使えないと思った僕のバフはパッシブでした。パーティーを追い出されたけど呪いの魔導士と内密にペアを組んでます

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
43 / 63

第43話 要は発想だ

しおりを挟む
 『思い出した。確か、MPが少なくても魔法が使える魔法を作ろうと、消費するのをMPではなくHPにしたのだ。だがなぜか、使用してから数時間HPが回復しないマイナス効果がついていた。つまりそれが呪いだ』

 呪いさえなければよさげな魔法だけど、一体それで何ができる魔法なの?

 『夢予言だ。まあ占い程度の効果しかないだろうが、寝る時に使う。彼女はきっと、何度も魔法を使ったのだろう。呪いの効果は、蓄積されていくからな』

 からな。じゃない! で、一回どれくらいの時間、回復しないの?

 『一回目は1時間。二回目は2時間。そういう風に増えていく。連続して使えば丸一日もあり得るだろうが、普通は寝ている間に呪いの効果が切れるのだが……』

 知らず知らずのうちに、連続して使ってしまったって事か。

 『毎日使えば、一か月もしないうちに24時間になるけどな』

 それ何か制限掛けたりしなかったの?

 『言っただろう? 一番最初に作ったと。試作品に近い物だ。コレクションにしたいからというので、貴族に売った』

 そんなものを売らないでよ!
 で、どうすればいい?

 『私は、ポーション系を作った事はないが、君は作った事があるのなら作れるだろう。レベルは低いが大丈夫だ』

 本当かな……。

 バン!

 「よかった。マルリード来ていたか!」

 ドアを勢いよく開けて入ってきたのは、チェミンさんのお父さんだ。

 「もうお父さん、病人のお母さんがいるのよ。静かに入ってきてよ」
 「す、すまない。どうだ。具合は?」
 「まだだるいけど、大丈夫よ」

 う。これバレたら殺されそうだな。愛妻家みたい。

 「マルリード……さん。来ていただいてありがとう」

 さん……って。

 「ひとつだけまだ手に入っていなくて、先にスラポ液を作成していてくれないか?」
 「はい……」

 本当にスラポ液だけじゃなく、エリキシルを作らせる気だったのか。

 『ひとついいか?』

 何?

 『錬金術とは創作だ。実は作り方は一つではないのだ。私の時代では、ポーションにスラポ液というモノを使ってはいなかった』

 作った事はないんでしょ? 知らないだけじゃない?

 『いや公開されているポーションには、なかった。それぞれの薬師がレシピにアレンジを加えてオリジナルのポーションを作っていたのだが。どうやら今の時代は違うみたいだな』

 え? そうなの?

 『マジックアイテムなんぞ、創作そのものではないか。ポーションにも魔力や魔法を加えて作るといいらしい。知り合いの薬師が言っていた』

 じゃ、足りない材料でもエリキシルを作れるかもしれないって事?

 『いや、作るのはエリキシルではない。呪いはそれでは解除されないからな』

 え? じゃ何を作るの?

 『呪いを除去するポーションだ。正確には、契約魔法を消す効果があるものを作る』

 そんなの作れるの?

 『作れない事はない。要は発想だ。そうだな。ヒールを使おう』

 ほ、本当に大丈夫なの?

 『やるのは君だ。健闘を祈る』

 何それ。

 「では、頼んだぞ。マルリードさん」
 「え? あ、はい」

 材料を僕に手渡すと、急いで部屋を出ていった。

 「マルリードさん、お母さんを助けて」
 「あ、うん。善処はするけど……」

 助けてあげたいけど、できるかな?

 『己を信じろ。まずはスラポ液を作れ。今の時代は、それがポーションの基本みたいだからな』

 わかった。やってみる。

 「えっと。どこか部屋を借りていいかな?」
 「うん。こっち」

 ついて行くと、実験室みたいな部屋に案内された。なんでこんな部屋があるんだ。

 「ここ使って。私、お母さんの部屋にいるから」
 「うん。頑張る」

 さてと、しぼるイメージで……。ビーカーにチョロンと液体を絞り出した。

 「鑑定」


  『スラポ液』アイテムランク:E
  ポーションの材料の一つ。
  ◆品質:最上級


 「やったぁ!」
 『ほう。これは素晴らしい。これなら問題ないだろう。しかし、何かヒントになるモノがあればいいんだが』
 「そうだ!」

 僕は、魔素空間から素材の本を出した。
 これポーションの素材が載ってるんだけど、エリキシルのも載っていたはず。
 パラパラめくるとあった。

 「難易度A、推奨錬金レベル50……」

 なんか、ズーンと自信が失われてしまった。見るんじゃなかったかも。これじゃ断られるはずだよね。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

生まれ変わった大魔導士は、失われた知識を駆使して返り咲きます。

三歩ミチ
ファンタジー
 大魔導士イリス・ステンキル・ブロット。女ながらに王都で、否、国中で一番の魔導士として、その名を轟かせた。死に際し、彼女は、蘇るための魔法を開発する。そして実際に、蘇った。死体に魂を乗り移らせる、という方法で。 「誰も、私のことを知らない……」  せっかく生み出した新しい魔法の数々も、今となっては誰も知らない、自分だけの知識になっていた。目覚めたらなぜか魔法の使えない体になっていたけれど、イリスの信念は変わらない。 「魔法は誰でも使える」「魔法は何でもできる」  魔法の知識が失われた未来で、イリスの知識と、相棒のニコの魔法を駆使して、ふたりが大魔導士として成り上がっていくお話。 *小説家になろう様にも、投稿しています。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

処理中です...