上 下
42 / 63

第42話 寝る時も気を付けよう

しおりを挟む
 街の外れにある保養地の大きなお屋敷に連れていかれた。
 本当にお金持ちなんだな……。

 『さっきは、関係はどうでもよいと言ったが聞いていいか? どうやって仲良くなったのだ? 君は孤児院の出だと言っていなかったか』

 彼女はある事情から冒険者になって、錬金の魔法を受けに来ていたんだ。そこで知り合った。チェミンさんが言う通り、彼女では作れないかもね。でも錬金術師が作れないモノを僕が作れるとは思えないんだけど。

 『一度ポーションを作ったのだろう?』

 まあね。

 『だったら作れるだろう』

 あのね、簡易錬金だし……。

 『どう習ったかは知らないが、錬金レベルの事を言っているのなら成功率だと思えばいい。最初から錬金の魔法を持っている者は、錬金に適している者なので覚えた魔法より成功率が高いのは当たり前だ』

 そうかもしれないけど、エリキシルだよ? ポーションを作るのとはわけが違うよ。

 『実は成功率は変わらない。ただ品質が高いので、魔力が高くないと高品質を保てない為、それで作れないだけだ。つまり魔力が高ければレベルが低くても成功すれば作れる。魔力が低ければ、成功してもエリキシルにはならないだけの話だ。それは失敗となる』

 そうだった。リレイスタルさんって錬金術師だった!
 ねえエリキシル作れるよね?

 『作った事はない。ポーションもな。私の時代は、ポーション系は薬師というくくりだった。マジックアイテムを作るのが私の専門だ』

 なんだって? じゃ作れないの?

 「どうぞ。入って」
 『声を掛けられているぞ』
 「あ、うん」

 やっぱり断った方がいいかな……。期待させてもなぁ。

 部屋に入ると、美人の女性がベッドに横になっていた。チェミンさんと同じブルーパープルの髪。
 近づくと目を開けた。その瞳も彼女と同じパープルだ。

 「チェミン、その方は?」
 「前に話したでしょう。凄いポーションを作った人よ」
 『凄く期待しているようだな。そうだ。彼女のステータスを確認してみたらどうだ? 何かわかるかもしれないぞ』

 医者がわからなかったのをステータスを見ただけでわかるとは思えないけど?

 『医者は、ステータスを見れるのか?』

 後付けで持っているはずだけど、別料金。でもまあ、お金持ちだから見てもらってると思うけど?

 『無料でやってやれ』

 別にお金は取らないよ!

 「ステータス!」

 僕は、ボソッとつぶやき、チェミンさんのお母さんのステータスを確認した。


 『ミリラ』総合レベル:27
  HP:20/220
  MP:40/40
  魔法:実りの水
  契約魔法:夢見

 「え!」
 『………』

 なんで魔法を覚えているの?

 「どうしたの?」
 「あのさ、君のお母さんって元冒険者とか?」
 「え……」
 「いいえ。なろうとも思った事はありませんわ」
 「あ、すみません。いきなり……。えっと、マルリードといいます」
 「ごめんなさいね。二人とも無理を言って……」
 「いいえ。あの、つかぬ事をお聞きしますが、後付け魔法なんて覚えた事ありますか?」

 そう聞くと、首を傾げられてしまった。

 「チェミンが覚えた錬金の魔法の事かしら?」
 「はい。そういうのを誰かに教わったりとか……」
 「いいえ、一度もありません」
 「ですよね……」

 じゃなんで覚えているの? どう思う?

 『………』

 うん? もしかして心当たりある?

 『彼女の具合が悪いのは、呪いのせいだろう』

 え? 呪い? 僕は他人のは簡易的にしか見れないけど、リレイスタルさんは詳細見れるの?

 『いや、今の私には何もできない。契約魔法の夢見が原因だろう』

 よく見れば簡易魔法ではなくて契約魔法。夢見が呪いの魔法で……って! まさか、リレイスタルさんが作った魔法? え? マジックアイテムを使ったって事?

 『使うだけでは、魔法は覚えない。しかも一度きりのものだ。契約を結ぶか問われ、契約内容が表示される。それに同意して初めて覚えるのだ』

 あぁもう! 実害が出てるじゃないか! どうするんだよ。で、呪いの内容は? だいたい生命に危険はないって言っていなかった?

 『落ち着け。今、思い出すから。何せ一番最初に作った枕のマジックアイテムだからな』

 枕……。見れば、真っ黒い枕を頭の下に敷いていた。

 「あの……その枕ってもしかして、代々受け継がれているとかいいませんよね?」
 「え? 枕ですか? これはこの前空市で買ったのです。寝心地がいいので愛用しています」
 『その枕だな。さっきも言ったように使っただけでは魔法は覚えない。夢うつつに契約したのかもしれないな……』

 なんてものを作ってるんだ!! これどうにかしないといけないよね。協力してよ!

 『わかっている』

 はあ、最悪だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで

海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。 さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。 従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。 目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。 そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!? 素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。 しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。 未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。 アデリーナの本当に大切なものは何なのか。 捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ! ※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。 しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。 しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり
ファンタジー
 アリツェは、まんまと逃げおおせたと思った――。  しかし、目の前には黒いローブを着た少女が、アリツェたちを邪教徒と罵りつつ、行く手を阻むように立ち塞がっている。  少女の背後には、父配下の多数の領兵が控えていた。  ――作戦が、漏れていた!?  まさか、内通者が出るとは思わなかった。逃亡作戦は失敗だ。  アリツェは考える。この場をどう切り抜けるべきかと。  背後には泣き震える孤児院の子供たち。眼前には下卑た笑いを浮かべる少女と、剣を構えてにじり寄るあまたの領兵。  アリツェは覚悟を決めた。今、精霊術でこの場を切り抜けなければ、子供たちの命はない。  苦楽を共にしてきた家族同然の子供たちを、見捨てるなんてできやしない!  アリツェはナイフを握り締め、自らの霊素を練り始めた――。  ★ ☆ ★ ☆ ★  これは、ひょんなことから異世界の少年悠太の人格をその身に宿した、貴族の少女アリツェの一代記……。  アリツェは飄々とした悠太の態度に手を焼くも、時には協力し合い、時には喧嘩をしつつ、二重人格を受け入れていく。  悠太の記憶とともに覚醒した世界最強の精霊術は、幼く無力だったアリツェに父と戦う術を与えた。  はたしてアリツェは、命をつけ狙う父の魔の手を振り払い、無事に街から逃げのびられるのだろうか。  そして、自らの出生の秘密を、解き明かすことができるのだろうか――。    ◇★◇★◇ ●完結済みです ●表紙イラストはアメユジ様に描いていただきました。 【アメユジ様 @ameyuji22 (twitterアカウント) https://ameyuji22.tumblr.com/ (ポートフォリオサイト)】 ●スピンオフ『精練を失敗しすぎてギルドを追放になったけれど、私だけの精霊武器を作って見返してやるんだからっ!』も公開中です。 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/598460848/814210883】 【小説家になろう、カクヨム、ノベルアッププラスにも掲載中です】

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...