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45話
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「なるほど、一年間だったのね。それで、納得だわ」
ラボランジュ公爵夫人が、そう言って見た先はクラリサだった。
「な、何よ」
「クラリサ。お前は口を開くな」
「でも! まるで私が全然教育が足りていないって言う顔を向けているのよ。私は、べ――」
「クラリサ黙れ!」
クラリサは、ビクッとして驚きの表情をする。
まるで、メルティを怒鳴っている時と同じだったからだ。
「私は、の続きは何だったのかしらね? もしかして、違う教師にも教わっていたりして」
(え? 別の教師? でも小さな頃に習ってから自宅に訪れた教師はただ一人よ。リンアールペ侯爵夫人だけ)
不安げにメルティは、イヒニオを見ると彼はラボランジュ公爵夫人を睨みつけていた。
「何を言い出すと思えば」
「あなた、本当に図々しいわね。あなたが当主になる前からあるレドゼンツ伯爵家の財産は、メルティの教育などのみ使用していい事になっていたわよね」
「調べたのか!」
「当たり前でしょう。これは、裁判よ!」
契約では口を出せない事になっている。なので、勝手に調べる事は契約違反になるが、イヒニオが契約違反を行っているという疑惑があれば、裁判を起こす予定があると国に申し立て認められれば、調べる事は違法ではない。
もちろんだが、それも資料として提出されている。
ラボランジュ公爵夫人は、わざとクラリサを煽ったのだ。彼女が口を滑らせれば、手間が省ける。
「さて、提出された資料によれば、メルティは週に一度出向いて教育を受けている事になっている。それは、今も続いている事になっているが?」
イヒニオは、陛下の言葉に息を呑んだ。
バレない様に細工をしていた。ざっと見ただけではわからない様にしたのに、どうしてバレたのだ。
ふと、リンアールペ侯爵夫人を見ると彼女は冷ややかな視線をイヒニオ達に向けていた。
「まさか……」
「そうよ。私以外にレドゼンツ伯爵家の娘を教育している方を突き止めたわ。本当に驚いたわよ。その方、メルティ嬢の存在を知らなかったわよ。そして、当主になるべくの教育を受けていたと聞いたわ」
リンアールペ侯爵夫人の言葉に、メルティも驚く。まさかクラリサが外で教育を受けているなど知らなかったからだ。
教育者を探すなら同じ教育者が探す方が早い。だからリンアールペ侯爵夫人にお願いしたのだ。
公にしない契約になっていたとしても、リンアールペ侯爵夫人になら話すだろう。教育界で名の知れた者なのだから。レドゼンツ伯爵家の娘に教育を施している者は、すぐに見つかった。
その後、自分もレドゼンツ伯爵家の娘に教育を施していると告げ、協力を仰いだのだ。
イヒニオが伯爵の当主として財務の仕事を選んだのは、上手く誤魔化す手段を知る為だった。そのおかげで今までバレずにいたのにと悔しそうな顔つきだ。
だがそれがアダになった。
リンアールペ侯爵夫人に教育を受けていると言うのに、バカ高い教育費が発生しているのだ。さかのぼって調べてみれば、五年程前からだった。
「さて、もう一度問うが、二人には同等な教育を施したと言ったな。それは真実か?」
「それは……」
「どうして、私が教育を受けてはいけないの? 私もレドゼンツ伯爵家の娘よ!」
先ほどから聞いていれば、クラリサは当主にはなれないと話しているのだ。だがしかし、両親からは自分が当主になるとメルティとは別に教育を受けていた。
それが、どうだろうか。メルティが聖女だとバレた途端に、彼女がそうあるべきだと議論されている。
クラリサは、そう受け取っていた。
「あなた、もう忘れたの? 本来は男爵家の娘――」
「あなたの言う事など信じられないわ!」
「やめなさい、クラリサ!」
ラボランジュ公爵夫人の言葉を遮りクラリサが叫ぶと、その彼女をイヒニオは怒鳴りつけた。
「君は、何も知らされていないのだな。しかし今、12年前の契約についての審議を行われているのはわかっているだろう。今までの話の流れを聞けば――」
「メルティが聖女だとわかったから、みんな手のひらを返したのでしょう」
ルイスが見かねてそう言えば、驚くような事をクラリサは言う。
なぜそうなると、イヒニオも含め全員思った。
「昨日も契約の話が出たと言うのに、彼女に何の説明もしなかったのですか? まだ何とかなると思っていたのでしょうけど……」
ラボランジュ公爵夫人が、呆れた様に言う。クラリサにとっても大事な話だと言うのに、ラボランジュ公爵夫人の言う通り話さなかった。話したとしても、受け入れられないだろうと思っての事だが、まだ打つ手があると思っていたからだ。
まさか、次の日に召致されるとは思ってもみなかった。
「契約、契約って10年以上前の事なのでしょう! そんなのもう無効よ!」
「「!!」」
クラリサの言葉に、全員が絶句する。
「これでおわかり? バレダバレ男爵ご夫妻。あなたたちが、してきた結果よ。彼女の育て方も間違えていた」
ラボランジュ公爵夫人は、イヒニオ達を男爵の家名で呼んだ。そう呼ばれるのも、今日が最後かもしれないが。
ラボランジュ公爵夫人が、そう言って見た先はクラリサだった。
「な、何よ」
「クラリサ。お前は口を開くな」
「でも! まるで私が全然教育が足りていないって言う顔を向けているのよ。私は、べ――」
「クラリサ黙れ!」
クラリサは、ビクッとして驚きの表情をする。
まるで、メルティを怒鳴っている時と同じだったからだ。
「私は、の続きは何だったのかしらね? もしかして、違う教師にも教わっていたりして」
(え? 別の教師? でも小さな頃に習ってから自宅に訪れた教師はただ一人よ。リンアールペ侯爵夫人だけ)
不安げにメルティは、イヒニオを見ると彼はラボランジュ公爵夫人を睨みつけていた。
「何を言い出すと思えば」
「あなた、本当に図々しいわね。あなたが当主になる前からあるレドゼンツ伯爵家の財産は、メルティの教育などのみ使用していい事になっていたわよね」
「調べたのか!」
「当たり前でしょう。これは、裁判よ!」
契約では口を出せない事になっている。なので、勝手に調べる事は契約違反になるが、イヒニオが契約違反を行っているという疑惑があれば、裁判を起こす予定があると国に申し立て認められれば、調べる事は違法ではない。
もちろんだが、それも資料として提出されている。
ラボランジュ公爵夫人は、わざとクラリサを煽ったのだ。彼女が口を滑らせれば、手間が省ける。
「さて、提出された資料によれば、メルティは週に一度出向いて教育を受けている事になっている。それは、今も続いている事になっているが?」
イヒニオは、陛下の言葉に息を呑んだ。
バレない様に細工をしていた。ざっと見ただけではわからない様にしたのに、どうしてバレたのだ。
ふと、リンアールペ侯爵夫人を見ると彼女は冷ややかな視線をイヒニオ達に向けていた。
「まさか……」
「そうよ。私以外にレドゼンツ伯爵家の娘を教育している方を突き止めたわ。本当に驚いたわよ。その方、メルティ嬢の存在を知らなかったわよ。そして、当主になるべくの教育を受けていたと聞いたわ」
リンアールペ侯爵夫人の言葉に、メルティも驚く。まさかクラリサが外で教育を受けているなど知らなかったからだ。
教育者を探すなら同じ教育者が探す方が早い。だからリンアールペ侯爵夫人にお願いしたのだ。
公にしない契約になっていたとしても、リンアールペ侯爵夫人になら話すだろう。教育界で名の知れた者なのだから。レドゼンツ伯爵家の娘に教育を施している者は、すぐに見つかった。
その後、自分もレドゼンツ伯爵家の娘に教育を施していると告げ、協力を仰いだのだ。
イヒニオが伯爵の当主として財務の仕事を選んだのは、上手く誤魔化す手段を知る為だった。そのおかげで今までバレずにいたのにと悔しそうな顔つきだ。
だがそれがアダになった。
リンアールペ侯爵夫人に教育を受けていると言うのに、バカ高い教育費が発生しているのだ。さかのぼって調べてみれば、五年程前からだった。
「さて、もう一度問うが、二人には同等な教育を施したと言ったな。それは真実か?」
「それは……」
「どうして、私が教育を受けてはいけないの? 私もレドゼンツ伯爵家の娘よ!」
先ほどから聞いていれば、クラリサは当主にはなれないと話しているのだ。だがしかし、両親からは自分が当主になるとメルティとは別に教育を受けていた。
それが、どうだろうか。メルティが聖女だとバレた途端に、彼女がそうあるべきだと議論されている。
クラリサは、そう受け取っていた。
「あなた、もう忘れたの? 本来は男爵家の娘――」
「あなたの言う事など信じられないわ!」
「やめなさい、クラリサ!」
ラボランジュ公爵夫人の言葉を遮りクラリサが叫ぶと、その彼女をイヒニオは怒鳴りつけた。
「君は、何も知らされていないのだな。しかし今、12年前の契約についての審議を行われているのはわかっているだろう。今までの話の流れを聞けば――」
「メルティが聖女だとわかったから、みんな手のひらを返したのでしょう」
ルイスが見かねてそう言えば、驚くような事をクラリサは言う。
なぜそうなると、イヒニオも含め全員思った。
「昨日も契約の話が出たと言うのに、彼女に何の説明もしなかったのですか? まだ何とかなると思っていたのでしょうけど……」
ラボランジュ公爵夫人が、呆れた様に言う。クラリサにとっても大事な話だと言うのに、ラボランジュ公爵夫人の言う通り話さなかった。話したとしても、受け入れられないだろうと思っての事だが、まだ打つ手があると思っていたからだ。
まさか、次の日に召致されるとは思ってもみなかった。
「契約、契約って10年以上前の事なのでしょう! そんなのもう無効よ!」
「「!!」」
クラリサの言葉に、全員が絶句する。
「これでおわかり? バレダバレ男爵ご夫妻。あなたたちが、してきた結果よ。彼女の育て方も間違えていた」
ラボランジュ公爵夫人は、イヒニオ達を男爵の家名で呼んだ。そう呼ばれるのも、今日が最後かもしれないが。
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