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16話
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「で、今日は何か見たか」
次の日の朝食時、イヒニオが聞いてくるもメルティは違和感を覚えた。
そう三人共テンションが低いのだ。
クラリサに至っては、昨日、聖女の祝賀会が行われたというのに機嫌が悪い。
「今日は見ておりません」
「そうか」
「本当に見ていないの? 教えたくないだけではなくて」
イヒニオが納得したのに対し、クラリサは疑いの眼差しを向ける。
「本当です」
「嘘よ。あなた、あの時、私を止めたじゃない」
その言葉に、メルティはビクッと体を震わせた。
「やっぱりそうなのね」
「………」
「なんの事だ」
「私の代わりに池に落ちた事よ。きっと、わざとだわ」
「わざとではないわ。私は、お姉様と違うわ!」
「違うって何よ」
「やめないか二人共」
喧嘩を始めた二人をイヒニオが諫める。
「で、どういう事なのだ、クラリサ。わかるように説明せい」
「だから、私が起こす行動を予言して、代わりに池に落ちてみせたのよ!」
「そうなのか!」
「だから違うわよ!」
メルティは、焦っていた。まさか、見透かされるとは思っていなかったからだ。
「あらでも、夢で見るのではなくて?」
不思議そうにファニタが問う。
「夢ではないみたいね。そうじゃないとおかしいもの。あの二人が止められなかったのよ。しかもメルティは、倒れ込んでいた!」
「なるほど。なぜ嘘をつく。言っただろう。聖女のサポートしろと」
(なぜ私が責められるの?)
三人が、責める様にメルティを見つめる。
「本当です。それに、内容や見る時を操作できません。勝手に見えるのです」
「嘘よ! ではなぜ、馬車が壊れるのがわかったのよ! それ以外は、使用人の事じゃない」
そう言われても困ると思うメルティだが、そうなのだから仕方がない。
他の人にも見せる事が出来れば納得させられるだろうが、見せる事が出来たとしても三人には見せる気にはならないだろう。
「私の周りの人の事を見る様です。あの時は、お父様が大変な目に遭うと見えただけだと思います」
「何? だとすると、お前の能力はこの家の者に限るというのか」
初めて知ったとイヒニオが驚きの顔つきをする。
そうならば、聖女として役に立たない。
国の大事を予言できないとしても、せめて王家に関わる事を予言できなければ意味がないのだ。
「そうです。今までがそうでしたから。何も起こらなければ、何も予言しない。だから毎日見ないのだと思います」
本当は、手を浸せば何度でも見えるが、それは言わないでおく。
「何それ。それでは意味がないしゃない!」
「そうだな。何とかせねばな。自分に近い人を予言するという事ならば、ルイス殿下と接点を持つのも一つか」
「どういう意味ですか、お父様!」
クラリサが、叫ぶ。
「落ち着け、クラリサ。いいか。二人っきりで会うのではなく、メルティを連れて行く。予言を見たらそれをクラリサが予言として、ルイス殿下に伝えればいいのだ」
「まあ、いい考えね。そうすれば、予言も信じて頂けるし、うまく行けばまた……」
ファニタが賛成だと、嬉しそうに述べた。
「そうね。メルティが一緒なのは気に食わないけど、仕方がないわね」
(私は嫌よ。なぜそこまでしなくてはいけないのよ)
「あら、不服そうね。でもそれが、あなたの勤めよ。それがあなたの立場なの」
ムッとした顔つきになったメルティに、クラリサは睨みつけながらそう言った。
(立場って! 逆でしょう。聖女なのは、私の予言のお陰じゃない)
「いいか、メルティ。もしクラリサが聖女として役に立たないとなれば、王家としても面目が立たない。わかったか。クラリサを立てるという事は、陛下を立てるという事だ」
さも素晴らしい事を言ったと言う顔つきでイヒニオは、うんうんと頷く。
聖女としてクラリサを発表した以上、クラリサが聖女として役目を果たさなければ陛下の面目が立たないのだから、協力しろと言われてメルティは協力するしかないとと、項垂れる。
「わかりました……」
でもやっぱり、気は進まない。婚約した二人について歩くなどしたくもない。だが、クラリサの事の予言よりルイスに関する予言の方が、信憑性があるのは確かだ。
自分自身の事を予言したとなれば、自作自演も疑われるかもしれないが、ルイスの事ならば、それは不可能なのだから。
メルティは、朝食後に予言の事を相談する為にアールを訪ねた。
「おや、メルティお嬢様、何かありましたか?」
「はい。お父様やお母様に内緒で、相談があります」
「わかりました。お聞きしましょう」
にっこりとほほ笑んで、アールは二つ返事で返した。
メルティは、安堵する。
「それで、ご相談とは何でしょうか」
「予言の事です」
「予言ですか」
ふむと頷くアールに、メルティもこくんと頷く。
「馬車事件の予言をしたのは、私だとアールはご存じですよね?」
聖女となるきっかけの事件の事だ。
「えぇ。泣いてお止めでしたね。それがきっかけで……」
「はい。そうです。ですが、聖女になったのはお姉様なのです」
ふむとまたアールが、頷いた。
このまま話せば、信じて貰えそうだとメルティは、話を続ける。
「体調を崩した私の代わりにお姉様が行って、そのまま代わりに聖女になってしまったのです!」
「そのようですね」
アールは、そう言って力強く頷いた。
次の日の朝食時、イヒニオが聞いてくるもメルティは違和感を覚えた。
そう三人共テンションが低いのだ。
クラリサに至っては、昨日、聖女の祝賀会が行われたというのに機嫌が悪い。
「今日は見ておりません」
「そうか」
「本当に見ていないの? 教えたくないだけではなくて」
イヒニオが納得したのに対し、クラリサは疑いの眼差しを向ける。
「本当です」
「嘘よ。あなた、あの時、私を止めたじゃない」
その言葉に、メルティはビクッと体を震わせた。
「やっぱりそうなのね」
「………」
「なんの事だ」
「私の代わりに池に落ちた事よ。きっと、わざとだわ」
「わざとではないわ。私は、お姉様と違うわ!」
「違うって何よ」
「やめないか二人共」
喧嘩を始めた二人をイヒニオが諫める。
「で、どういう事なのだ、クラリサ。わかるように説明せい」
「だから、私が起こす行動を予言して、代わりに池に落ちてみせたのよ!」
「そうなのか!」
「だから違うわよ!」
メルティは、焦っていた。まさか、見透かされるとは思っていなかったからだ。
「あらでも、夢で見るのではなくて?」
不思議そうにファニタが問う。
「夢ではないみたいね。そうじゃないとおかしいもの。あの二人が止められなかったのよ。しかもメルティは、倒れ込んでいた!」
「なるほど。なぜ嘘をつく。言っただろう。聖女のサポートしろと」
(なぜ私が責められるの?)
三人が、責める様にメルティを見つめる。
「本当です。それに、内容や見る時を操作できません。勝手に見えるのです」
「嘘よ! ではなぜ、馬車が壊れるのがわかったのよ! それ以外は、使用人の事じゃない」
そう言われても困ると思うメルティだが、そうなのだから仕方がない。
他の人にも見せる事が出来れば納得させられるだろうが、見せる事が出来たとしても三人には見せる気にはならないだろう。
「私の周りの人の事を見る様です。あの時は、お父様が大変な目に遭うと見えただけだと思います」
「何? だとすると、お前の能力はこの家の者に限るというのか」
初めて知ったとイヒニオが驚きの顔つきをする。
そうならば、聖女として役に立たない。
国の大事を予言できないとしても、せめて王家に関わる事を予言できなければ意味がないのだ。
「そうです。今までがそうでしたから。何も起こらなければ、何も予言しない。だから毎日見ないのだと思います」
本当は、手を浸せば何度でも見えるが、それは言わないでおく。
「何それ。それでは意味がないしゃない!」
「そうだな。何とかせねばな。自分に近い人を予言するという事ならば、ルイス殿下と接点を持つのも一つか」
「どういう意味ですか、お父様!」
クラリサが、叫ぶ。
「落ち着け、クラリサ。いいか。二人っきりで会うのではなく、メルティを連れて行く。予言を見たらそれをクラリサが予言として、ルイス殿下に伝えればいいのだ」
「まあ、いい考えね。そうすれば、予言も信じて頂けるし、うまく行けばまた……」
ファニタが賛成だと、嬉しそうに述べた。
「そうね。メルティが一緒なのは気に食わないけど、仕方がないわね」
(私は嫌よ。なぜそこまでしなくてはいけないのよ)
「あら、不服そうね。でもそれが、あなたの勤めよ。それがあなたの立場なの」
ムッとした顔つきになったメルティに、クラリサは睨みつけながらそう言った。
(立場って! 逆でしょう。聖女なのは、私の予言のお陰じゃない)
「いいか、メルティ。もしクラリサが聖女として役に立たないとなれば、王家としても面目が立たない。わかったか。クラリサを立てるという事は、陛下を立てるという事だ」
さも素晴らしい事を言ったと言う顔つきでイヒニオは、うんうんと頷く。
聖女としてクラリサを発表した以上、クラリサが聖女として役目を果たさなければ陛下の面目が立たないのだから、協力しろと言われてメルティは協力するしかないとと、項垂れる。
「わかりました……」
でもやっぱり、気は進まない。婚約した二人について歩くなどしたくもない。だが、クラリサの事の予言よりルイスに関する予言の方が、信憑性があるのは確かだ。
自分自身の事を予言したとなれば、自作自演も疑われるかもしれないが、ルイスの事ならば、それは不可能なのだから。
メルティは、朝食後に予言の事を相談する為にアールを訪ねた。
「おや、メルティお嬢様、何かありましたか?」
「はい。お父様やお母様に内緒で、相談があります」
「わかりました。お聞きしましょう」
にっこりとほほ笑んで、アールは二つ返事で返した。
メルティは、安堵する。
「それで、ご相談とは何でしょうか」
「予言の事です」
「予言ですか」
ふむと頷くアールに、メルティもこくんと頷く。
「馬車事件の予言をしたのは、私だとアールはご存じですよね?」
聖女となるきっかけの事件の事だ。
「えぇ。泣いてお止めでしたね。それがきっかけで……」
「はい。そうです。ですが、聖女になったのはお姉様なのです」
ふむとまたアールが、頷いた。
このまま話せば、信じて貰えそうだとメルティは、話を続ける。
「体調を崩した私の代わりにお姉様が行って、そのまま代わりに聖女になってしまったのです!」
「そのようですね」
アールは、そう言って力強く頷いた。
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