていると映った。
「大丈夫だよティモシー。もうダグさんが昨日脅すから……」
(俺、何か脅されたっけ?)
昨日ダグが洗礼を受けると言った言葉で緊張しているのだと思ったアリックだったが、ティモシー本人は『洗礼=脅し』ではなかった為、何の事かわからなかったのである。
オーギュストも少し呆れた顔をするが、ティモシーに二人の横に並ぶように言った。
彼は試験がない時は、指導係も兼務していた。
ティモシーが二人の隣に並ぶと、オーギュストは隣にいる薬師の紹介を始める。
「皆さん、おはよう。今日からあなた達の指導を行うベネットだ。暫くは彼女の元で仕事に励み、早く仕事を覚えて欲しい。ベネット、ご挨拶を」
ベネットは軽く頭を下げる。
「紹介にあったように、今日から私があなた達の指導にあたります。わからない事があったら勝手に行わず、必ず聞いてほしい。特にティモシー、あなたは仕事の経験がないようなので……」
ティモシーは、真顔を頷いた。
ここでも直立不動。
ランフレッドの前での姿が本来の姿だが、それを隠す術はオズマンドから習った言動だ。薬師の中で行えば、ただ単に緊張した人物に見えるが、兵士の中に居れば違和感はないだろう。
「大丈夫かよ……」
ダグがボソッと漏らす。
ベネットも苦笑いをし、オーギュストと顔を見合わせた。
ティモシー本人だけが、どう思われているか気づいていなかったのである。
ベネットの挨拶が終わると後の事は彼女に任せ、オーギュストは部屋から出て行った。
「さて、これからの作業について説明します」
ベネットの言葉に三人は頷く。
「まず暫くは、十三時まで苦臭素草の調合をやって頂きます。昼食後、配達があれば配達をして頂きます。ない場合は、倉庫の整理や他の人の手伝いを行って頂きます」
「え! 午後からも仕事あるの?」
「当たり前です!」
驚きの声を上げたティモシーに、ベネットは睨みをきかせ言葉を続ける。
「あなた、仕事をなめるんじゃないわよ!」
普通のか弱い少女だと泣き出すところだが、ティモシーは『はい、申し訳ありません!』と返事を返し皆を驚かせた。勿論直立不動である。
「まあ、わかったのならいいわ……」
仕事をした事がないティモシーは知らなかったが、午後から配達は一般的だった。当然の事だったので、昨日はそこまで説明がないだけだった。
苦臭素草とは、擦り潰すと強烈な臭いを放つ草で、その匂いを消す為の調合が必要だった。凄く苦みがあるが、他に混ぜると薬の効果を高めるので一般的に使用されている草だ。
だがその調合は、ティモシーが一番苦手とするモノだった。臭いで具合が悪くなるのだ。なので村では屋外でやっていた作業だ。それをここで、しかも三人同時に行うのである。
(考えるだけで、具合が悪くなる)
初日から心が折れそうになるティモシーだった。
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