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第一章 薬師になろうとしただけなのに……

第九話

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 「アリック……さん?」

 彼は頷いた。
 ティモシーはランフレッドに、目上には『さん』は絶対つけろよ! と言われていた。ついでに『皆、目上だけどな』とからかわれもしたが。オズマンドに至っては、殿を付けてと呼べ! と言われていた。

 「俺は、ダグで宜しく。何かわからない事があったら何でも聞けよ!」

 (誰がお前なんかに聞くかよ!)

 心の中でそう思いながらも、一応頷いておく。
 ムカついても無視はせず、頷く事はしておけ! これもランフレッドに言われた事だった。

 「でさ、ティモシー。お前いくつなんだ?」

 ダグが気になったのか聞いて来た。
 ティモシーは、年齢なんてどうでもいいだろうと思いつつも答える。

 「今年で十六」
 「十六! 若いとは思っていたけれど……」
 「若すぎないか? 大丈夫かよ……」

 一般的には、早いもので十八歳ぐらいに薬師になり、王宮専属薬師やマイスターと言われる薬師のトップクラスは、早い者で二十代後半。
 ティモシーの母親もマイスターである。
 それを踏まえると、驚くほどの異例であるのは間違いない。
 ダグの言葉にティモシーは、フンとそっぽを向く。

 (大丈夫だから、選ばれたんだろうが!)

 と、言い返したいが言葉を飲み込み、グッと我慢した。

 「陛下が認めたんだから大丈夫だよ。でも多分薬師の仕事はした事ないと思うから、僕らがカバーしてあげようよ」

 アリックの意見にダグは頷いた。

 「まあ、そうだな。で、アリックはいくつだ? 俺は二十九」
 「二十三です。五年ほど薬師の仕事をして受けたんです」

 アリックはそう返した。

 「お前も十分若いな……」
 「やっぱり一旦、薬師になってから受けてるんだ……」

 ティモシーは、ランフレッドが言っていた言葉を思い出し聞いた。

 「当たり前だろう? お前が異常……いや、特別なんだ」

 ダグの返事にアリックは、そうんな言い方をしなくてもとチラッと彼を見た。

 「君の年齢で薬師の試験を受ける者だって少ないよ。知識と技術の両方が必要だからね。それに、王宮に務める者を決める時は大抵、仕事をした事をあるものを基準としていると思うよ。その方がすぐに戦力なるだろうし。でも、規定では仕事の有無はないから。ただ仕事の経験がないなら大変かもね」

 アリックは、ティモシーに向き直りそう説明をした。
 経験がないティモシーを雇おうと思ったほどの成績だった事になる。

 「まあお前は、色んな洗礼受けそうだな……」

 (なんだよ、その洗礼って!)

 ダグに言われて、ムッとしてティモシーはそっぽを向く。

 「あんまり脅さないであげなよ」
 「親切で言っているんだ。自分より年下が自分より出来たら、そりゃ当たりたくもなるだろうよ。それはアリック、お前も当てはまるからな!」

 アリックは、嫌そうに顔をしかめ答える。

 「わかってるよそれは。もう前の職場で経験済みだから……」
 「そんな事しても仕方がないだろうに……」

 ボソッとティモシーはこぼした。

 「それが現実だ。まあここでは、あからさまにはないとは思うが……」
 「だといいけど……」

 ダグの言葉にアリックは呟くように返した。
 その後三人は、オーギュストから軽く説明を受け、王宮専属薬師の制服を受け取り解散となった。
 仕事は明日からで、当分の間は朝八時から十三時までと伝えられた。
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