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第一章 薬師になろうとしただけなのに……

第六話

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 ティモシーは出来上がり、隣に並ぶ二人を観察する。もしかしたらもう一人も魔術師なのでは? と、疑心暗鬼になっていた。
 一番端の十七番は、ティモシーより少し年上に見える男性。手つきは繊細で、優し気な雰囲気だ。黒い髪を汗で顔に引っ付かせて、一生懸命作業をしていた。
 多分、グスターファスの前で緊張をしているのだろう。
 さて、問題の隣の二十二番は、二十代後半に見える男性で、ひょろっとしていて背が高い。髪は赤に近い茶色。ティモシーと同じぐらい長い髪を後ろで束ねている。
 その彼がふとティモシーに振り向いた。髪と同じ瞳と目が合ってしまい、ハッとして俯く。

 (バレた? いや、バレるはずはない)

 ティモシーは、魔術師だとバレたかもしれないと、気が気じゃない。
 魔術は使っていない。実力で勝負したのである。余程でなければ、相手が魔術師あろうがバレようがない。
 だが、隣の人物がニヤッとしたのが伺えた。

 (こんな事になるのなら、大人しく帰ればよかった……)

 ティモシーは、最早にランフレッドはもう役に立たないと思った。相手は魔術師。彼が凄い腕の立つ人物だろうと、勝てないだろうと思ったのである。

 「素晴らしい!」

 作業を終えた三人に掛けたグスターファスの声に、ティモシーはビクッとしてしまう。

 (びっくりした……)

 「では、席に戻って下さい」

 オーギュストがそう三人に声を掛けた。ティモシー達は、頭を下げ一例すると壇上を降りる為に振り向いた。
 ティモシーは、こちらを伺う試験を受けに来た者達の視線が、自分に集中するのがわかった。

 (あぁ、もう嫌だ……。あれ……?)

 ティモシーは、あるモノに目がいった。それは、カードである。半分以上が青。ティモシーと同じ赤色の人は、女性に見えた。つまりこの色分けは、性別を表すのではないか。
 湧き上がった疑問を確認する為、ティモシーは一緒に壇上から降りる二人に振り向く。二人共青だった!

 (げっ! 俺、男に○つけただろう! って、何であの人も何も言わなかったんだ!)

 勿論、あの人とはランフレッドの事である。知らないはずがないのだから……。
 席に戻ったティモシーは、ずっと頭を抱えていた。
 受かった所で、取り消しになったらどうしようか? いやいや、自分は正しく記入した。問題ない。でも……。
 っと、全員の実技が終わるまで同じ事をグルグルと考えていた。そうした所で仕方はないのだが。
 今回の筆記試験に合格した者は、三十名程だった。ランフレッドは、筆記はいつも通りと言っていたが、実際は難しかったのである。
 それでも、筆記試験を突破した者達の実技試験は、四時間を要した。その間ティモシーは、あーでもない、こーでもないとずっと頭を悩ませていた為、退屈はしなかった。だが、どっと疲れたのは言うまでもない。
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