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確証
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シュッシュ。
ヤンさんが、オレ達と岩山や地面にスプレーを吹きかける。そして、地面に下向きに伏せた。
それにしても、ヤンさんって用意が良い。このスプレーといい、コショウといい……。まあやっている事は、国の代表者とは思えないけど。魔法も武器も使えないならアイテムしかないか。
ちょっとすると、ガサゴソと走って来る音がオレの耳にも届いた。
来た! ごくりと唾を飲み込む。正直怖い。いきなり攻撃を仕掛けてきたらどうしよう。
「ここだな」
そう思っていたらさっきまでオレ達がいた場所でドン達が立ち止まった。
ドンが鋭い視線を辺りに巡らせる。
一瞬、息を止めてしまった。そんな事をしても意味がないのに。匂いではなく、息をする音でバレそうな気がしてしまったからだけど。
どうやらそこまでは出来ないようで何かを見ている。あれが場所を示す魔導具みたい。青い板。
「匂いが微かに嗅げます。ここにしばらく留まっていたからでしょう」
「あのリス族め! 鼻が効けばこれを使わずに済んだのに」
「どういたしますか、ドン様」
「我々が近づいたのに気が付き、逃げたのだろう。あちらも直ぐにワープはできない。それにある程度平らでないと魔法陣は展開できないからな。もう少し先に開けた場所がある。そこに行くぞ。そこに居なければ、またこれを使って探す。絶対にヒソカは手に入れる!」
オレの名が出てビクッと体を震わせた。そんなに執着するほどオレがほしいの?
でも魔法は使えなくても、オレ達を召喚したのだから自分ですればいいだろうに。それとももう出来ないのだろうか。
一度きり。よくある設定ではあるけど、だからってそこまで執着しなくても。この靴を見て凄い効果があるように思うのかよ!
ドン達は、また走り出し姿を消した。オレ達には一切気づいた様子はない。あれが演技じゃなければだけど。
完全に気配が消えるまで皆は静かに伏せっていた。
「ふう。行ったか」
上半身を起こしカールさんが座り込むと、皆もその場に座った。
「やはり腕輪を追えるようですね。面倒な事になった。外せないようですし」
ヤンさんが、オレ達を見て言った。わかっている。オレ達、完全に足手まとい。
「そういうな、ヤン殿。彼らは被害者だ。しかしあのドンが、ヒソカくんにあそこまで執着しているとはな。本当に殺す為ではななく、捕まえる為に追ってきているとは驚いた」
カールさんがそう言うと、全員オレを見た。その視線を受けオレは俯く。
ミックス嫌いのドンが、生け捕りにしようとやっきになっている。
オレを差し出せば、もしかしたら彼らは助かるかもしれない。オレを残し逃げればいい。
オレは、この世界では一人では生きていけないのだから……。
「彼は、何としても守り切らなければならないようだ」
「え……」
だが予想外の言葉をカールさんが言ってくれた。顔を上げたオレは、涙目になる。殺されるのも嫌だが、ドンに捕まって使役されるのも嫌だった。
「ありがとう、カールさん」
「うむ。で、ヤン殿、何かいい方法思いつきませんかな?」
「ありますとも」
にっこりしてヤンさんは立ち上がる。そして、なぜかマントをバサッと外すのだった。
ヤンさんが、オレ達と岩山や地面にスプレーを吹きかける。そして、地面に下向きに伏せた。
それにしても、ヤンさんって用意が良い。このスプレーといい、コショウといい……。まあやっている事は、国の代表者とは思えないけど。魔法も武器も使えないならアイテムしかないか。
ちょっとすると、ガサゴソと走って来る音がオレの耳にも届いた。
来た! ごくりと唾を飲み込む。正直怖い。いきなり攻撃を仕掛けてきたらどうしよう。
「ここだな」
そう思っていたらさっきまでオレ達がいた場所でドン達が立ち止まった。
ドンが鋭い視線を辺りに巡らせる。
一瞬、息を止めてしまった。そんな事をしても意味がないのに。匂いではなく、息をする音でバレそうな気がしてしまったからだけど。
どうやらそこまでは出来ないようで何かを見ている。あれが場所を示す魔導具みたい。青い板。
「匂いが微かに嗅げます。ここにしばらく留まっていたからでしょう」
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「どういたしますか、ドン様」
「我々が近づいたのに気が付き、逃げたのだろう。あちらも直ぐにワープはできない。それにある程度平らでないと魔法陣は展開できないからな。もう少し先に開けた場所がある。そこに行くぞ。そこに居なければ、またこれを使って探す。絶対にヒソカは手に入れる!」
オレの名が出てビクッと体を震わせた。そんなに執着するほどオレがほしいの?
でも魔法は使えなくても、オレ達を召喚したのだから自分ですればいいだろうに。それとももう出来ないのだろうか。
一度きり。よくある設定ではあるけど、だからってそこまで執着しなくても。この靴を見て凄い効果があるように思うのかよ!
ドン達は、また走り出し姿を消した。オレ達には一切気づいた様子はない。あれが演技じゃなければだけど。
完全に気配が消えるまで皆は静かに伏せっていた。
「ふう。行ったか」
上半身を起こしカールさんが座り込むと、皆もその場に座った。
「やはり腕輪を追えるようですね。面倒な事になった。外せないようですし」
ヤンさんが、オレ達を見て言った。わかっている。オレ達、完全に足手まとい。
「そういうな、ヤン殿。彼らは被害者だ。しかしあのドンが、ヒソカくんにあそこまで執着しているとはな。本当に殺す為ではななく、捕まえる為に追ってきているとは驚いた」
カールさんがそう言うと、全員オレを見た。その視線を受けオレは俯く。
ミックス嫌いのドンが、生け捕りにしようとやっきになっている。
オレを差し出せば、もしかしたら彼らは助かるかもしれない。オレを残し逃げればいい。
オレは、この世界では一人では生きていけないのだから……。
「彼は、何としても守り切らなければならないようだ」
「え……」
だが予想外の言葉をカールさんが言ってくれた。顔を上げたオレは、涙目になる。殺されるのも嫌だが、ドンに捕まって使役されるのも嫌だった。
「ありがとう、カールさん」
「うむ。で、ヤン殿、何かいい方法思いつきませんかな?」
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にっこりしてヤンさんは立ち上がる。そして、なぜかマントをバサッと外すのだった。
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