上 下
9 / 63

第9話 運は追加されてないと思う

しおりを挟む
 「はあ、今日は疲れたなぁ」

 僕は、受けてあった依頼の採取を一人でしていた。
 結局チェミンさんは、父親とルンルンで帰って行ったのだ。半日損した気分。
 それにしてもパラメータに運だか追加されていたけど、良くなってないよね絶対に!

 うんうん。なってない。パーティーは追い出されるし、変な親子には関わるし。まあいいけどね。死ぬ目にあってないから。

 さて、採り終わったし帰るかな。
 その日は、疲れていたからすっかり忘れていた。彼女とパーティーを組んだままだったと。
 気がついて連絡を取ってもらってやっとチェミンさんは現れた。この前父親が連れていた冒険者の二人と一緒だ。

 「ごめんなさい。ご迷惑をお掛けました」

 脱退手続きが終了した。これでソロに戻ったわけだ。

 「ところで錬金術師にはなるの?」

 ならないと首を横に振った。だよね。結婚しない為の口実だったわけだし。

 「ねえ、今日空市しているの。街に来ない?」
 「へ? あぁ、行っても何も買えないし」

 見て欲しくなったら悲しいから行かないでおこう。

 「お礼に何か買ってあげるわ」

 ガシッと僕の腕を取ると、行かないと言ったのにチェミンさんはぐいぐいと引っ張る。

 「お付き合い下さい」

 ボソッと護衛の冒険者の一人に言われた。
 仕方がない。今日は採取は休んで行くか。
 って、馬車に乗せられた。その馬車に、父親が乗っているではないか!

 「この前は世話になったな」
 「はぁ……」

 お礼を言う為にこれに乗って来たの?
 驚きだ。

 「君に言われて自分がなんと恐ろしい事を娘にさせているか悟った。本当に君が言う通り、チェミンが君でない者を選んでいたらとゾッとしたよ」

 反省はしたんだ。

 「君は、命の恩人だ!」
 「は? いやいや大袈裟な」
 「だが嫁にはやらん」

 いえ、僕もいりません。凄く大変そうだ。

 「空市には、掘り出し物もある。冒険に役立つ何かをお礼に贈りたい」

 って、なぜまた空市なのか。結構ケチなのかも。

 「お気遣いありがとうございます」

 一応礼は言っておこう。
 空市は、街の公園で開かれていた。出店が並んでいる。大抵のところは、珍しい骨董品などが売られている様だけど、僕から見るとガラクタにしか見えない。後は、マジックアイテムやダンジョンから発掘されたアイテムが売られている。

 「こっちだ」

 見て回るのかと思ったらもう行く場所は決まっているみたい。

 「お待ちしておりましたよ、エドラーラさん」
 「これなんかどうだ」

 チェミンさんの父親が店主から受け取った剣を僕に手渡す。もう僕に買う物が決まっていたのか。

 「鑑定」

 こっそりと鑑定を行う。

 『ロングソード』武器ランク:F
  長めの剣
  ◆攻撃力:15

 うわぁ。普通のロングソードだよ。僕が今使っているのよりちょっと攻撃力があるだけだ。どうせなら服がほしいけど、ここにはないか。

 「ありがとうございます」
 「君、何か欲しい物あったら買って行ってよ」
 「はぁ……」

 パーッと見た所、冒険者向けらしい。けど、ここに冒険者なんて見に来るのか?
 ほぼ武器が並べられていて、たまにマジックアイテムだろう指輪やネックレスがある。
 その中に一つだけ、箱が置いてあった。五センチ四方ぐらいの黒い箱。

 「それって何ですか?」
 「これかぁ? 何でも古い屋敷を取り壊す時に見つかったいわく付きの箱なんだ。封印がしてあって剥がせないから鑑定してもらったら、MP3,000以上が必要だとか。どうだ。記念にいるか?」
 「え? くれるの?」
 「あぁ、やるやる。開けられるやつなんていないからな」
 「ありがとうございます」

 開けられる奴はここにいるんです!
 こっそり鑑定すると、封印されていて条件が言った通り、MP3,000以上だった。
 楽しみだな。何が入ってるのかな?

 「剣より嬉しそうだな」
 「え? いや、ロ、ロマンがあるなぁって」
 「さすが冒険者。そんな得体のしれない物で喜ぶとは」

 うん。冒険者に偏見持ってますか? チェミンさんのお父さん。

 馬車でギルドの近くまで送ってもらった僕は、密かに開ける為人気のない場所へと向かった。草原の脇。林との境に僕は来た。
 周りをぐるりと見て確かめると誰も居ない。

 地べたに座り、ぺりっと封印をはがす。

 「本当にはがれちゃった」

 深呼吸して、そっと箱を開けた。すると、黒い煙の様なモノが僕の顔目掛けてきた!

 「うわぁ」

 目を瞑るも激痛が走った!
 こんなトラップってあるか……。やっぱり運ないよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで

海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。 さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。 従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。 目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。 そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!? 素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。 しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。 未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。 アデリーナの本当に大切なものは何なのか。 捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ! ※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。 しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。 しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...