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第33話 狙われた者

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 『さあ、どんなものかはわからん』

 驚いていると、そう返してきた。
 じゃ死体って!

 『大げさではない。呪詛魔法陣まで用意してあったんだ。知られたら殺すって事だろう?』

 ちょっと待って。それって――。

 「あのダリリンスさん。魔素の調査っていつもダリリンスさん達が担当なの?」
 「うん? あぁ。魔素を除去するのはな。魔素に耐えられる装備が俺たちだけだからな」

 だとしたら狙いってダリリンスさん達かも。

 『なるほど。あり得るな。この者達が調査に来る事がわかっていれば、調べに来たダリリンス達がリルに触れる可能性がある。呪詛など見たことがないとわからないからな』

 うん? リレイスタルさんって呪詛を目にした事あったんだ。

 『まあな。それよりだとしたらその者の作戦は、失敗した事になるな。普通こういう情報は、冒険者しか知らないだろう?』

 たぶん。

 『だとしたら少なくとも冒険者に、仲間がいる事になるな』

 え?

 『やはりここでの出来事は伏せておけ』

 うん……。でもこのままだと、またダリリンスさん達が狙われない?

 『可能性はあるが、そうそう出来る行為でもあるまい。レモンスが言っていた様に、魔素酔いをする可能性がある以上魔素の中に入るのも大変だ。魔素耐性があれば別だがな』

 持っていたりして。

 『可能性はあるが、低いだろうな。魔眼に魔素耐性があるのは、呪いを受ける代わりに受けられるものだと思われる。だから魔素耐性を持っているのならマイナスの魔法持ちだろうな』

 魔眼の様な呪いがある魔法って事?

 『そういう事だ。なぜ彼らを狙うかはわからないがな。ただ恨みでないとすれば、魔素の中に入れる者をいなくしたいのかもしれない』

 え?

 『自身で言っていただろう? 自分達ぐらいしか魔素耐性の鎧を持っていないと。ここら辺で何かを起こす気なのかもしれない』

 何かを?
 だとしたらますます黙っていたらダメな気がするけど、二人には言えないなぁ……。

 『だったら満月の夜の者達にでも言ったらどうだ? 彼らなら君を信用してくれるだろう。ただ叱られそうだがな』

 うん。それは仕方がないよ。そうする。
 僕たちは、魔素があったという物証を持ってギルドに戻ったのだった。



 そよ吹く風が心地いい。そのおいしい空気を大きく吸い込んで吐いた。

 「うんで、俺たちに大事な話ってなんだ? その犬コロの話か?」

 ギルドに戻ると待っていた満月の夜のみんなに大事な話があると言って、草原まで来てもらった。
 リトラさんの質問に僕は頷く。関係があるからね。そうしたら三人ともえっという顔つきになった。

 「うん? 何? 飼い方がわからないとか、これからどうしたらいいとかという相談か?」
 「いえ、そういうのではないんです」
 「ではなんだ?」
 「あ! 欲しい物でも決まった?」
 「違いますから!」
 「えーと、色々と省いて簡潔にいうと、魔素を消したのは僕なんです。迷惑をかけてごめんなさい」

 僕は、三人に深々と頭を下げた。

 「「「………」」」

 なぜか三人とも何も言ってこない。あきれている?
 顔を上げれば、じっと僕を見ているだけだ。

 「いや省き過ぎだ。言ってみる意味がわからない」

 ロメイトさんがそう言った。

 「魔素空間を作るのに使って……」
 「待て、最初から説明しろ。省くな」

 僕がさらに説明をしようとすると、今度はリトラさんが言って二人が頷く。

 「えっと、かなり長い話になるかもですけど?」
 「構わないわよ。今のでは全然わからないし」

 とミューリィさんにまで言われた。
 あのさ、リレイスタルさんの事も言っていい?

 『かまわん。この場合、私を省く事は出来ないだろう。ただ信じてくれるかは別だがな』

 うん。そうだね。僕も未だに不思議な感じだし。

 「えっとでは、まず僕の魔法の事から……」
 「「「え?」」」

 また三人に驚かれた。

 「それって必要なのか?」

 リトラさんが聞くので必要だと頷いた。

 「本当に長い話になりそうね」

 クスっと笑ってミューリィさんが言う。

 「続けてくれ」

 ロメイトさんに促され、僕ははいと頷き話だす。呪い耐性があり魔眼の呪いを防いだこと。その魔眼に魔素耐性があった事。そして、魔眼を手に入れた事により魔素空間という魔法を手に入れた事。
 それを発動させる為に、紅灯の洞窟の魔素を使って魔素空間を完成させた事を話した。ただし魔法を覚えられる事は言わない事にした。お金を払って覚える時代なのに、まるで盗んでいるような気になったからなんだけどね。

 「えっと、これが証拠です」

 隠したと言ったテントを僕は空間から出して見せた。

 「「「………」」」

 三人は、話を聞いた後だというのに、目を点にして驚いていた。
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