【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第一章 薬師になろうとしただけなのに……

第八話

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 通された部屋には円卓が真ん中に設置されており、一つの椅子の向かい側に三つ椅子が置いてある。この三つの椅子に順番に座るように言われ、ダグ、アリック、ティモシーの順に座るとカードは回収された。
 テーブルの上には、ペンと何やら用紙が置いてあった。
 ティモシー達と数人の監察官だけだったが、五分ぐらいするとオーギュストが入って来た。

 「三人もお疲れ様でした。では、これから契約を結びたいと思います」

 そう言って、オーギュストは三人の前に設置されていた椅子に腰を下ろした。

 「そこに王族専属薬師の約款がる。それに目を通し理解をしたならば、署名をするように」

 彼の言葉に三人は、用紙に目をやった。
 この用紙は契約書で、別紙の約款に同意し署名するようになっていた。
 契約書をどけると、約款が数ページあった。

 「え? これ全部、今覚えるのかよ……」
 「いや、今読んで納得したのならば署名し、その約款は持ち帰って保管しておいてほしい」

 ティモシーが驚いた呟やきに、オーギュストが答えた。
 内容は仕事に関する事から、王宮内の規則などである。
 例を上げると、知り合いであっても関係ない者は、許可なく王宮内には入れない。
 私物以外は、王宮の外に持ち出さない。
 機密である内容は、他に漏らさない。
 などである。
 不服があったとしても、署名しない場合は本契約にならない。三人は迷うことなく署名する。
 三人が署名した契約書は集められ、監査官の一人が持って部屋を出て行った。

 「さてお腹もすいた事だろう。まずは腹ごしらえしてから詳しい話をしよう」

 オーギュストはそう言うと、監査官に合図を送った。そうすると、部屋の奥から料理が出され、ティモシー達の目の前に置かれた。
 パンにサラダ、ハムにスープ。デザートまでついていた。
 先ほどから美味しそうな匂いが漂っていた。正体はこれだったのかとティモシーは思いジッと見つめていた。

 「遠慮なくどうぞ。我々も隣の部屋で昼食をとりますので、食べ終わったらそのテールに置いておいて下さい。では、一時間後に」

 壁側に設置されているテーブルを指差し軽く礼をすると、オーギュスト達は部屋を後にした。自分達がいては落ち着かないだろうとの配慮だろうが、ティモシーにすればこれはこれで落ち着かない。
 今日会った二人だし、一人は魔術師の可能性が高いのだから……。

 (気にしても仕方がない。お腹がすいたし食べるか……)

 「いただきます!」

 ティモシーは、そう言うとバクバク食べ始めた。
 二人はその姿を唖然として見ていた。可憐な少女に見えていたので、食べきれないのでは? と思っていたのに、すごい勢いで食べ始めたからである。
 ティモシーは、背が低かろうが食べ盛り。相手がどう思うが関係なく食べた。



 三人は食べ終わった食器を言われた通り、壁側のテーブルの上に置いた。
 勿論ティモシーは完食した。
 お腹がいっぱいになり気分が落ち着いたティモシーは、テーブルに置いていた小さな木箱に目が行く。

 (そういえば、これなんだろう?)

 木箱を手に取りカパッと開け、中を覗き込む。
 そこには、直径二センチほどの円にリーフが描かれたバッチが入っていた。

 「何これ?」

 ティモシーの呟きに、二人は驚いて目を丸くする。

 「何って……。王宮専属薬師に配られるバッチだよ。それが、僕達の身分証明にもなるから無くさないようにね。裏に通し番号が記載されているから、同じモノはないよ」

 アリックは、ティモシーに優しく説明をしてくれた。

 「あははは。無くしたら罰則があるから」

 ダグの方は、笑いが止まらないという感じで付け加えた。
 ティモシーは、顔を赤らめながらムッとして俯く。

 (知らなかったんだから、仕方ないだろうが!)

 「僕は、アリック・ガイトル。アリックって呼んで。君は、ティモシーだったよね?」

 アリックは場を和ませる為か、ティモシーにそう話しかける。ティモシーがチラッと彼を見ると、にっこりほほ笑んだ。
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