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匂いではなくて声で

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 カチャン。
 あれ、おかしいな。なぜかドンではなく、オレ達に警戒しているのかのように、武器を持っている獣人達はそれをオレ達に向けて構えた。

 「っち。お前たちは、頭が悪いのか? アオだかというのは、ドンが用意したって言っているんだ!」

 ロンドさんが叫ぶ。オレは、うんうんと小さく頷く。まあシーツを被っているからわからないと思うが。
 部外者が言っても信じてもらえないって事だよね。やばい状況かも。
 しかし、臭いで誰かわかるなんて獣人って凄いなぁ。

 「魔の者だと自分で言っておいて何を言っている」

 ドンがニヤリとして言う。
 今度は、魔の者かよ。意味がわからない。誰か説明してくれ。

 「で、船に乗せられ我が国へと来たわけだ」

 そうドンが続けた。
 召喚されたオレ達は、あの青い旗の船に乗せられここに来たという筋書きらしい。万が一逃げだしたらここに連れて来る手はずになっていた。アオの者として……。
 うーん。用意周到だな。

 「船の中で召喚したのだろう。で、俺達をここへ連れて来て何をさせる気だ、ドン」

 冷静にレックスさんが言う。
 チラッとドンが、犬と猫の種族を見た。

 「どういう事ですかな?」

 ドンが、今度は犬族と猫族に語り掛ける。どうやら猫族と犬族の二人だから、そっちが手配したのだろうと言いたいのだろうけど。ロンドさん達があの仮面の男がドンだと言っているのだから、彼の策略だろうに!

 「どういうとは? 我々にはさっぱり」
 「私が召喚したかのように言われているのですが?」
 「そうは言うが、先程のアオの者はベア族だったではありませんか?」

 犬族がそうドンに問いかける。
 オレ達以外にも用意していたのか。そいつらは、召喚された者ではないみたいだけど。でも一体アオの者とは何だ。

 「もしかしてその者達も俺達みたいな青い腕輪をしていたのか?」

 さっき掲げられた左手の腕輪を見せロンドさんが聞く。

 「そうだ。だからその賊の事を総称してアオの者と呼んでいる」

 平然とドンが答えた。別に隠す必要がない内容らしい。やっぱりこの腕輪はアオの者の証として装備させたものだった。

 「もしかしてその者は自害したとか?」

 レックスさんが聞くと、ドンの右眉毛がぴくっとした。
 もしかしてそうなの?

 「そういえば、そう言っていたな。ドン殿、彼らは全員死んだのか?」
 「えぇ、服毒自殺しました」
 「服毒? この腕輪に仕組まれた毒によって殺されたんだろう? 外すと刺さると教えてくれたよな?」

 またもや左手の腕輪を見せロンドさんが言う。
 ひ~。毒針仕込みも本当だったのか! 外せば自害した事になったって事か。
 それにしてもレックスさんは、よくわかったなぁ。もしかして、毒も臭いでわかるとか? 嗅覚すご。

 「ほう。そうだったのか」

 あたかも今知ったかのように、ドンは言った。
 たぶん閣下はドンで間違いない。オレは、匂いはわからないが声はわかる。特徴のあるちょっと低めの声だ。ずっと聞いていて確信した。
 けど、証拠がないんだよなぁ。怪しいオレ達よりそれなりの地位のドンの方が信用あるだろうから。

 「なるほど。彼らが言うのが正しいようだ」
 「え?」

 オレ達は驚いた。だって、猫族の人がドンに向けて武器を構え直したからだ。二人は善人っぽい顔つきなのだろうか。顔の違いはわかるが、悪人、善人の顔つきはオレにはわからない。
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