6 / 63
第6話 このままではダメだ
しおりを挟む
冒険者を辞めるかななんて思ったりもしたけど、頼ってきた彼女を断れなかった。ううん。嬉しかったんだ。頼られた事なんてなかったからね。
パーティー登録を済ませた僕達はまず、スライムを倒してみる事にした。
「ここら辺だったような」
「ねえ、本当に大丈夫なの?」
「何が?」
「戦闘。二人だけで……」
相手スライムなんだけど?
「もしかしてスライムすらも知らない?」
こくんと頷くチェミンさん。
彼女はなぜ、冒険者になったんだろうか。訳アリなのはわかるけど、どうやら冒険者に憧れてっていうわけでは全くなさそうだ。
「あのね。スライムってあれだよ」
ちょうど目の前にぴょ~んと出た来た青い一体のスライムを指さした。
「きゃ~!! モンスター!」
「ちょ……」
チェミンさんは、悲鳴を上げて僕の後ろに隠れた。
ま、まじか……。
「あれ、冒険者じゃなくても倒せるモンスターだから」
「そ、そうなの?」
「そうなの。戦闘練習するのに来たから武器構えてくれる?」
彼女は、腰には高そうな短剣をさしているが、背中には弓を背負っていた。
「あ、うん」
頷くチェミンさんだけど、もたもたしているというかもしかして……。
「使い方を知らない?」
「う……」
やっぱり!?
「なんで使い方がわからないのにその武器にしたの?」
「だって私攻撃魔法使えないし、この武器でないとモンスターに近づかないといけなくなるでしょう?」
「そりゃそうだけど。で、矢は?」
「え? あ……」
「はぁ。矢は別売りだけど買ってないのね」
なんだろう。お嬢様が興味本位で冒険者になりましたって事なんだろうか? 困ったなぁ。
「じゃ今回は、その短剣で……」
「これはだめ! お守りなの!」
「え? お守り!?」
もしかしてそう言われて買ったとか言わないよね? 凄く高そうだし。
「じゃ、武器を買いに行こう」
「もう、お金がありません」
うん? お金がない?
「じゃ、どうするの?」
僕が強めに言うと、涙目になってチェミンさんは俯いた。
お金がないから僕に声を掛けたわけね。納得だ。やっぱり家出かな?
これ、彼女と二人で取りに行くのは無理そうだ。諦めてもらおう。
「悪いけど、あの場所に行くのは無理。強い弱いの前に、パーティーランクをCランクにしないと行けないから。パーティー内にCランクの人が一人でも居れば行けるけど、僕が一か月以内にCランクになれる可能性は低いよ」
「AかBランクかと思ってた……」
「何それ。当てが外れたって言いたいの? だいたい理由は言えないし、戦う気もない、お金を払う気もない。それで一緒に行こうって虫がよすぎるよ」
「ごめんなさい。でもどうしても取りに行きたくて、あなたしか思いつかなくて。お金なら後払いしますから」
「はぁ……お金の事を言ったけどお金が欲しいわけじゃないから。僕が言いたいのは、わがまますぎるって事。お嬢様として生活していくならそれでいいかもしれないけど、冒険者として生きて行こうと思っているなら自分の事は自分でしないと……」
自分の事は自分でしないとって、僕は彼女に説教をする気なのか? いままでしてこなかったのに?
「僕みたいになるよ……」
チェミンさんは、驚いて僕を見た。
「僕は自分が弱いと思っていた。だからしなくていいと言われて荷物持ちしかしてこなかった。しようとすれば余計な事をするなと言われたし。だったらこのままでって。でも結局、何もしない僕は見限られた。もちろん何もしなかったからEランクのままさ。強くなりたいと戦闘に加わっていれば今頃もしかしたらDランクに、ううんCランクになっていたかもね」
って、何話してるんだ僕。
「だってさ、チェミンさん。そんなやつと一緒に居てもこれは手に入らないと思うけどな」
僕達の話しに突然割り込んできた男が言った。
チェミンさんの事を知っている? って、彼女が欲しい物も知っているの? じゃこの人達はチェミンさんがなぜ、それを欲しているか知っているって事? なんで?
冒険者の男二人は、にんまりとして立っていた。
パーティー登録を済ませた僕達はまず、スライムを倒してみる事にした。
「ここら辺だったような」
「ねえ、本当に大丈夫なの?」
「何が?」
「戦闘。二人だけで……」
相手スライムなんだけど?
「もしかしてスライムすらも知らない?」
こくんと頷くチェミンさん。
彼女はなぜ、冒険者になったんだろうか。訳アリなのはわかるけど、どうやら冒険者に憧れてっていうわけでは全くなさそうだ。
「あのね。スライムってあれだよ」
ちょうど目の前にぴょ~んと出た来た青い一体のスライムを指さした。
「きゃ~!! モンスター!」
「ちょ……」
チェミンさんは、悲鳴を上げて僕の後ろに隠れた。
ま、まじか……。
「あれ、冒険者じゃなくても倒せるモンスターだから」
「そ、そうなの?」
「そうなの。戦闘練習するのに来たから武器構えてくれる?」
彼女は、腰には高そうな短剣をさしているが、背中には弓を背負っていた。
「あ、うん」
頷くチェミンさんだけど、もたもたしているというかもしかして……。
「使い方を知らない?」
「う……」
やっぱり!?
「なんで使い方がわからないのにその武器にしたの?」
「だって私攻撃魔法使えないし、この武器でないとモンスターに近づかないといけなくなるでしょう?」
「そりゃそうだけど。で、矢は?」
「え? あ……」
「はぁ。矢は別売りだけど買ってないのね」
なんだろう。お嬢様が興味本位で冒険者になりましたって事なんだろうか? 困ったなぁ。
「じゃ今回は、その短剣で……」
「これはだめ! お守りなの!」
「え? お守り!?」
もしかしてそう言われて買ったとか言わないよね? 凄く高そうだし。
「じゃ、武器を買いに行こう」
「もう、お金がありません」
うん? お金がない?
「じゃ、どうするの?」
僕が強めに言うと、涙目になってチェミンさんは俯いた。
お金がないから僕に声を掛けたわけね。納得だ。やっぱり家出かな?
これ、彼女と二人で取りに行くのは無理そうだ。諦めてもらおう。
「悪いけど、あの場所に行くのは無理。強い弱いの前に、パーティーランクをCランクにしないと行けないから。パーティー内にCランクの人が一人でも居れば行けるけど、僕が一か月以内にCランクになれる可能性は低いよ」
「AかBランクかと思ってた……」
「何それ。当てが外れたって言いたいの? だいたい理由は言えないし、戦う気もない、お金を払う気もない。それで一緒に行こうって虫がよすぎるよ」
「ごめんなさい。でもどうしても取りに行きたくて、あなたしか思いつかなくて。お金なら後払いしますから」
「はぁ……お金の事を言ったけどお金が欲しいわけじゃないから。僕が言いたいのは、わがまますぎるって事。お嬢様として生活していくならそれでいいかもしれないけど、冒険者として生きて行こうと思っているなら自分の事は自分でしないと……」
自分の事は自分でしないとって、僕は彼女に説教をする気なのか? いままでしてこなかったのに?
「僕みたいになるよ……」
チェミンさんは、驚いて僕を見た。
「僕は自分が弱いと思っていた。だからしなくていいと言われて荷物持ちしかしてこなかった。しようとすれば余計な事をするなと言われたし。だったらこのままでって。でも結局、何もしない僕は見限られた。もちろん何もしなかったからEランクのままさ。強くなりたいと戦闘に加わっていれば今頃もしかしたらDランクに、ううんCランクになっていたかもね」
って、何話してるんだ僕。
「だってさ、チェミンさん。そんなやつと一緒に居てもこれは手に入らないと思うけどな」
僕達の話しに突然割り込んできた男が言った。
チェミンさんの事を知っている? って、彼女が欲しい物も知っているの? じゃこの人達はチェミンさんがなぜ、それを欲しているか知っているって事? なんで?
冒険者の男二人は、にんまりとして立っていた。
0
お気に入りに追加
916
あなたにおすすめの小説
捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで
海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。
さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。
従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。
目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。
そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!?
素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。
しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。
未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。
アデリーナの本当に大切なものは何なのか。
捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ!
※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~
アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。
誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。
彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。
これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる