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3話

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 次の日に、クラリサは買ったばかりのドレスを着て、母のファニタも伴って三人で王城に向かった。
 戻って来ると、三人共興奮気味だ。
 人払いをしてメルティの部屋で、あった事を自慢げにクラリサが話す。

 陛下と妃、双子で16歳になったばかりの王女と第一王子に、14歳で大人びた第二王子。それに宰相や今回の事に関わっている人々が参列。
 思ったより大事だったと言うのだ。
 そして――。

 「私、聖女にと賜ったのよ!!」

 驚くセリフを嬉々としてクラリサが言った。

 「せ、聖女って、どういう事?」
 「だからね。これからも予言? してくださいって事よ!」

 当たり前じゃないかとクラリサが言う。

 「待って。お姉様が聖女なの? その予言を見るのは私なのに?」
 「それだがな。ほらクラリサがという事にしただろう。今更違うと言えないだろう。虚偽になってしまう」

 イヒニオが、困ったなという身振りで言うが、騙し続ける事になる。

 「でも、後でバレたら……」
 「大丈夫よ。あなたが私に教えてくれればいいのだから」
 「そうよ。作戦も馬車の中で考えたの。これからは、毎朝一緒に朝食を食べましょう。そこで夢の内容を話してちょうだい」

 ファニタの言葉に、メルティが首を傾げた。

 「夢?」
 「だから、予言の夢よ」
 「夢で見ているのではないわ」
 「あらそうなの。まあどうやって見るかなんてどうでもいいわ。ちゃんと見た内容を伝えてくれればね」

 クラリサは、にっこり微笑む。

 「いいか。メルティ。お前が予言を見ていると他の者に知られたら、我がレドゼンツ伯爵家は終わりだ。嘘偽りの内容でなければ、誰が伝えたとしてバレやしない。私もまさか、こんな大事になるとは思ってもみなかったのだ」
 「わかったわ……」

 今まで見向きもされなかった予言が一夜にして、凄い価値があるモノになった。だが、その誉れは姉であるクラリサが手にする事になってしまった。
 だからと言って、嘘をつく事は出来ない。

 「二人の王子様、格好よかったわ。でも第一王子のカイザ様は婚約者がおられるのよね」
 「そうだな。狙うなら第二王子のルイス殿下だろう。歳は一つ下だがちょうどよい。婿に来られる者と結婚しないといけないからな」

 父親のイヒニオの言葉に、メルティは不安になった。
 姉であるクラリサが家名を継ぐのはわかるが、王子を婿にとって大丈夫だろうか。メルティが、予言を見ていると知れてしまうのではないか。
 いやその前に、この予言を伝えるのはいつまで行うつもりなのか。クラリサが家名を継ぐなら、メルティは嫁に行く事になる。
 毎日、予言を姉に告げるのはほぼ不可能だ。

 「あの、聖女の役目はいつまでなのでしょうか」
 「いつまで? さあ? 能力がなくなるまでじゃない?」

 イヒニオに質問したつもりだったが、答えたのはクラリサだ。

 「結婚後も続けるなど無理だと思うのだけど……」
 「あははは。気が早いな、メルティは」

 結婚の話をしていたのは、イヒニオ達だと言うのに笑われて終わった。

 「そうそう。祝賀会を開いてくれるそうよ」

 クラリサが嬉しそうに言う。

 「聖女としてお披露目ですもの。着飾らなくてはいけないわね」

 ファニタも嬉しそうに言った。

 (二人は、知れるかもと言う恐怖はないのかしら?)

 「とにかく明日から一緒に朝食だ。ちゃんと教えるのだぞ」
 「はい。わかりました」

 返事を返すとイヒニオ、うむと頷く。
 三人は、部屋を出て行った。それと引き換えに侍女のセーラが入って来る。

 「聞きましたよ。クラリサお嬢様が、聖女になったとか。明日は晩餐会をするようですよ」
 「そうなの?」
 「あら、お聞きしませんでしたか?」

 三人は、晩餐を開く事を伝えるのをすっかり忘れていた。浮かれていたのだ。

 「メルティ様がたまに予言めいた事を言っておりましたが、クラリサ様にもありましたのね」
 「え……」

 本当に使用人にも内緒にするのだと、メルティは驚く。
 それよりそう思うのに、前々から言い当てていたメルティではなく、クラリサが突然言い当て誰も疑問に思わないのだろうか。
 所詮そんなものだったのか。前は幼すぎて上手く伝えられていなかった。この頃は、諦めて伝えていなかった。

 姉のクラリサは、賜った言葉を伝えてくれると言った。確かに聞いたが、まるで自分が賜ったかのような口ぶりで、聞いていても全然嬉しくなかった。嬉しいどころか悔しさが募る。

 「でもお父様や他の方の命が助かったのだからこれでいいのよね」
 「何かおっしゃいましたか?」
 「ううん。もう寝るわね」
 「そうですね。もう熱も下がりましたが、明日から旦那様の食事時間に合わせて起きなくてはいけないのでしょう? 早めに寝た方がよろしいと思いますわ」

 そうだったと、メルティは頷く。
 イヒニオの食べる時間を遅らせる事は出来ないので、彼に合わせるしかない。
 完全に納得してはいないが、仕方がないと眠りに就くのだった。
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